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イスラエル総選挙:恐怖の勝利
2015.3.27(金)
「ハマスが3少年を誘拐」とイスラエル首相、一夜で80人逮捕
3月17日の総選挙でリクードを勝利に導き、再選を決めたベンヤミン・ネタニヤフ首相〔AFPBB News〕
ベンヤミン・ネタニヤフ氏は恐らく、イスラエル史上最も資質を欠く首相だ。同氏の失態や悪行は、9年間の首相在任中に嫌というほど露呈した。再選を目指す直近の選挙運動に乗り出した時には、ネタニヤフ氏の支持者や選挙区民でさえ、同氏の自己中心的な態度や、公の場でのネタニヤフ夫人の恥ずべき振る舞いに対する嫌悪を隠すことができなかった。
ネタニヤフ氏の不快な個性を別にしても、イスラエルは同氏の統治下で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も格差の大きい国の1つとしての地位を固めた。
イスラエル史上最も狂信的な新自由主義の指導者であるネタニヤフ氏は、同国の貧しい中産階級と貧困層に対し、高い生活費、手の届かない住宅、そして21%の貧困率という実績に基づいて自分を再選してくれるよう求めた。にもかかわらず、彼らは本当にネタニヤフ氏を再選した。
また、ネタニヤフ氏は同氏の再選が有益だと言ってくれるまともな安全保障の専門家を1人も見つけることができなかった。約180人の将官と戦争の英雄――一番の有力者は、イスラエル諜報特務庁モサドの歴代長官の中で特に尊敬されているメイール・ダガン氏――が一致団結し、彼らがイスラエルの安全保障に対する脅威と呼ぶ男の再選に反対した。
しかし、何も安全保障分野の象徴的人物でなくても、ネタニヤフ氏がイスラエルと国際社会を結ぶ橋、特にイスラエルにとって一番欠かせない同盟国であり、後援者である米国との架け橋を焼き払ったことは分かる。
敵に囲まれた小国が抱く恐怖心
ネタニヤフ氏は、バラク・オバマ米大統領と敵対する米共和党と手を組むことで、大統領とイランの核交渉を公然と妨害しようとしただけではない。選挙の2日前には、中東和平実現に向けた国際社会のビジョンの礎石である二国家共存に対するコミットメントを突如取り消した。
こうした状況を考えると、なぜイスラエルの有権者はネタニヤフ氏に首相として連続3期目の任期というご褒美を与えたのか(実際、1996年の最初の当選以来、最大の差をつけての勝利を与えたのか)?
かなり単純な話、イスラエル国民の大多数はある根本的な点においてネタニヤフ氏と同意している。
破綻しかけている国家とハマスやヒズボラ、今ではイスラム国(IS)のような凶悪な非国家組織が集まる混沌とした地域にあって、敵に囲まれている小国は、あたかも平和な西欧の公国かのように社会経済的な政策綱領で選挙を実施する余裕はない、ということだ。
選挙戦の争点を生活費の高騰や法外な住宅価格に向けようとした敵対勢力の哀れな試みは、この切実なメッセージによってあっさり打ち負かされた。結局のところ、人は生活費の問題に取り組む前に命を確保しなければならないのだ。
首相と同様に、増える一方のこの支持者層は、同胞の市民である人たちを含めてアラブ人を信用していない。
リベラルなイスラエル国民は、ネタニヤフ氏が選挙当日に「左派にバスで運ばれ、アラブ人が群れをなして投票している」と警告したことにショックを受けた。
だが、ネタニヤフ氏の支持者にとっては、欧州の極右勢力の人種差別的政治を真似することは、投票所に足を運ぶことを促す正当な奨励だった。
パレスチナ国家樹立に対するコミットメントをネタニヤフ氏が破った時も、支持者が憤慨することはなかった。こうした有権者にしてみると、歴代の左派政権による和平提案や「クリントン・パラメーター」と呼ばれる最も包括的な米国の和平案を拒否してきたパレスチナ人は、和平にあまり興味がないように見える。
こうした有権者は、イスラエルによるガザ地区撤退と、その後ガザで起きたハマスの台頭は、イスラエルが放棄する領土はすべて、イスラエルに向けてミサイルを発射する基地と化すことを証明しているという見方についても、ネタニヤフ氏に同意している。
政治的なイベントにとどまらないイスラエルの選挙
しかし、ネタニヤフ氏の勝利には別の理由もある。左派はイスラエルの選挙が厳密に政治イベントではないことを理解できなかった。イスラエルの選挙は、民族が万華鏡のように入り混じった社会で現在進行中の文化闘争の表れなのだ。
この国の選挙は、ある意味で部族の問題だ。人々は、記憶、侮辱、宗教的感性、集団の不満に基づいて投票する。
イスラエルの右派による現在の政治支配は、多くの国民が抱くユダヤ人のルーツに対する切なる思いや、アラブ人に対する根深い恐怖心、そしてユダヤ人が何世紀も前から対立している「世界」、いわゆる国際社会と呼ばれるものへの不信感に支えられている。
左派が抱く和平への憧れは、政治的な暴挙の実践でないとすれば、ナイーブだと見なされる(そして、どちらにせよ、ユダヤ人のアイデンティティーに対する許しがたい裏切りとされる)。
ネタニヤフ氏は自身を、ロシア系移民や正統派ユダヤ教徒、伝統主義のイスラエル人、敬虔な入植者など、多岐にわたる虐げられた有権者の恐怖と強迫観念を引き寄せる磁石と位置付けた。
その動機が部族間の敵意であれ、イデオロギーに基づく和平プロセスの拒否、あるいはイスラエルのリベラル派エリートからの文化的離反であれ、民族的、文化的、社会的に疎外されていると感じる人は皆、ユダヤの歴史を侵害し、エレツ・イスラエル(イスラエルの地)を売り渡した左派の人々を倒すためにネタニヤフ氏に加勢した。
たとえイスラエルが明白に反対票を投じなかったとしても、二国家共存の解決策を実現するのは極めて難しい。実際、ネタニヤフ氏の敵対勢力が現状を打破できるという期待は見当外れだ。
結局のところ、パレスチナ人は何年も左派の和平提案を一切受け入れなかったし、パレスチナ政治の現在の分裂――弱く、機能していないパレスチナ解放機構(PLO)と、不合理で自滅的な戦争の選択肢で頭がいっぱいのハマスによって定義される分裂――は、楽観する余地をほとんど与えてくれない。
もう何年も野党にとどまった後で、イスラエルの左派に、迷宮のように入り組んだイスラエル政治の暗号を解読し、この国をパレスチナとの和平協定に導くことを期待することはできない。
世界はイスラエルとパレスチナを救えるか?
パレスチナ人が世界最大の国家なき民族であるクルド人の悲しい運命をたどることを避けるためには、そしてイスラエルがアパルトヘイト国家へと向かう自殺的な行進から抜け出すためには、イスラエル、パレスチナ双方は世界に自分たちから自分たちを救ってもらう必要がある。
しかし、世界には、行動する意思が、良識があるだろうか?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43325
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