04. 2015年3月24日 01:56:25
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イエメン情勢Q&A:フーシの侵攻で内戦の瀬戸際 2015.3.24(火) Financial Times (2015年3月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)イエメン首都の連続自爆攻撃、死者142人に ISが犯行声明 3月20日、自爆攻撃があったイエメンの首都サヌア南部のバドルモスクで被害状況を調べる男性ら〔AFPBB News〕 イエメンの反体制派武装組織「フーシ」は、アブドラブ・ハディ大統領に忠実な軍隊に対し「総動員体制」を取ると宣言した後、22日に入って同国第3の都市タイズの支配を固めた。イエメンは全面的な内戦にますます近づいている。 フーシの部隊は、首都サヌアと南部の港湾都市アデンとの間にある戦略上の要衝にまで勢力を広げたことになる。劣勢のハディ大統領は、アデンに政権を樹立しようとしている。 サヌアでは、フーシが奉じるイスラム教・ザイド派(シーア派の一派)の信者が多数集まった複数のモスクで自爆テロがあり、少なくとも137人が死亡したことから、週末は緊張が高まっていた。 「宗派に基づいてモスクを選別して標的にするというのは、治安が悪化していることを示すゆゆしき事態だ」。国連のイエメン特使、ジャマル・ベノマール特別顧問はこう語った。 フーシの盟友であるアリ・アブドラ・サレハ元大統領に忠実な部隊は先週、ハディ氏の部隊とアデンやその隣のラハジ州で衝突した。ラハジ州には重要な軍事施設がある。 ラハジ州のこの基地には米軍の要員が駐留していたが、治安上懸念があるとの理由で退避。その直後に、この施設はハディ氏側と同盟関係にある民兵に急襲された。 こうした動きに対しフーシは、ハディ氏は民兵のバックグラウンド(経歴)をチェックせずに武装させていると主張し、イエメン南部への攻撃を始めた。フーシはまた、この武器供与によってイエメン南部は「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」の支配下に入ってしまう恐れがあり、ラハジの基地襲撃に参加したハディ氏側の兵士の多くはAQAPのメンバーだったと述べている。 ■誰と誰が戦っているのか? 2012年に大統領に就任したハディ氏は、アデンを暫定的な首都にすると宣言している。 同氏はここで、自分にまだ忠実な部隊を増強するために、イエメン南部と北部の分離に賛成で反フーシの立場を取る部族やスンニ派のイスラム教徒を集めて2万人規模の民兵部隊を立ち上げようとしている。 ハディ氏は首都サヌアの奪回も計画している。サヌアには昨年9月、イエメンを長年支配したサレハ元大統領に忠実な部隊やいくつかの部族の民兵組織から支援を得た、フーシ主導の連合部隊が入り込んだ。 フーシはかつて、ザイド派(シーア派の一派だが、イランの国教である12イマーム派とは異なる)の信仰復興運動だったが、2004年から2010年にかけてイエメン政府と6度戦う間に、同国で最も実力のある武装勢力の1つに変身を遂げた。 そして2011年にサレハ体制の内紛で治安の空白地帯が生じると、イエメン北部の高地にある本拠地サーダの支配を固め、2013年に南方に打って出た。 イエメン民兵組織、国連安保理決議に反発 撤退を拒否 イエメンの首都サヌアで車の荷台に乗りシュプレヒコールを上げる民兵組織フーシの戦闘員ら〔AFPBB News〕 複数のアナリストの話によれば、サレハ氏はかつてフーシの大敵だったが、2011年のアラブの春の影響で大統領の座を追われたことの報復を目指し、フーシと便宜的に手を組んだ。 サレハ氏はイエメンを全面的な内戦に追いやって保守スンニ派のライバルたちとフーシの双方を弱体化させ、最後に自分が権力を握ろうとしているのかもしれない、との説もある。 ■イランとサウジアラビアの代理戦争なのか? ハディ氏の部隊は、サウジアラビアが主導する湾岸諸国から資金援助を受けていると考えられている。サウジアラビアはフーシをイランの代理人と見なしており、中東のほかの戦闘地域(イラクやシリアなど)にイランが事実上介入していることに警戒感を抱いている。 フーシの革命活動はイランから援助を受けているとの指摘があるが、フーシはこれを以前から否定している。だが、フーシが首都を制圧してからは、支援物資を積んだイランの航空機がサヌアに定期的に着陸している。 「サウジアラビアは、イエメンにおけるイランの影響力を押し戻すことを優先的に考えるようになるだろう」。英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)中東オフィストのエグゼクティブディレクター、ジョン・ジェンキンス氏はそう指摘する。 「だからハディ氏をできるだけ支援したいと考えるだろうし、南部のスンニ派の部族を関与させる方法を探り、彼らがAQAPと一緒に反フーシの急進的なスンニ派同盟を組むことを阻止したいと思うだろう」 ■内戦化を防ぐことはできるのか? 双方が和平交渉を呼びかけているが、どこで開催するのか、誰が主導するのかといったことでもめている。国連特使のベノマール氏がサヌアで現在主導している交渉をハディ氏は「正統でない」と見なし、サウジアラビア主催の話し合いをリヤドで行うよう要求している。 一方、フーシはイエメンの陰の実力者たちとの話し合いを求めているが、ハディ氏を正統な大統領とは見なしていないと発言しており、ハディ氏はイエメン政府を「傀儡政権」に変えようとしていると非難してもいる。サウジアラビアはハディ氏の和平交渉の計画を支持しているが、フーシが交渉に参加する前提条件としてフーシのサヌア撤退を要求している。 ■今後の見通しは? イエメン大統領、治療のためNYに到着 復権を狙っていると言われるアリ・アブドラ・サレハ元大統領〔AFPBB News〕 サヌアを拠点とする政治アナリスト、アブデュルガニ・アルイリアニ氏によれば、サレハ氏とフーシは現在の支配状況に強い自信を持っており意味のある和平には応じないうえ、序盤は戦いを優勢に進める公算が大きいという。 ただし、湾岸諸国の支援を受けているスンニ派の同盟が次第に勢いを増すことから、フーシ側の優位は短命に終わる可能性もあると同氏は指摘している。 By Peter Salisbury and Simeon Kerr in Dubai http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43289
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