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「最低生活保障」欧州で導入機運
重なる社会保障、一本化
【ロンドン=小滝麻理子】欧州の一部ですべての国民に毎月一定額を支給する「最低生活保障」(ベーシック・インカム)制度の導入議論が盛んになってきた。フィンランドが是非を検討する調査に着手した。オランダの地方自治体も試験的に導入する方針だ。複雑化した社会保障制度を一本化する大胆な試みで、少子高齢化に直面する世界各国の制度改革をめぐる議論に影響しそうだ。
フィンランドのシピラ首相は今年夏、各種社会政策の見直しを宣言。その一つとして、ベーシック・インカムの導入検討も盛り込まれた。
調査は今年10月に始まり、2016年後半までに実験モデルを精査する。17年から2年間、試験的に導入し、19年に結果を評価する。仮に導入が決まれば、国家レベルでは世界初となる。
支給金額や対象者に年齢や所得制限をもうけるかなど詳細は未定。調査を主導するフィンランド社会保険庁(KELA)によると、(1)既存の社会保障を全て置き換える(2)一部を置き換える(3)所得が増えると給付が減る(4)社会貢献をした場合に追加給付する――などいくつかのパターンを検討する方針だ。
議論の背景には、フィンランド経済の低迷がある。知識層が多く、サービス産業が成長をけん引してきたが、通信大手ノキアの不振などが響き、経済は3年連続でマイナス成長。失業率は10%と高く、不況から抜け出すのに四苦八苦している。
複雑化した社会保障制度の問題は、行政コストがかさむことに加え、「働く方が不利」な環境で就労意欲が下がり生産性が下がってしまうことだ。制度を思い切って単純にし、個人の自助努力を後押しするのが理想だ。
KELAディレクターのオーリー・カンガス氏は「現状では生活保護を目的とした制度がいくつも重複し、行政コストが膨らんでいる。パート労働や小規模の起業など働き方も多様化しており、それぞれの就業にインセンティブになる新しい制度を考えたい」と話す。
世論調査では国民の約7割が導入を支持する。格差拡大への不満がうずまくなか、働いても貧困から抜け出せない「ワーキングプア層」の経済的安定につながると期待する声も上がる。
オランダの第4都市であるユトレヒト市も試験的な導入を決めた。
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ベーシック・インカム 所得制限せず全員に一定額
政府がすべての個人に、最低の生活水準を実現するために必要な一定額を支給する制度。年齢や所得に制限をもうけず、無条件で全員に支給するのが特徴だ。貧困削減のほか、複雑化した社会保障を一本化してムダを減らす効果が期待される。一方、課税最低限に満たない割合に応じて政府が給付するのが「負の所得税」の考え方だ。
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大胆な改革、ばらまき紙一重
ベーシック・インカムは最低生活保障などと訳される大胆な社会保障制度の改革案だ。だが、現実には政府による納税者へのばらまきと紙一重だ。所得制限を設けない点で究極のばらまきともいえる。5月に発足したフィンランド・シピラ連立政権による社会実験は、前途多難が予想される。
ベーシック・インカムの起源は産業革命後の欧州に遡る。富める者も貧しい者も、稼いでいる人も失業中の人も、老いも若きも、一律に現金をもらう。いわば働かざる者も食っていけるユートピアを目指す構想だ。
実は日本も一時期、変形ベーシック・インカムを取り入れようとした。民主党が2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉にした子ども手当だ。年齢制限はあったが所得制限がなく、ばらまきの典型だった。
今やみる影もないこの制度が頓挫したのは、ひとえに財源問題からである。たとえば課税最低限に満たない家計に絞って政府が税財源を給付する「負の所得税」の方が財源の壁ははるかに低い。
それでもなお、新党日本などベーシック・インカムを目指す政治勢力はある。12年の衆院選では日本維新の会が「ベーシック・インカム的な考え方の導入」を公約した。世界的にも、リベラル勢力と市場原理主義を標榜する勢力の双方に、この制度を支持する政党や学者が散見される。
フィンランドの社会実験にみるべき点があるとすれば、さまざまな制度が折り重なった社会保障給付を、ベーシック・インカムに一本化できるかどうかだ。
入り組んだ社会保障と福祉の給付制度を、受け手にわかりやすいものに改革するという点では、日本こそが真っ先に取り組むべき課題である。それは、種々の制度に付随して肥大した官僚機構のリストラにもつながる。
(編集委員 大林尚)
[日経新聞12月30日朝刊P.5]
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