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財務省完敗で消費再増税に暗雲、国債暴落危機が始まる
http://diamond.jp/articles/-/83745
2015年12月24日 山田厚史の「世界かわら版」 ダイヤモンド・オンライン
軽減税率をめぐる首相官邸・自民党・公明党の三角攻防は、財務省の完敗で終わった。
「消費税8%据え置き」の対象は加工食品にまで広がり、歳入に1兆円の穴が開く。財務省が考えた低所得者向けの還付案は、創価学会の横ヤリで潰れたという。だが創価学会に同調し、流れを変えたのは官邸だった。
表向きは自民税調vs公明党・創価学会に見える攻防は、一皮むけば官邸vs財務省という権力中枢のひび割れに根源がある。首相は自民党税調を仕切る財務省OBの野田毅会長を外し、財務省がすがる谷垣禎一幹事長を降伏させることに成功した。「安倍一強体制」は一段と強化されたが、その陰で政権基盤である財政の再建シナリオが怪しくなっている。
■選挙を視野に軽減税率の次は消費増税先送りか
「税は国家なり」といわれるように、税制は政治の塊。首相は来年夏の参議院選挙に公明党・創価学会の応援が必要と考え「軽減税率」を受け入れた。というのが一般の解説だが、筆者はそれだけではない、と思っている。安倍政権は消費税10%増税を2017年4月から実施することを避けたいと思っているのではないか。
永田町で自民党政治家の話を聞くと「選挙やるなら消費税は延期でしょう」とか「まず景気回復。アベノミクスがうまくいっていないのに消費税増税などできませんよ」という声を聞く。選挙モードに入った政界で、「消費増税先送り」への画策が与党陣営に始まっているのが現状だ。その文脈で考えると、「軽減税率が及ぼす効果」は全く違ったものに見える。
それはさておき、なぜ軽減税率がこんなに沸騰したのか。
淵源をたどれば、民主党政権時代の「3党合意」に行き着く。2012年6月15日、民主・自民・公明の3党は消費増税関連法案について合意、導入に当たっては低所得者向けの軽減税率を検討することが盛られた。公明党が強く求めたからだ。
だが「低所得者対策なら軽減税率は効果的ではない」という指摘は学者から上がっていた。生活必需品の税率を安くすれば、消費税への「痛税感」を和らげることはできる。それは「低所得者」だけではない。買い物をたくさんするのは金持ちだ。消費税を安くして取りはぐれる税金のうち、低所得者が受ける恩恵は微々たるものでしかない。軽減税率は金持ちほど恩恵を受ける。
公明党が「軽減税率」にこだわったのは、政策として分かりやすいからだろう。「この商品の税率が低いのは公明党が頑張ったから」。そう宣伝すれば確かに分かりやすい。
それでは財政当局は飲みがたい。消費税は低所得者に負担の重い「逆進性」が問題とされる税制。税率10%になれば低所得者向けの対策は必要になる。なけなしの財源が確実に貧しい人に届く効果的な策が望まれる。
軽減税率はカネ持ちが恩恵を受けるだけではない。税を安く据え置いてもらおうと業界が与党に画策し、制度自体が歪んでしまう。典型が「新聞」だ。自らの業界を軽減税率の対象にしてもらおうと新聞業界は与党に工作し、言論機関なのか営利企業なのか、迷走どころか政治介入までしている。それぞれの業界がそんなことを始めたら面倒、と財務省は警戒した。
■還付方式はなぜ白紙に?経産省政権vs財務省の暗闘
財政の側に立ったのは自民党税調だった。野田会長は「消費税が日本を救う」という著作もある健全財政論者。財務省の佐藤慎一主税局長と組んで、マイナンバーカードを応用して軽減分を還付する低所得者向け対策を9月10日、与党に示した。関係者によると「公明党の斉藤鉄男税調会長は了解し、安倍首相にも案は上がっていた」という。ところが半月後の25日、公明党が「還付案反対」を表明。創価学会は「軽減税率抜きでは選挙に協力できない」と官邸に伝えた、という。
首相が動いた。10月9日に野田会長に電話をして「名誉会長に退いていただきたい」。後任に宮沢洋一氏を据え「公明党とうまくやってほしい」と指示した。
根回しできたはずの還付方式が白紙にされ財務省にショックが走る。
安保法案で公明党が自民党に付き従ったことへの反発が創価学会にある。消費増税でまた「もの分かりの良さ」を示したら、組織に動揺が走る。そんな事情を創価学会は抱えていた。官邸がすんなり受け入れたのは「選挙対策」があったのは間違いないが、「官邸も財務省ペースを嫌った」と関係者はいう。
官邸は財務省の財政再建を疎ましく感じている。摩擦は、今に始まったことではない。第二次安倍内閣がスタートしたころから不穏な空気が流れていた。発端は、経済財政諮問会議の再開。安倍首相は民間議員に竹中平蔵氏を指名しようとした。反対したのが麻生財務相だった。首相に電話して「竹中は外してくれ」と頼んだという。
