http://www.asyura2.com/15/warb15/msg/336.html
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日本人はNGOと聞くと無造作に「良いもの」と思い込むが決して良いものだけではない。中にはアメリカの世界覇権を維持するために利用されているNGOが存在しているのも事実だ。
近年、世界中で起こった世界同時革命の裏側にNGOとCIAの共同作業があった事は公然の秘密だがそれをわかりやすく説明したのがこの動画だ。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/240517
【特別寄稿】安倍首相の「人道支援」発言とNGOの軍事利用 ―救援者、それともCIAスパイか―(米川正子 元UNHCR職員・立教大学特任准教授)
邦人人質事件を受けて安倍首相が何度も「人道支援(の拡充)」発言を繰り返しましたが(編※a)、人道支援団体がCIAに情報収集のソースとして利用されていることは、前回の寄稿に触れました。
・「邦人人質事件と安倍首相の「人道支援」発言の裏にひそむもの 〜情報・諜報収集が目的か?」
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/233685
CIAは、情報収集だけでなく、一部のNGOを武器輸送の手段として利用していることはあまり知られていませんが(編※b)、実はあるハリウッド映画はCIAスパイと紛争(周辺)地域で働く人道援助団体の関係性について描き、論争を引き起こしたことがあります。
(編※)IWJ編集部による注釈
(著※)本記事執筆者による注釈
■アンジェリーナ・ジョリー主演の人道支援の映画にCIAが登場
UNHCRの親善大使(現在は特使)のアンジェリーナ・ジョリーが主演し、2003年に公開された映画「すべては愛のために」(編※c)。日本においてはタイトル通り恋愛ストーリーとして知られており、映画監督もそう強調しています。しかし、この映画の原題は‘Beyond Borders’なので、直訳すれば「国境を越えて」。つまり、国境を越えた人道支援活動、あるいは国境を超えた難民をイメージしたタイトルなのです。しかし、それ以外にも、隠れた意味合いがあると思われます。
それは、人道援助団体が、本来の活動の「域を超えた」行為に従事していること。
実際に、映画の中に、ゲリラに拉致されたNGOの医者について、国際赤十字の職員が「彼は単なる医者ではなく、救援の域を超えて活動していた」と話すシーンがあります。
興味深いのは、慈善団体っぽい名前の名刺を有したCIAスパイが、慈善団体のパーティー会場やNGOが活動する紛争地域など様々な場所に登場することです。
そこでは、難民用の食糧の資金が不足しているために、上記のNGOの医者がCIAに助けを求めようとしたり、同医者がCIAから大金を受け取り、カンボジアのクメールルージュ支配地域に住む子供にワクチンを打つために薬品を輸送する途中で、その物資の中に隠されていた武器、コンピューターや機密書類が没収されます。同医者はそれに関して、「救援活動を続けるために、武器を輸送するしかなかった」と白状したのです。
本映画は、世界中の紛争地域で人道援助団体が厳しい環境で人命救援に貢献している事実を描き、そうした団体にとっては格好の広報喧伝になったと思われがちですが、同映画の公開で、CIAの指導下で救助機関が働いているというイメージが広まれば、実際の現場で働く職員たちの命が危険に晒されると、欧米や日本のNGOの間では不評でした。これについて一切報道しなかった日本の大手メディアとは逆に、西洋の大手メデイアは大々的に取り上げました。(著※1)
映画監督は何を題材に本映画を作成したのか不明ですが、残念ながら、CIA陰謀説は映画の中だけでなく、現実に起きています。実際に、アメリカ人の人道支援家がスパイと誤解されてか、1995年にチェチェンで殺害された事件がありました。(著※2)(編※d)また本映画の内容について、アメリカの大手NGO、International Rescue Committee(IRC、国際救済委員会)は「我々は銃を密輸していない。(人道)原則とガイドラインがあり、我々はそれらに従っている」と述べましたが(著※3)、これは真実ではありません。
■アメリカのNGOがCIAの下請けに
アメリカ政府のNGOの軍事利用は、「対テロ戦争」以降、劇的に顕著になりましたが、実はそれ以前から始まっており、中でもIRCがアメリカ政府とCIAの下請けであることはよく知られています。(著※4)
IRCは、ナチス・ドイツからユダヤ難民を脱出させるための手段として、アインシュタインによって1933年に設立され(著※5)、エレノア・ルーズベルト(ファーストレディ)などの支援も受けていました。1950年代以降アメリカ外交の役割を補い、グローバルな団体と発展しましたが、それはIRCの理事に、キッシンジャー元国務長官(元難民)といったインテリジェンスや国家安全保障に関わる大物の名前が連なったことも影響しています。(著※6)
