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「首相官邸HP」より
消費増税の負担強いる一方、「アベノミクスの成功」演出のためバラマキ予算
http://biz-journal.jp/2015/12/post_13112.html
2015.12.30 文=町田徹/経済ジャーナリスト Business Journal
クリスマス・イブの12月24日、安倍政権は閣議決定により、またまたツケを先送りする2016年度予算案を国民にプレゼントする方針を決めた。
この予算案の最大の特色は、社会保障費を前政権が策定した12年度当初予算(26兆3901億円)より5兆円以上多い31兆9738億円に膨らませた結果、歳出総額が過去最大の96兆7218億円に達したことである。
その一方で、国と地方を合わせた借金残高は過去最悪の1062兆円に膨らんでおり、将来世代の負担は深刻さを増している。日本の財政への国際的な信認は、相変わらず揺らいだままである。
このままでは、消費税の税率を再来年4月に10%への引き上げるだけでは足らず、遠からず20%前後への引き上げが議論される時代が到来するだろう。来夏に迫った参議院議員選挙での勝利を最優先する安倍政権の経済運営の刹那主義は危うさを増す一方だ。
バランスを欠いた経済運営が深刻な不況を長引かせる結果になった民主党政権時代の経済運営を褒めるつもりは毛頭ないが、安倍自民党が政権を奪還して以来、社会保障費の膨張はとどまるところを知らない。
16年度予算に盛り込まれた社会保障関連予算額は、株式市場のバブル相場が崩壊した直後の1990年度(11兆6148億円)との比較で2.8倍に膨らんだ。90年度の7.0兆円から2000年度の11.9兆円に膨らみ、厳しいバラマキ批判を呼んだ公共事業費と比べても、その急増ぶりは突出している。ちなみに、公共事業費は16年度予算案で6.0兆円と、90年度を下回る水準に抑え込まれている。
■リーズナブルとはいえない16年度予算案
確かに高齢化社会で年金や医療、介護の費用が膨らむのは必然であり、社会保障費を減らすのは容易なことではない。
昭和50年度以降の40年間を見ても、当初予算ベースで社会保障費を前年度より抑制できたのは、2兆3177億円を圧縮した12年度の1回だけである。この予算は、当時の野田佳彦民主党政権が「日本再生元年」と位置付けて蛮勇を振るったものだ。
とはいえ、財政破綻はもちろん、財政に対する信認が揺らぐこともあってはならない。安倍政権も、その点を完全に無視しているわけではないだろう。今年6月にまとめた「財政健全化計画」で、今後3年間の社会保障費の伸びを約1兆5000億円に抑える方針を掲げたのは、その証左といえる。
16年度の増加額は、前年度当初予算比で4441億円。単年度分としては、なんとか「財政健全化計画」で打ち出した増加の枠内(5000億円以下)に抑えている。
しかし、16年度予算案がリーズナブルとはいえない。というのは、国民に消費税率8%への増税という負担を強いておきながら、その血税を大切に使おうという姿勢が見えないからだ。
加えて、日本銀行の異次元緩和や15年度までの財政出動の結果、16年度の税収は57.6兆円と25年ぶりの高水準を見込んでいるにもかかわらず、財政健全化の取り組みが十分でないことも見逃せない。
金融・財政政策の経済への効果は一時的なものにすぎないという問題を横に置くとしても、12年度に比べて15兆2580億円も税収が増えるというのである。相応の予算を財政再建に割くべきだろう。ところが、政府予算案が国債新発額を9兆8120億円しか減らしてないのは、明らかに不十分だ。
■バラマキに腐心
そこでクローズアップせざるを得ないのが、16年度政府予算案が財政再建を先送りする一方で、来夏に迫った参議院選挙をにらんで、かつての公共事業とは違うバラマキに腐心する内容になっている点である。
第1が、診療報酬の改定だ。薬価部分をある程度引き下げたものの、医師の技術料など本体部分は0.49%引き上げた。日本医師会という強い政治圧力団体に配慮する首相官邸の意向で押し切られたと、国庫の金庫番の財務官僚たちはほぞをかんでいるという。薬価引き下げの原動力になったジェネリック医薬品の薬価が、まだ米国などと比べて1桁高いという問題もある。
第2に、政府が16年度予算案に先駆けて12月18日に閣議決定した、15年度補正予算案とのリンクである。安倍政権は、子ども1人あたり3000円を支給する子育て給付金の16年度からの廃止を決めていたが、この補正予算で「一億総活躍社会」の実現に向けた政策と称して、低所得高齢者(約1100万人)への現金給付(1人当たり3万円、総事業費3624億円)を打ち出し、参院選向けの「高齢者優遇」との批判を浴びた。高齢者への現金給付がどう「1億総活躍社会」につながるのか不明なうえ、支給を始める時期のめどが来年6月と、参院選を意識していることが露骨に伺えたからだ。
そこで、16年度予算は、「一億総活躍社会」で掲げた「出生率1.8」実現のために、1.5兆円を配分した。2人以上の子どもがいる低所得者世帯への支援として、第1子の年齢にかかわらず第2子は保育料を半額に、第3子以降は無料にする。この措置で、29万人の負担が軽減されるという。また、第2子に対する児童扶養手当の加算額を最大1万円とする施策も盛り込んだ。第2子への手当ての増額は約35年ぶりという。
TPP(環太平洋経済連携協定)関連の国内農業対策などでも、補正予算で打ち出した施策を補完する政策が多く盛り込まれている。
■防衛予算が「聖域化」
さらに、首相のこだわりから防衛予算が「聖域化」し、突出したことは特筆すべきだろう。前年度比で1.5%増と社会保障費を凌ぐ伸び率を記録、初めて5兆円の大台を突破した。防衛費の4年連続の増額も異例である。使途には、最新鋭のステルス戦闘機、新型の空中給油機を購入して中国の海洋進出が目立つ南西諸島に配備する費用などが計上されている。
少子高齢化が進む中で、社会保障関連費を大幅に刈り込むことは不可能に近い。一方で近年、勢いのない経済を刺激したり、バラマキ予算の帳尻を合わせたりするために、補正予算を組むことが常態化している。アベノミクスの成功を演出するためか、16年度の予算は、GDPの名目成長率を年率3.1%と見積もって編成された。
この高い前提をクリアできなければ、補正予算を組んで国債を増発せざるを得ないだろう。そうなれば、財政再建が一段と遠のく。こんなことが続けば、早晩欧州諸国並みに消費税の基準税率を20%前後まで引き上げることも想定せざるを得ない。
そのなかで、政府・与党が目論みどおり参議院議員選挙で大勝すれば、憲法改正が現実の問題になるだろう。
来年は、予算の問題が予算にとどまらない可能性を念頭に置いて、安倍政権の一挙手一投足を注意深く見守る必要がある。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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