03. 2015年3月09日 10:55:43
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さらに、ややこしくなるな http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43136 対イラン戦争しか頭にないイスラエル首相 2015年03月09日(Mon) Financial Times (2015年3月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
イスラエル首相、米議会で演説 イラン核めぐり米政権と衝突 3月3日、米議会の上下両院合同会議で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相〔AFPBB News〕 皮肉は、ベンヤミン・ネタニヤフ氏の得意とするところではない。 イスラエル首相は3月初め、イランの核開発計画について再び終末論的な警告を発するためにワシントンにいた。今回は、2012年に国連で高々と振りかざしたイランの核爆弾の略図は家に置いてきた。 だが、この直近の演技は、今の指導者ほどイスラエル国家を無防備にすることに熱心な人は誰もいないことを改めて思い出させた。 驚くまでもなく、ネタニヤフ氏は米議会の共和党の友人たちから温かい拍手を浴びた。ジョン・ベイナー下院議長は、バラク・オバマ大統領に恥をかかせる機会を決して逃さない。多くの民主党議員は会議を欠席した。 イスラエル国民が心配すべきなのは、米議会の外では、誰も耳を傾けていないことだ。ネタニヤフ氏が自らのトレードマークにした好戦的な強硬姿勢は、とうの昔に欧州諸国の支持を失った。共和党議員と一緒になってオバマ氏を批判することで、ネタニヤフ氏はホワイトハウスとの信頼関係を粉々にした。 自ら信用を落としたネタニヤフ首相 ここに、1つ、皮肉がある。ネタニヤフ氏は自分自身から信頼性を奪い去ったのだ。このイスラエル政府がイラン政府との核合意の明白なリスクについて何を言っても――それが分別のあるものであろうとなかろうと――、大抵の場合、新たな中東戦争にひたすら固執する人物の戯言として片づけられるだろう。 真の政治家であれば、イスラエルを6カ国協議のパートナーにしていたはずだ。だが、傍観者の立場から怒りの叫びを上げることで、ネタニヤフ氏は脇に独り取り残されることになった。 イスラエルが孤立へ向かっているのは、イラン問題だけのためではない。国連でパレスチナを国家として正式承認する方向に国際社会を向かわせている世論のうねりは、元をたどれば、イスラエルが占領地のヨルダン川西岸地区で違法な入植地を急拡大したことに真っ直ぐ行き着く。 イスラエル 入植凍結終了後に住宅建設加速、和平交渉再開に暗雲 イスラエルはヨルダン川西岸でユダヤ人入植地を急拡大させてきた〔AFPBB News〕 マフムード・アッバス氏率いるパレスチナ自治政府は、真剣な和平交渉が行われた場合には、大きな譲歩をしなければならない。 ところが、自治政府は無料乗車券を与えられた。 イスラエルの指導者が米国の和平努力を公然とさげすみ、毎週毎週、パレスチナ領土を次々奪い取ることで2国共存の概念に侮蔑を示す時に、パレスチナ自治政府が動く必要がどこにあるのか? 厚顔としか言いようのないネタニヤフ氏は、自身の訪米を「宿命的、場合によっては歴史的な使命」と呼んだ。ネタニヤフ氏は現代版のウィンストン・チャーチルを気取っている。これはベイナー氏が喜んで満たしてくれる虚栄心だ。 イスラエル国内からも批判の声 多くのイスラエル人は異なる見方をしている。野党議員たちは、ネタニヤフ氏が労働党のアイザック・ヘルツォク氏に敗れる可能性のある総選挙を2週間後に控え、メディアの注目を集めようとして、米国との関係を悪化させたと非難した。 より多くを物語るのは、かつてイスラエルの安全保障体制を担った多くの高官や将官らが、今回のスタンドプレーは「イスラエル国家の安全保障に対する明白で現存する脅威」だと述べたことだ。彼らいわく、オバマ氏との亀裂は、イスラエルに対する米国の超党派の支持を危険にさらし、最も重要な友人を敵に回してしまった。 こうしたイスラエルの重鎮たちは、イランを党派的な問題に変えることによって、ネタニヤフ氏は実は、3月末の交渉期限までにオバマ氏がイランとの枠組み合意をまとめるのを容易にしたと付け加えてもよかったかもしれない。 イスラエルに対する米国の支持は何も、米国人が、イスラエル首相が自国大統領を戦争へと駆り立てようとする様子に甘んじることを意味するわけではない。筆者が想像するに、ほとんどの米国人は中東での軍事的冒険にうんざりしている。 6カ国協議の他の当事国に関して言えば、ネタニヤフ氏の今回の一斉射撃は単に、長年蓄積されてきた先入観を裏付けただけだろう。 2つ目の皮肉は、もちろん、イスラエル首相が検討中のイランとの取引の概要はリスクをはらんでいると言う時、それが正しいことだ。 ヒズボラの後援者、また、シリアのバシャル・アル・アサド大統領の大事な支持者としてのイランの役割は、その政権について知る必要のあることをすべて物語っている。ウランの備蓄を減らし、濃縮の規模を縮小し、国際的な監視や査察を受け入れるという約束は、イラン政権が核爆弾の製造を目指さないことを保証するものではない。 ネタニヤフ首相があえて言わないこと ネタニヤフ氏は、もう1つの選択肢は、イランが軍事用のみならず民生用もひっくるめてすべての核活動を放棄するまで制裁を強化することだと主張している。 もっとも、同氏はそれが幻想であることを知っている。そのような制裁の手段と目的はどちらも信じがたい。制裁によって、イラン政府がそうような誓いを立てることも、核爆弾の製造をやめることも決してないだろう。 イスラエルの指導者が本当に望んでいるのは、米国が主導する対イラン戦争だ。ネタニヤフ氏がもう1つ口に出さないことは、中東で新たな大火が起きれば、イラク政府の核の野望を根絶する可能性がさらに小さくなるということだ。 イランへの爆撃はむしろ、米国が押し付ける政体変更を阻む唯一確実な保証が核能力であるということを強硬派に確信させることになるだろう。 イラン、20%濃縮ウランの製造停止 核合意の履行開始 2012年にイラン国営プレスTVが放映した、ナタンツのウラン濃縮施設に設置された遠心分離機〔AFPBB News〕 イランは核サイクルを習得した。専門家が「ブレークアウト能力」と呼ぶものも持っている。少なくとも1個、ことによると数個の核爆弾を製造できるだけの原料のことだ。 知識は、爆撃で吹き飛ばすことができない。また、空爆が無制限のものでない限り、外部勢力は、イランがそうした襲撃に耐える新しい核施設を作るのを防ぐこともできない。 「決して核兵器を求めない」、イラン大統領が米テレビで明言 イランのハサン・ロウハニ大統領〔AFPBB News〕 原油価格の急落によって悪化した制裁の激しい痛みに直面して、イランのハサン・ロウハニ大統領は、関係の力学を変化させるかもしれない機会を西側に提供している。 一方のオバマ氏は、核爆弾を製造するいかなる試みについても1年間の事前通知期間を設けるそこそこ堅実な取引に応じる用意がある。 不完全な妥協でも無益な戦争よりまし オバマ大統領の国家安全保障問題担当補佐官、スーザン・ライス氏は、米国のアプローチは「信用しないが検証する」ことだと言う。それは悪い総括ではない。 条件が明確にされれば――イラン政府がそれらを受け入れるという確証はまだない――、そのような取引は、世界で最も不快で危険な政権の1つとの不完全な妥協になるだろう。それでも、無益な戦争よりずっとましだ。 By Philip Stephens
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