http://www.asyura2.com/15/senkyo198/msg/815.html
Tweet |
総務省の高市早苗大臣 〔PHOTO〕gettyimages
「権力vsマスコミ」という対立構図を描きたがる朝日新聞の悪癖〜2015年、テレビの大問題は「それ」じゃない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47127
2015年12月30日(水) 高堀 冬彦 現代ビジネス
■政治の介入を招いたのは自業自得
朝日新聞の12月19日付夕刊に「(回顧2015)放送 政治の圧力にさらされて」という特集記事が掲載された。
2015年の放送界を振り返ると、政治からの圧力を受けたことが最大のニュースだったというわけだ。本当だろうか?
筆者はそうは思わない。ピント外れの記事だと考えている。長らく娯楽の王様であったテレビの視聴率下落に歯止めが掛からないことのほうが、より大きな問題ではないのか。市民の暮らしが様変わりしようとしているのだから。
80年代前半からテレビ界のリーディングカンパニーであり続けたフジテレビの凋落も特筆すべき事柄だろう。テレビ界という一大産業に地殻変動が起きているのだから。言ってみれば、トヨタの販売シェアが日産やホンダに負けてしまったようなものなのである。
第一、テレビ界が政治の介入を招いてしまったのは、自分たちのエラーによるものだ。けして一方的に政治からの圧力を受けたわけではない。
なにかと「権力vsマスコミ」という対立構図を描きたがるのは、終戦直後から続く朝日新聞の悪癖だと思っている。正直なところ、「権力vsマスコミ」という図式の記事は書くのは簡単なのだ。その上、権力嫌いの読者にも受ける。
なぜ、朝日新聞が「政治から圧力を受けた」と指摘したのかというと、不正な演出があった『クローズアップ現代』を放送したNHKと、コメンテーターで元経産官僚の古賀茂明氏(60)が『報道ステーション』内で番組の趣旨に沿わない発言をしたテレビ朝日の幹部を、自民党が事情聴取したからである。
加えて、朝日新聞は、監督官庁である総務省の高市早苗大臣(54)がNHKに対して厳重注意の行政指導を行ったことも憂慮している。
■政府・与党に擦り寄るテレビ界
問題が多岐にわたっているので、整理してみたい。
まず、自民党にテレビ局を事情聴取する権限など存在しないのだから、これは言語道断である。二度と繰り返されてはならない。
半面、自民党から事情聴取を受けた側のテレ朝の早河洋会長(71)や朝日新聞出身の吉田慎一社長(65)、番組審議会委員長の見城徹・幻冬舎社長(64)は、古賀氏問題の前から官邸詣を行っている。他局の首脳陣や要職者も安倍晋三首相(62)らとゴルフに興じたり、会食を行ったりしている。
政治がテレビ界に圧力を加える前に、近年、テレビ界側が政府・与党に擦り寄っているほうが問題なのではないか?
本来なら、朝日新聞は、「政治からの圧力」を指摘する前に、政治とテレビ界の水面下の関係を読者に伝えるべきだろう。テレビ界は権力の監視役でもあるのだから。
朝日新聞の論調では、テレビ界側が政府・与党と距離を置き、権力の監視に務めているのに受け取れる。にもかかわらず、政府・与党側が不当な介入をしたように伝わってくる。だが、現状は違う。普段は親しい政府・与党とテレビ界が、小競り合いをしたようなものなのだ。
また、不正演出のあった『クロ現』のNHKに対し、総務省側が行政指導を行ったのは、職務に忠実だっただけと捉えるべきだろう。市民に代わってテレビ界の不正を指導するのは総務省の役割だ。そもそも、問題の『クロ現』のテーマは詐欺事件。政治色は一切なかった。
放送界が出資して設立した番組の検証機関「BPO(放送倫理・番組向上機構 )」も総務省の行政指導に異議を唱えた。確かに、テレビ界の問題はテレビ界内で自主的に解決するのが理想である。
だが、いくらBPOが頑張ろうが、やらせなどの不正は一向になくならないのだから、監督官庁である総務省が動くのはやむを得ないだろう。アメリカのFCCやイギリスのOfcomなど諸外国にもテレビ界を監督する行政機関はある。日本だけが特殊なわけではない。
産業界にデータ偽装問題があれば、経産省や国交省が指導する。教育現場に問題があれば、文科省が指導する。国民共有の財産である電波を使って事業を行っているテレビに不正があれば、総務省が指導するのは当たり前の話である。そこで「表現の自由」を持ち出すのは問題のすり替えに過ぎない。
■行政指導すら効果がない
総務省(郵政省)による過去のテレビ局への行政指導を俯瞰すると、やらせと不正がテレビ界内では解決できないことがよく分かる。2003年にBPOが誕生する以前も以後も、問題は絶え間なく起きている。