IRCが取り組んだ「半分人道的、半分軍事的な支援」(著※7)の事例は、1996−7年の第一次コンゴ戦争で見られました。アメリカ政府は当時のモブツ政権の打倒(編※e)のために、コンゴ反政府勢力(AFDL)に直接兵站の支援をしただけでなく、IRCを通して、コンゴ東部の州都の2カ所に高射砲隊(anti-aircraft artillery)を設置した上に、食糧配給という手段で反政府勢力の公務員に給料を支払ったのです。(著※8)
筆者もコンゴで勤務していた際に、IRCの内密の活動について、同僚と共に耳にしたことがよくあります。その活動とは、コンゴ東部に勤務していた国連やNGOの外国人職員が、第2次コンゴ戦争開始の1998年に国外に避難する中、IRCは反対に戦闘地に飛び込み、航空機で武器を輸送していたことです。
他にも、武装輸送は確認されていませんが、CIAがIRC以外の機関を通して、人道支援に関わる事例もあります。
援助団体は、援助物資の輸送のために航空会社やトラック会社と契約を結びますが、1969年から1973年まで、CIAが所有していたサウズン・エア(Southern Air)は、1990年代にUNHCRや赤十字と契約を結び、ソマリアやエチオピア難民の帰還や援助物資の輸送に使われました。(著※9)
映画「すべては愛のために」に話を戻すと、CIAが慈善団体っぽい名前の名刺を提示したシーンも、実話にもとづいています。パキスタンの新聞によると、アメリカ海軍兵士、警備員やスパイが偽パスポートを有しながら、アメリカに拠点がある名高い国際NGOの名前を使って、あるいは実在しない偽の人道支援NGOの下に、滞在していたと報道しました。(著※10)
このような機密の行為によって、現地では外国人の人道支援家に対する不信感が増大し、彼らの危険を脅かすことになります。
■人道支援の影に隠れて着々と進められる安倍政権の思惑
当然のことながら、これらのことを「アメリカの問題」としてのみ扱うことはできません。
安倍政権は、NGOの軍事利用をもくろんでいると疑われる一連の決定を、着々と下しています。
国家安全保障会議の設置と国家安全保障戦略の策定、武器輸出三原則から防衛装備移転三原則への改定、集団的自衛権行使容認の閣議決定。それに加えて、新たな「開発協力大綱」の閣議決定によって、それまでの原則で禁じられてきた、他国軍の活動への非軍事的な支援が可能になりました。
外務省によると、ここで言う「開発協力」とは、狭義の「開発」のみならず、人道支援なども含め広くとらえています。(著※11)
これらの安倍政権の動きについて、日本でほとんど報道されていない人道支援の影の現実と照らし合わせながら、真剣に議論を進めなくてはなりません(続)。
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【著者注釈】
(著※1)The Guardian, ‘Hollywood tale of aid worker in cahoots with CIA sparks dismay’, 15 November 2003, http://www.theguardian.com/world/2003/nov/15/usa.film; The World Today, ‘Aid workers critical of Hollywood film’, 17 November 2003, http://www.abc.net.au/worldtoday/content/2003/s990819.htm などを参照。
(著※2)The Nations, ‘Spy or Savior?’, July 8 1999, http://www.thenation.com/article/spy-or-savior
(著※3)The Sunday Morning Herald, ‘Jolie’s film under fire’, November 10 2003, http://smh.com.au/articles/2003/11/10/1068329474384.html?from=storyrhs
(著※4)Eric Thomas Chester, Covert Network: Progressives, the International Rescue Committee and the CIA (Armonk/London: M.E. Sharpe, 1995).
(著※5)Wayne Madsen, Genocide and Covert Operations in Africa 1993-1999, (Lewiston: The Edwin Mellen Press, 1999) 208
(著※6)Ibid
(著※7) Gérald Prunier, Africa’s World War: Congo, The Rwandan Genocide, and the Making of a Continental Catastrophe (Oxford: Oxford University Press, 2009) 127.
(著※8)Filip Reyntjens, The Great African War: Congo and Regional Geopolitics, 1996-2006 (Cambridge: Cambridge University Press, 2009) 68.
