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コラム:覆面男「ジハーディ・ジョン」後継者育てる負の連鎖
2015年 03月 2日 16:55 JST
John Lloyd
[27日 ロイター] - 過激派組織「イスラム国」の黒い覆面姿の男、通称「ジハーディ・ジョン」の身元が、クウェート出身の英国人モハメド・エンワジ容疑者であることが先に明らかになった。ロンドンの裕福な家庭で育ち、ウェストミンスター大学でコンピュータープログラムの学位を取得したという。
「ジハーディ・ジョン」はこれまで、米国人ジャーナリストのスティーブン・ソトロフ氏や英国人援助活動家デービッド・ヘインズ氏、日本人ジャーナリスト後藤健二さんらを斬首したとする映像に繰り返し登場してきた。
その正体が英国人だったという事実は、2005年夏に起きたロンドン同時爆破事件に比べれば、英国民にとってショックは小さかったように見える。52人が死亡し、約700人が負傷した同事件は、英国人4人が実行犯だった。犯行グループのリーダー、モハメド・サディク・カーン容疑者は事件前に録画したビデオで、「われわれの仲間に対する爆撃や毒ガス攻撃、監禁や拷問をやめない限り、われわれはこの戦いをやめない」と語っていた。
この発言は今も、イスラム過激派の基本姿勢や、彼らの行動の論理的根拠であり続けている。「お前たち(西側民主主義)がイスラムに戦争をしかけているから、イスラムの最前線にいるわれわれがお前たちと戦争をしている」というものだ。若者の急進化、特に若いイスラム教徒の急進化には当時多くの議論があった。
その後、急進化はさらに深く進んだように見える。「イスラム国」や他の過激派組織に参加する目的で英国を離れた若者の数については諸説あるが、若者の急進化防止対策が足りないと英政府を批判するハリド・マフムード議員は昨年8月、毎年500人前後の若者が、聖戦願望を胸に英国を離れたと指摘した。累計で「少なくとも1500人」とすれば、英外務当局の推計300─400人を大幅に上回り、英軍に在籍するイスラム教徒の数600人の2倍以上ともなる。
「ジハーディ・ジョン」の身元が判明する数日前、英国の少女3人が「イスラム国」に参加するため、トルコ経由でシリアに向かったとみられることが分かった。3人はいずれも10代で、イスラム国の戦闘員と結婚するためシリアを目指したと推測される。
彼女たちは、2013年11月に英国からシリアに向かい、イスラム国の勧誘員になったと考えられているグラスゴー出身の女性、アクサ・マフムードさんに誘われたとみられる。ショックを受けているマフムードさんの家族は声明を発表し、そうした行為は「道を踏み外し、イスラムを邪悪に歪曲するものだ」としている。
家族の広報役を務める弁護士で左派活動家のアーメル・アンワル氏は、BBCのインタビューで、少女3人の出国は治安当局の責任だと非難。「アクサのソーシャルメディアは彼女が姿を消した1年以上前から監視され、少女たちと連絡を取り合っていたことが疑われるにもかかわらず、3人が英国からトルコ経由でシリアに向かうのを阻止できなかった」と語った。
しかし、西側諸国の治安当局がより効果的に情報を監視するためには、いくつかの制約がある。
1つ目の制約は予算だ。英国や米国では、警備や監視に携わる人の数は増えているが、それでも潜在的な脅威の前では見劣りする。元諜報当局者の話によると、24時間365日の監視体制を組むには最大60人の人員が必要で、1日に1万5000─2万3000ドル(約180万─276万円)のコストがかかる。一方で、英国の情報局保安部(MI5)と情報局秘密情報部(MI6)、政府通信本部(GCHQ)に与えられている予算は合計30億ドル(約3600億円)であり、監視対象は厳選せざるを得ないのが実情だ。
民主主義による制約もある。国家テロ対策室の元責任者クリス・フィリップス氏は、先に行われた公開討論会で、「まだ罪を犯していないが、テロの入り口に立っている人がいる時、われわれはどうするのが良いだろうか」と問いかけた。その上で「治安当局は、信念と行動を隔てる一線を越えそうなのは誰かを判断材料にしており、ジハーディ・ジョンはそこを免れた」と語った。
報道の自由による制約もある。治安当局は「ジハーディ・ジョン」ことモハメド・エンワジ容疑者のことを知っていたばかりか、情報源として採用しようとさえしていた。当局はエンワジ容疑者の情報は伏せていたが、米ワシントン・ポスト紙によって報道された。もっと大きな話で言えば、米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者の暴露により、米国家安全保障局の機密情報は多くが外部に流出した。公開されたのはまだ一部であり、今後も「告発」は続くだろう。治安当局にとって、それは大きな打撃だ。
若者たちは、自室のコンピュータースクリーンの前で、時として宿題をやりながら、急進的な思想に染まっていく。2011年7月に起きたノルウェー銃乱射事件で77人の命を奪ったアンネシュ・ブレイビク受刑者について書かれた本からは、成績の良かった同受刑者がどのようにして、移民排斥を主張する過激主義者に変わっていったかをうかがうことができる。ブレイビク受刑者は、ネット検索でかき集めた記述や画像から、自身の大仰な妄想を支える思想を築き上げた。
現代のジハーディスト(聖戦主義者)たちは西側諸国で、まさにこうした方法を駆使している。イスラム活動家や研究者、親や教師は若者の急進化防止に取り組んでいるが、デジタル化された憎悪は増幅している。「ジハーディ・ジョン」や「ジハーディ・ジェーン」になりたがる者は後を絶たないだろう。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0LY0K320150302
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