財務省が竹中を警戒した。小泉首相のころ竹中は経済財政諮問会議を舞台に経済政策を政治主導に切り替え、財務省を封じた。政権に復帰した自民党が諮問会議を復活させマクロ政策の主導権を奪うことを恐れたのである。この一件で竹中は産業競争力会議に回ったが、安倍首相は警戒し、財務省に批判的な側近が重用されるようになる。財務省で冷遇された元官僚などがブレーンになり、一方で官邸の主要ポストに経産官僚を付けた。中心が政務秘書官の今井尚哉。前職は資源エネルギー庁次長、原発政策に深く関わっていた。新日鉄で社長・会長を務め経団連会長になり、原子力産業協会会長を務める今井敬の甥である。
安倍首相は閣僚経験が乏しく、政策に疎いばかりか官僚との交わりも少ない。欠落を補ったのが実父・安倍晋太郎の人脈だった。通産相、外務相をこなした晋太郎に秘書として仕えた晋三にも人脈はつながっていた。
霞が関で安倍内閣は「経産省政権」と呼ばれ、財務省は冷遇されている。もとより「景気回復」を最優先に据える安倍政権にとって「財政健全化」のお題目を唱える財務省は目の上のタンコブ。アベノミクスの成果が上がらないのも、財務省の言うとおりに消費税増税を実施したからだと、安倍首相は考えている、といわれる。
■橋下徹も驚愕!軽減税率は憲法改正のテコ
安倍にとってもっと大事なのが「憲法改正」だろう。昨年末の総選挙で公明を合わせ3分の2の議席を確保し、来年の参議院選で3分の2を確保すれば、憲法改正の発議ができる。改憲は手の届くところまで来た。
軽減税率はこうした動きと無関係ではない。12月9日、安倍が野田を税調会長から外した日、おおさか維新の会を率いる橋下徹はツイッターで次のように発信した。
「安倍政権・官邸、恐るべしの政治。これが政治か。軽減税率でここまで妥協するとは。これで完全に憲法改正のプロセスは詰んだ。来夏の参議院選挙で参院3分の2を達成すればいよいよ憲法改正。目標達成のための妥協。凄すぎる」
橋下の視野には、軽減税率を憲法改正のテコにする安倍の姿が映っている。更に橋下は「参議院選は消費増税延期を掲げて戦え」と主張する。大阪市長を卒業した橋下は東京で安倍首相、菅官房長官と会い3時間近く話し込んだ。参議院選挙での協力などが語られ、消費増税延期も話題になっただろう。
安倍は首相として「再び延期することはない」と国会で断言しているが、真に受ける政治家はいない。「官邸が探しているのは、また増税を延期する口実です」と関係者は言う。財務官僚は気が気でない。
「軽減税率が口実にされる。準備が間に合わない、このままでは混乱が起こる、早急な導入は困る、という民意に耳を傾けたい。そんな理屈をつけて再延期を言いだすのでは」
という見方もある。軽減税率は対象品目の仕分けが厄介だ。店で食べるのとテイクアウトで税率を分けたり、仕入れの食材と店で出す料理で税率が違ったり、線引きやシステム処理に膨大な手間と時間がかかる。2017年4月までに無事完了するのは不可能に近い。準備が整わない業者から不満が噴き出すのを見て、「民意尊重」という口実が使われる、という筋書きが描かれている。
■消費増税再延期なら何が起こるか 市場の暴力を見くびるな
「税と社会保障の一体改革」という掛け声はいつのまにか「改憲の道具としての税制」へとねじ曲がった。
政治の世界は「それもあり」かもしれない。民意は「消費増税反対」である。だが、政治家が「次はやります」「再延期はしません」と繰り返した約束が、あっさりナシとなり、またも選挙目当てに延期が決まった時、政治の信認はどうなるだろうか。政治家なんてどうせこんなもの、と人々は思うかもしれないが、「こんな政治で財政は大丈夫か」という当然の疑問がわき起こるのではないか。
黒田日銀総裁が、異次元の金融緩和に踏み切った時、「財政健全化」を求め、政府は約束した。黒田総裁が恐れたことは、日銀がお札を刷って政府の放漫財政を支える事態だ。年間80兆円の日銀マネーを発行し、国債を買い支えている。それに胡坐をかいて政府が財政赤字の縮小に取り組まなかったら、政府は借金返済を諦めたと市場に見なされるだろう。何が起こるか。国債の暴落と円の信認崩壊である。急激なインフレで、国債は紙屑のように舞う。政府の借金は軽くなるが、債権者である国民の資産は目減りする。形を変えた大増税である。
第一次大戦後のドイツで起きた大インフレは、少額の貯蓄に暮らしの安心を託していた中間層を崩壊させた。ナチスを生み出す土壌が形成されたのである。
政治家が無策なら、市場の暴力によって経済矛盾は決済される。安倍一強体制のおごりが、大局を見る目を曇らせ、事態を見くびっていると、つけは思わぬところから火を噴くかもしれない。
昨年末の総選挙で安倍政権は、公約した増税を延期した。その直後、米国の格付け機関ムーディースは日本国債を「格下げ」した。再延期となれば、国債信用は更に低下するだろう。その時、市場で何が起こるのか。
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