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映画「ふたりの死刑囚」で描かれた検察の“不都合な真実”
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/172382
2015年12月26日 日刊ゲンダイ
釈放された袴田巌死刑囚(C)東海テレビ放送
第2次安倍政権以降、裁判員裁判対象の事件としては初となる津田寿美年死刑囚(当時63)を含む14人の刑が執行された。
一方で、確定判決から半世紀もの間、再審の扉が開くのを待ち続けている死刑囚もいる。映画「ふたりの死刑囚」(東海テレビ放送製作、ポレポレ東中野など1月16日公開)は、冤罪を訴える2人の死刑囚と家族の半生を追ったドキュメンタリーだ。
登場するのは、1966年に静岡・清水で4人が強殺された「袴田事件」の袴田巌死刑囚(79)、61年に三重で6人が中毒死した「名張毒ぶどう酒事件」の犯人とされ、10月に獄中死した奥西勝死刑囚(享年89)とその家族だ。
仲代達矢(83)主演で奥西死刑囚の生涯を描いた映画「約束」を手掛けた東海テレビの齊藤潤一報道部長(48)がプロデュースし、後輩で警察や司法を担当した鎌田麗香記者(30)が監督を務めた。
奥西死刑囚との接触はかなわなかったが、昨年3月に釈放された袴田死刑囚に昨年7月から密着。およそ90時間分の取材テープを回したという。映し出される袴田死刑囚の姿は、正直言って不気味だ。自宅をただただ歩き回り、会話もままならず、“宇宙との交信”を繰り返す。47年7カ月に及んだ刑務所生活による拘禁反応だ。
「怖いという感情よりも、驚きの方が強かった。袴田さんは死刑確定を境に精神を病んでしまい、自分が何者かも分からない状態。ショックに対する一種の防衛反応なんです」(鎌田麗香氏)
刑事裁判の有罪率は99・9%とされ、再審はほぼ認められないと言っていい。請求権は本人あるいは法定代理人、直系親族、兄弟姉妹などにしかない。袴田事件では33年間、奥西死刑囚が死亡した名張事件では妹(86)が後を継ぎ、39年間も請求を続けている。
「袴田さんの3歳年上のお姉さんも、奥西さんの妹さんも高齢。時間は少ない」(齊藤潤一氏)
袴田事件では12年に弁護側が犯行着衣のDNA鑑定に踏み切ったことで流れが変わった。検察がひた隠しにしてきた証拠600点を開示したのだ。劇中で検察出身の市川寛弁護士は、はびこる「最良証拠主義」についてこう言っていた。
「有罪と信じて起訴した以上、有罪を立証するに足りる必要かつ十分な証拠があれば、それ以外のものは一切出す必要はないという考え方」
袴田事件は検察の即時抗告で再審開始をめぐる審理がいまも続いている。
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