04. 2015年2月09日 16:14:37
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資源価格の下落が落ち着いてきたが、大幅な価格反転がすぐ起こらない限り、ロシア国民の窮乏は、これから本格化してくる一方のウクライナも、ユーロからの支援が十分でなければ、政府は不満をロシア派への軍事攻撃で逸らそうとするのが自然だ 何度も言っていることだが、結果として、プーチンの冒険主義も本格化していき、当面は、関係改善が急速に進む確率はほぼ0か http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42870
ウクライナはプーチンの作戦の一部に過ぎない 2015年02月09日(Mon) Financial Times (2015年2月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) ウクライナ和平めぐり独仏露の首脳が会談、共同文書作成で合意 2月6日、モスクワのクレムリンで会談するロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)とドイツのアンゲラ・メルケル首相〔AFPBB News〕 欧州は自分たちがウクライナ問題を抱えていると思っている。だが実際には、ロシア問題、より正確に言えば、ウラジーミル・プーチン問題を抱えている。 キエフに対するモスクワの戦いは、より大きな絵の断片だ。プーチン大統領の失地回復主義は、ウクライナを越えて広がっている。大きな目標は、この大陸の共産主義後の合意を破り捨てることだ。 ロシアと対峙することをためらう欧州の姿勢は、容易に説明できる。 経済的な利己心、歴史、文化的な親近感、普段は眠っている反米主義から、欧州の多くの人はプーチン氏のことを、ソ連崩壊を20世紀の地政学的惨事と見なす指導者ではなく、自分たちが望んでいた指導者として見ている。 西側諸国のためらい 西側が失敗した中東介入で懲りたという見方については、魅力的な説明がある。プーチン氏の要求が時として挑発的だとしても――また、ウクライナだけでなくグルジアの場合もそうだったように、完全な攻撃に発展することがあるとしても――、西側は事情をはっきり意識しておくべきだという。 もしかしたら、北大西洋条約機構(NATO)は本当に旧ソ連衛星国の受け入れに関する約束を破ったのではないか? NATOはセルビアを爆撃した時にルールを曲げたのではないか? イラク戦争については、まあ、これ以上言わなくてもいいだろう。 クリミアの併合とウクライナのドンバス地方への侵攻は、さまざまな疑念を払拭したはずだ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相の場合、それが起きたようだ。交渉より対立を好むような政治家ではないメルケル氏は、あまりに多くの嘘をつかれ、あまりに多くの約束を破られ、気持ちが固まった。 だが、欧州内の論争は終わっていない。ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)政権が示したロシア政府への共感については、盛んに取り沙汰されている。 SYRIZAだけではない。イタリアのマッテオ・レンツィ首相は、プーチン氏への忠誠を誓うことにかけてはシルビオ・ベルルスコーニ元首相の上を行っている。 ハンガリーのビクトル・オルバン首相は公然と自由民主主義を軽蔑している。キプロスは常にロシアの立場に味方するし、制裁体制に対するフランスの同意は生半可だ。だから、誰もロシアの直近の攻撃姿勢に驚くべきではない。クレムリンに対する挑発としては、宥和ほど強力なものはないのだ。 プーチン氏の不満のリスト――NATOによるロシアの「包囲」、ロシア政府に恥をかかせようとする計画、破られた国際的ルールなど――は、何度も繰り返し聞かれてきた。 時折、大きな嘘の中に小さな真実が隠れていることもあるが、本質的なストーリー展開は変わらない。西側はロシアの力と尊厳を破壊したいと思っている、というものだ。 