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コラム:亀裂見え始めた「イスラム国」ビジネス
2015年 02月 23日 18:15 JST
Ora Szekely
[20日 ロイター] - 過激派組織「イスラム国」は過去1年、自分たちの残虐行為を絶え間なく世界に見せつけてきた。イラクで少数派ヤジディ教徒の大量虐殺を試み、シリアではシーア派住民を惨殺し、ジャーナリストや活動家らを非道な方法で処刑した。
先週には、キリスト教の一派コプト教徒のエジプト人21人をリビアで斬首したとする映像を公開した。しかし、強気一辺倒の彼らの公式声明とは裏腹に、イスラム国は戦略的に自分たちをどんどん追い詰めているように見える。
イスラム国の勢力拡大はこれまで、強奪や盗みに大きく依拠してきた。彼らは昨年6月にシリア東部で強奪した油田からの石油収入や、イラクのモスルで略奪した金品、人質の身代金などを主な資金源に、非常に短期間で大量の戦闘員を集めてきた。しかし、米国主導の空爆と世界的な原油安により、石油収入は減っている。また、今月に悲劇的な死を遂げた米国人援助活動家カイラ・ミューラーさんは、イスラム国が拘束する最後の外国人人質だった可能性があり、身代金という主たる資金源も断たれているかもしれない。
つまり、イスラム国は岐路に立たされたと言えそうだ。これまで彼らの勢力拡大を支えてきた戦略は、ますます維持不可能になりつつある。彼らが得たものを手放さないつもりなら、いくつかの方針は変更を余儀なくされるだろう。
あらゆる武装集団は、自分たちの目標を達成するため、武器や資金や戦闘員のほか、組織の政治的正当性など、広範なリソースを必要とする。彼らがこうしたリソースを得るための手段は、大まかに言えば3つのカテゴリーに分けられる。1)強奪、2)バーター取引、3)外部からの供与だ。一部の武装組織は、自分たちに必要なものは盗み、農家から収穫を略奪したり、身代金目的でジャーナリストを誘拐したりする。バーター取引を選ぶ組織は、国家に戦闘部隊として自分たちを売り込み、その見返りに資金や武器を手に入れる。外部からの供与に頼る組織は、有権者や政府に対し、大義実現のための政治的・物質的支援の自発的提供を求める。大部分の武装組織は、上記3つの方法をすべて組み合わせて使っている。
今後、イスラム国はどう動くだろうか。
これまでのところ、主に彼らは1番目のアプローチである強奪に頼ってきた。しかし、この手段は今後ますます難しくなるだろう。彼らがすでに奪い取ったリソース、つまり石油や現地銀行からの現金、そして人質も、簡単には再生できないからだ。またイスラム国の指導部は、残虐行為を繰り返せば、現地住民の幅広い支持を得るのは極めて難しくなると気づき始めている。
バーター取引という方向にかじを切る可能性はどうか。その場合、自分たちの大義とは関係が薄い国家のためにも傭兵軍として動き、資金などの援助を受けることになる。この手の構図は1970年代や80年代、カダフィ政権下のリビアと、カトリック系過激派組織「アイルランド共国軍(IRA)」や旧西ドイツの極左民兵組織「ドイツ赤軍」などの間に見られた。しかし現在では、こうした無法国家はどんどん少なくなっている。また、イスラム国は地域の政府をあまりに敵に回しているため、シリアのアサド政権と敵対するヨルダンやトルコでさえ、イスラム国を信頼できるパートナーとは見なさないはずだ。
最後に、外部からの供与に軸足を移す可能性を考えてみよう。ある程度は、すでにそうした動きは見られる。イスラム国はソーシャルメディアでの大規模な広報活動を通じ、カタールやクウェートのシンパから寄付金を集めている。しかし、こうした献金は、イスラム国の収入全体から見れば取るに足りないものだ。また、イスラム国の支援に関心がありそうな国も周辺にはほとんど見当たらない。過去に武装組織を支援していたイランとシリアも、イスラム国に対する敵意を隠していない。アラブの君主国は、「カリフ制(預言者ムハンマドの後継者が指導する体制)」の復興というイスラム国が掲げる主張を、自分たちの政権基盤に対する脅威だと感じている。
イスラム国が外部からの供与を受けるためには、意識を内側に集中させる必要があるだろう。それはつまり、支配下の地域住民に統治の改善などをアピールしつつ、同時に周辺地域に自分たちへの支持を訴えることを意味する。これには、拡大主義的野望を抑え、挑発的な態度をトーンダウンし、自分たちの大義がサウジアラビアなどの国家にとって脅威にならないよう見直すことが必要だ。言い換えれば、現在の姿とは根本的に異なる組織にならなくてはならない。
イスラム国にその意志はあるのか。また、あったとしても実現できるのか。
今のところ、それは定かではない。過去には、自己改革に成功した武装組織もある。ヒズボラとハマスはそれぞれ1990年代と2000年代、地元および強力な支援国家からの支持を引き出すために内部改革を行った。しかし、両組織が持ち合わせていた合理的な指導部と団結力は、今のイスラム国からは見えてこない。
これはおそらく、急速な拡大の副作用だ。イスラム国には比較的短期間のうち、イラクの旧フセイン政権の残党やアルカイダの不満分子、地域の犯罪者や欧州の反抗的な若者が流れ込んだが、彼らのうち誰1人、残虐行為に歯止めをかけることに関心はなさそうだ。また、周辺諸国に脅威を与え過ぎないよう、自分たちのイデオロギーを加減することにも関心はないように見える。
もし、イスラム国の指導部に方針を変える意志がなかったり、変えたくてもできないのだとすれば、これまで同様、今後も暴力と強奪に訴え続けるのだろう。しかし、そこで得られるものは減っていく一方だ。
*筆者は、マサチューセッツ州ウースターのクラーク大学で、政治学の助教を務める。専門は中東の武装組織の研究。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0LR0I520150223
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