(著※9)Madsen, Genocide and Covert Operations in Africa 1993-1999, 361
(著※10)The Nation, ‘Blackwater infiltrates streets of Islamabad’, 14 May, 2010, http://nation.com.pk/politics/14-May-2010/Blackwater-infiltrates-streets-of-Islamabad
(著※11)外務省「開発協力大綱の決定について」(日程不明)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/kaikaku/taikou_minaoshi/files/h_shiryo_2.pdf
【編集部注釈】
(編※a)人質の動画がインターネットで公開されたきっかけとなったと言われる2015年1月17日エジプトにおける安倍首相演説には、「難民・避難民支援…地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度の支援」という表現で、「人道支援」は明言されていない。
ところが、安倍首相は人質の動画の公開後に行なわれた1月20日イスラエルのエルサレム市内での記者会見で、「難民支援を始め、非軍事的な分野で…貢献を行う。2億ドルの支援は、地域で家を無くしたり、避難民を救うため、食料や医療サービスを提供するための人道支援。正に、避難民にとって、最も必要とされている支援」と、初めて人道支援を口にした。
また、1月27日の衆議院本会議でも、イスラム国対策として2億ドルの支援を表明したことに関連し、「テロリストの脅かしに屈すると周辺国への人道支援はできない」と強調している。
(編※b)
米国がNGOを軍事作戦や工作に利用している、という指摘は多くのジャーナリストが指摘している。
・ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版『「オレンジ革命」と米ロの影』 ジャン=マリー・ショーヴィエ(Jean-Marie Chauvier)、訳・岡林祐子、斎藤かぐみ(2005年1月号) http://www.diplo.jp/articles05/0501-2.html
・Strategic Culture Foundation Online Journal『アメリカのカラー革命支援の歴史を書き換えるケリー国務長官』(Kerry Re-writes History of U.S. Support for Color Revolutions)ウェイン・マドセン(Wayne MADSEN) (2015年3月6日)http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-79c2.html
・Strategic Culture Foundation Online Journal『ウクライナ: NATOの東方の獲物』ウェイン・マドセン(Wayne MADSEN)(2013年12月16日)http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/nato-07ed.html
・CIA/NATOの‘汚い戦争’作戦の匂い漂うイラクISIS
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/cianatoisis-cec.html
(編※c)
・『すべては愛のために』(原題: Beyond Borders)
―KINENOTE
http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=34402
―Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/すべては愛のために
(編※d)フレッド・クニー(Fred Cuny)(1944年11月14日米国コネチカット州生まれ)。災害復旧のスペシャリスト。1969年より数々の人道支援プロジェクトで活動した。ビアフラ、ガテマラ、エチオピア、イラク、ソマリア、ボスニアといった国々を回り、ジョージ・ソロス氏(米国投資家・投機家)が会長を務めるオープン・ソサエティ協会(Open Society Institute)と密接な協力関係にあった。
クニー氏は秘密裏に雇われた政府エージェントだと多くの人から信じられていた。その理由として、政府の力に頼ることなくしては実現不可能と思われる次の二つの救援活動を成功させたことがあげられる。湾岸戦争後、トルコ・イラク国境沿いに避難していた約40万人のイラクのクルド人難民を、クニー氏は実質的にたった一人で、現地の米国軍の指揮官から協力を取りつけ、100日以内に無事帰還させている。また、サラエボでは、輸送物資で満杯状態の国連の救援機C-130に、大型のトレーラーを優先的に運ばせ、セルビア人によって破壊された水処理プラントを見事再建した。
1995年4月、クニー氏と赤十字の医師2人、そして通訳が停戦合意に向けて交渉中のチェチェン共和国で消息を断った。クニー氏はジョハル・ドゥダエフ氏(チェチェン大統領ロシア側)から安全を保障されていたが、ロシア勢力は彼らがロシアのスパイであるという情報操作を行い、チェチェン側勢力(諜報機関)はそれを信じ、処刑したと考えられている。4名は消息を断ったまま、未だに発見されていない。
(編※e)ジャーナリストのウェイン・マドセン(Wayne MADSEN)が2001年に米下院の公聴会で行った「米国が中央アフリカでの大虐殺と内戦に果たした役割と、現在民間軍事請負会社がその他のアフリカの紛争地域で果たしている役割」等についての報告
http://mienaisenso.blogspot.jp/2011/12/blog-post.html
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