さらに、行政指導が不当と思えるような事例も見当たらない。信号を無視した運転者が、反則切符を切られたようなものである。それどころか、立て続けに厳重注意を受けている局もあるので、行政指導すら効果がないように思えてくる。
【総務省(郵政省)の主な行政指導】
85年 テレビ朝日『アフタヌーンショー』やらせリンチ事件:厳重注意
92年 朝日放送『素適にドキュメント』登場者の仕込み:厳重注意
93年 読売テレビ『どーなるスコープ』出演した看護婦が偽物:厳重注意
同 NHK『NHKスペシャル 禁断の王国・ムスタン』高山病の演技等虚偽報道:厳重注意
94年 テレビ朝日 報道局長による世論誘導疑惑:厳重注意
95年 読売テレビ アニメ内のサブリミナル的表現:注意
同 TBS『報道特集』サブリミナル的表現:厳重注意
96年 TBS オウム真理教ビデオ問題:厳重注意
99年 テレビ朝日『ニュースステーション』所沢ダイオキシン報道:厳重注意
04年 日本テレビ バラエティーでサブリミナル的表現等:厳重注意
同 テレビ朝日『ニュースステーション』選挙期間中、特定政党が与党になった際の想定閣僚などを特集:厳重注意
05年 テレビ東京『ウルトラ実験体』出演者を花粉症治療患者と偽装:厳重注意
同 日本テレビ『カミングアウト!』未成年タレントの窃盗行為を取り上げる:厳重注意
同 フジテレビ『めざましテレビ』事実でない内容を放送:厳重注意
06年 日本テレビ ニュースで、個人情報の取り引きの場面に、架空の顧客が登場:厳重注意
同 TBS『ぴーかんバディ!』紹介したダイエット法で健康被害が発生。入院した人も:厳重注意
同 TBS『イブニング・ファイブ』報道内容とは無関係の政治家の写真を使用:厳重注意
同 MBS ゴルフ中継で、実際にはなかった途中経過を放送:厳重注意
07年 関西テレビ『発掘!あるある大辞典U』複数の事実の捏造:警告
同 TBS 複数の情報番組で過剰な演出や事実に基づかない報道:厳重注意
同 テレビ東京『今年こそきれいになってやる!』不適切演出:口頭注意
同 MBS『たかじん ONE MAN』事実に基づかない名誉毀損発言:厳重注意
09年 TBS『ニュースキャスター』地方自治特集で演出を施し事実とは違う内容を報道:厳重注意
(※総務省資料等より)
こうも続いては、自主的に問題が解決できるとは、とても思えない。むしろ、総務省の行政指導がなかったら、やらせなどの不正は野放し状態になる気さえする。
「政治の圧力」より気になるのは、朝日新聞をはじめ新聞界が近年、テレビ界の不正追及に及び腰になっているように見えるところである。
93年、『NHKスペシャル 禁断の王国・ムスタン』のやらせを1面で暴いたのは朝日新聞だったが、近年の朝日新聞がテレビ界の大きな不正を暴いたことはない。
『クロ現』の不正演出を2015年3月に告発したのも「週刊文春」だった。当初、朝日新聞は無反応に近かった。
2014年、日本テレビで起きた女子アナ内定取り消し問題(その後、入社)を世に問うたのも「週刊現代」であった。この問題の場合、内定者の銀座のクラブでのアルバイト歴が内定取り消しの理由になっていた。
労働と雇用の問題、さらに人権問題は朝日新聞の得意とするジャンルだ。ところが、この内定取り消し問題についても当初は静観していた。
90年代までのテレビは影響力が極めて大きく、「第4の権力」とすら呼ばれた。その威光が急速に衰えつつあるとはいえ、依然として強い影響力を持っていることに変わりはない。朝日新聞はテレビ界をチェックするという役割を忘れてしまったのだろうか?
■「取材の自由」はどう考えるのか
朝日新聞が「報道の自由」を訴えるのなら、自分たちも所属する放送記者クラブの在り方も再考するべきだろう。
現状では、NHKを含めたトップの定例会見や主な記者会見に出席できるのは放送記者クラブに加盟する新聞社・通信社だけだ。テレビ誌やネット媒体からテレビの情報を得ている視聴者は多いが、テレビ誌とネット媒体は記者会見への参加が許されていない。それを阻んでいるのは記者クラブだ。
朝日新聞は海外諸国と日本の比較が好きだが、記者クラブが独占してテレビ界を取材しているのは日本だけである。「報道の自由」を訴えるのなら、まずは取材の自由化に向けて自分たちが変わるべきではないのか?
ある酒席で民放の元広報マンが、こんなことを豪語したことがある。
「大抵のスキャンダルなら、新聞社にストップを掛けられる。うちと新聞社の幹部同士はつながっているから」
むろん周囲は冷笑した。そんなことが本当にあるのなら、視聴者と読者に対する背信だ。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK198掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。