そうした言い分はあまりにお馴染みになっているため、その意味が軽く受け止められることが多い。国境線を内側に引っ込めるというプーチン氏の約束はすべての人が聞いたが、本当に耳を傾けた人はごくわずかだ。 クリミア併合などは場当たり的だったかもしれないが・・・ キエフで7万人が反政権集会 2014年2月、ウクライナの首都キエフの独立広場(通称マイダン)での新欧米派デモに集まった参加者たち〔AFPBB News〕 クリミア併合とウクライナ東部への侵攻は、ある面では、機を見るに敏な動きだった。 プーチン氏は「マイダン(キエフの独立広場)抗議活動」を読み誤り、ビクトル・ヤヌコビッチ前大統領の失脚を予期できなかった。だから、つかみ取れるものをつかみ取った。 ウクライナでの戦闘は場当たり的な行動だったかもしれないが、旧ソ連帝国の多くの地域に対する宗主権を取り戻そうとする戦略に合っていた。 元ロシア軍参謀総長のユーリー・バルエフスキー大将は、西側との対立は冷戦の続きだと言う。ただ、今では手法がより洗練されている。バルエフスキー氏いわく、軍事力は「プロセスの最終段階」だ。ロシア政府は、「情報と心理的圧力」を含め、ハイブリッド戦争の技を習得した。 同氏の言葉を言い換えれば、プーチン氏は軍事力を行使する前に敵対勢力を分裂させ、弱体化させるということだ。 プーチン大統領が描く大きな絵 最も穏和な形であれば、これは、政府系のニュース専門テレビ局ロシア・トゥデーを急拡大させ、1日24時間のニュース報道として絶えずプロパガンダを流すことを意味する。 仏大統領選第1回投票、オランド氏勝利 サルコジ氏と決選投票へ マリーヌ・ルペン氏が率いるフランスの極右政党「国民戦線(FN)」は、ロシアの銀行から900万ユーロの融資を受けた〔AFPBB News〕 そして、西欧諸国の左派、右派双方のポピュリスト政党への資金援助がある。マリーヌ・ルペン氏が率いるフランスの国民戦線(FN)は、ロシアから融資を受けた。 反移民政党の英国独立党(UKIP)党首のナイジェル・ファラージュ氏は自身を、プーチン氏の崇拝者の1人に数えている。 さらに遠くへ目を向ければ、欧州南東部やバルカン諸国で政治家や実業家に払われる賄賂があり、脆弱な金融機関に対する出資がある。ロシアのエネルギーへの依存につけ込んで旧ソ連圏の親欧米政権を不安定化させようとする、あまり密かとは言えない作戦――ブルガリアが最近の犠牲者――も展開されている。 ここに、ロシアの戦闘機でNATOの防衛を試す動きや、サイバー攻撃、バルト諸国での誘拐、それに核武装爆撃機の導入を加えたら、バルエフスキー大将が何を語っていたのかが分かるだろう。 メルケル氏はこの危険を認識し、モルドバでの転覆工作やセルビアをロシアの勢力圏に再び取り込もうとする試みに対して公然と警告を発した。米国は欧州委員会と協力し、欧州南東部でエネルギーに依存する各国政府の脆弱性を和らげようとしている。 だが、欧州の西部では、大きな絵を認めること――つまり、ウクライナ危機をプーチン氏のより大きな狙いという文脈の中でとらえること――をいまだに嫌がる向きが多い。 「クレムリンは私のもの」、イワン雷帝の末裔名乗る男性が敗訴 ロシア モスクワの赤の広場から見たクレムリン(大統領府)とワシリー聖堂〔AFPBB News〕 プーチン氏は西側の裏切りの産物ではない。 同氏はサンクトペテルブルク市長のオフィスからクレムリンのトップに至るまでのキャリアを通して、自分の野望と、それを達成するために発揮する無慈悲さにおいて驚くほど一貫してきた。 原油価格の急落と制裁の影響は、プーチン氏をいっそう危険な存在にした。石油とガスの収入がなければ、プーチン氏に対する国内の支持は、「母なるロシア」を従属させようとするNATOと欧州連合(EU)の試みとされるものに対して国家主義者の怒りを煽る力にかかってくるからだ。 西側諸国の選択肢は限られているが、賢明な判断の始まりは、これが単にウクライナだけの問題ではないことを理解することだ。 By Philip Stephens
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