http://www.asyura2.com/15/warb15/msg/143.html
Tweet |
2015年 02月 13日 17:08 JST
Robin Niblett
[12日 ロイター] - ベラルーシの首都ミンスクで12日に合意されたウクライナ停戦は、1つの問題を提起している。それは、欧米各国の政府が過去数週間にわたり激しく議論してきた、ウクライナ軍への武器供与という考えを見送るべきかどうかということだ。
ロシアのプーチン大統領はこの数カ月、昨年9月の停戦合意は戦略的敗北だと結論づけていたように思える。当時、ウクライナからの分離を求める親ロシア派勢力が支配していたのは、東部ドネツク州とルガンスク州を合わせた地域のわずか3分の1にすぎなかった。
これでは、ウクライナを従属させるというプーチン大統領の長期的目標の達成手段を得ることはできないはずだ。そしてロシアが今年に入り親ロ派への新たな軍事支援を行った結果、戦闘は激化し、ウクライナ政府と親ロ派の双方で市民と兵士の命が犠牲となった。
親ロ派は1月半ば以降、ドネツクの空港を再び制圧するなど、いくつか重要な勝利を収めてきた。だがそれでも、親ロ派がドネツクとルガンスクの両州を支配するには程遠かった。では、何が親ロ派とプーチン大統領を交渉の場に着かせたのだろうか。
ウクライナの抵抗と西側の経済制裁による影響が、役割を果たした可能性はある。制裁は戦闘が悪化するにつれ、解除される可能性が低くなるばかりだ。だが何よりも、窮地に立たされたウクライナ軍への武器供与をめぐる議論が大きな要因だと言える。
ウクライナ軍への武器供与は、米国の元高官や軍幹部らが先週末に独ミュンヘンで開催された安全保障会議を前に発表した報告書でも、強力に支持されている。それによると、経済制裁はロシアがウクライナに軍事介入する抑止にはなっておらず、その結果、冷戦後の欧州の秩序を分裂している。同様に、ロシアによる親ロ派支援への抑止力にもなっていない。自衛の意思があり、またその権利があるウクライナ軍に必要なのは適切な装備である。米国とその同盟国は、ウクライナの自衛を積極的に支援すべきであり、そうすることで親ロ派に顕著なダメージを、プーチン大統領に対してはロシア兵の犠牲という政治的代償を与えることが可能だという。そうなれば交渉の場に出てこざるを得なくなるというのだ。
一方、ドイツのメルケル首相はこうした意見への反論を明確に展開した。ウクライナ情勢で軍事的解決はあり得ない。なぜなら、事態を悪化させることができるのは西側よりプーチン氏であり、同氏の方が問題を多く抱えているため、そうする可能性がある。米国がロシアを倒そうと企てているというロシア国内の過熱した報道を考えれば、プーチン氏が米国から武器支援を受けたウクライナ軍に屈することは、外交的妥協を受け入れるのと同じくらいあり得ない。そして西側が武器を供与する道を突き進み、その武器によってロシアの「同国人」が殺害されたなら、欧州各国とロシアの関係は今後何十年にもわたって双方に多大なダメージを与える「凍結の時代」に突入する可能性があると主張した。
このような結末を回避するため、メルケル首相は賭けに出た。6日にフランスのオランド大統領と共にプーチン大統領と会談。そして11日の会談では、合意が見えなければ会わないとしていた。プーチン大統領がメルケル首相と合意に至らなければ、武器供与を主張する米国に抵抗する同首相の手腕が著しく損なわれていただろう。
それからどのようにして今回の停戦合意に至ったのか。まずは、昨年9月の停戦合意とおおむね似ていることを認識することが重要だろう。そして、昨年の合意がプーチン大統領の戦略的目標を明らかに前進させなかったことを考えると、戦闘が再開される恐れも否定できない。また、非武装地帯が設けられておらず、この点においても戦闘が再び勃発するリスクが残されている。
こうしたことを念頭に置きながら、米国とその同盟国は速やかに協議し、西側が予期すべきことと要求を明確に打ち出す機会として、今回の停戦合意を捉える必要がある。第一に、現行の停戦ラインを越えた戦闘の拡大は、ウクライナ政府の政治的主権に対する攻撃とみなされると明言すべきだ。そのような状況下において、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、ウクライナへの武器供与を決めた国々の邪魔はしないと。
第二に、今回の停戦合意が完全に履行されるまで、現在実施されている経済制裁の緩和を検討しないことを表明すること。それには、欧州安全保障協力機構(OSCE)が無制限に視察できたり、ウクライナ政府がロシアとの国境を確実に支配できたりすることを含む。
その間にも、欧州やその他の各国政府は、ウクライナが計画していた経済改革を開始するなか、表明していた支援を最後まで行うことが肝要だ。
もし戦闘が再開し、遠からずロシアの政策が変更されるならば、西側の軍事支援は経済制裁に比べて以前より効果的ではないかもしれない。軍事支援は実際に戦闘を悪化させる可能性がある。しかしながら、軍事支援も経済制裁も、その目的は主としてロシアにその行動に対する代償を課すことにある。過去70年かけて築き上げてきた繁栄と安全保障の礎となる価値観を守るためにはリスクをいとわないという意志を、プーチン大統領に示すことが最も重要なのではないだろうか。
*筆者は英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)所長。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0LH0LF20150213
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。