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主権者に夢と希望を与える経済政策明示不可欠−(植草一秀氏)
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22nd Dec 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
今年も残すところあと10日になった。
「光陰矢の如し」と言うが、本当に時間が過ぎ去る速さに驚かされる。
今年は、日本の未来を左右する重大な出来事が多かった。
8月に原発が鹿児島県の川内原発で再稼働された。
9月には集団的自衛権行使容認の安保法制=戦争法制が強行制定された。
10月にはTPP大筋合意のニュースが報じられた。
また、沖縄県名護市辺野古では、米軍基地建設の本体工事が10月末に着手された。
そして、派遣労働法が改定され、9月30日に施行された。
原発、憲法、TPP、基地、格差
の5大問題について、重大な決定や変化が生じた年。
それが2015年だった。
多くの主権者は、
原発稼働、戦争法制定、TPP参加、辺野古米軍基地建設、格差拡大
に反対している。
この主権者にとっては、2015年は悪夢の1年であったと言える。
しかし、現時点では、2016年が一転して夢の一年になるとの見通しが広がらない。
悪夢が続いてしまう懸念を否定できない。
こうした「悪夢」の原因は、現在の国会議員構成にある。
5大問題について、安倍政権の基本政策方針に反対する議員勢力が極端に少なくなってしまっているのだ。
しかしながら、主権者のなかで、
5大問題について5大問題について安倍政権の基本政策方針に反対する勢力は、決して小さなものではない。
2014年12月の総選挙の比例代表選で、
安倍政権与党の自公に投票した主権者は、全体の24.7%にしか過ぎなかった。
主権者全体の4分の1だ。
安倍政権の基本政策方針に反対する主権者の比率は、恐らくこれを上回っているだろう。
この人々が選挙に参加して、統一候補に投票をするなら、国会の勢力分布は一変する。
2016年は、その実現に向けて、確実な第一歩を印す年にしなけらばならない。
そうすれば、悪夢から解放されて、人びとは夢を描くことができるようになる。
その実現には、主権者が積極的に行動することが必要不可欠であると思う。
しかしながら、主権者が直ちに主権者党を作り、
ここに候補者を一本化することは不可能だから、
現実には、既存政党の活動を軸に戦術を構築しなければならない。
そこが難しいのだが、既存の政党にだけ委ねれば、恐らく、現状を大きく変えるのは難しいと思われる。
その最大の理由は、既存の野党勢力の多くが掲げる政策方針が、
現在の自公勢力と重なる部分が多いからだ。
この現状を放置したままであると、仮に将来、政権交代が生じても、
政策路線が根本から変わることを期待できなくなってしまう。
したがって、主権者の運動としては、常に、
政策を基軸に据える
ことを忘れてはならないと考える。
したがって、主権者が主導して、各選挙区の支援候補者をノミネートし、
その上で、各野党陣営に、候補者の一本化を迫るというプロセスが重要になると思われる。
基準になるのは、もちろん、原発、憲法、TPP、基地、格差の5大問題だ。
野党の統一候補は大事だが、大前提に、政策の明確化が置かれなければならない。
戦争法、憲法は重要だが、重大問題はこれだけではないからだ。
とくに、2016年の場合、7月10日に衆参ダブル選が実施される可能性が十分にある。
政策を基軸に、選挙区での候補者を一本化しなければならない、という要請が
何よりも必要なのは、衆議院選挙の小選挙区なのである。
オールジャパン平和と共生
においては、愚直にこの部分を追求してゆきたいと思う。
前回の2014年12月総選挙では、主権者の半分が選挙に行かなかった。
選挙に行った主権者のうち、半分が自公に投票した。
選挙に行った人の3人に1人が自民党に入れ、7人に1人が公明党に入れた。
自公に入れたのは、全有権者の4人に1人だったが、
この投票で、自公は国会議席の7割を占拠することになった。
全主権者の4人に1人が自公に対峙する統一勢力に投票すれば、政治状況は一変する。
容易なことではないが、実現不可能なことでもない。
だから、希望を捨てずに、前を向いて行動しなければならない。
そのとき、大事なことは、
安倍政権を否定すること
だけでなく、
もっと前向きな、もっと明るいビジョンを提示すること
である。
原発、憲法、TPP、基地、格差
の5大問題は、やはり否定しなければならない。
それ自体は非常に大事なことだ。
しかし、それだけで、主権者の多数を引きつけて、統一的な選挙行動を実現することは難しいだろう。
多くの主権者が、
これだ!
とひざを叩き、思わず選挙に行ってしまうような、
明るい未来を切り拓く
夢のある政策を提示することが大事なのだ。
かつて美濃部亮吉知事が誕生して、福祉政策を拡充した。
その政策は、のちに財政赤字拡大の原因の一つを生み出したとして批判されたが、
人びとに大いなる夢を与え、また、人びとの生活をしっかり支えたこともまた事実である。
財政における最大の問題は、支出の中身を、
社会保障支出だけを最優先するか、
それとも、
巨大な裁量支出を維持するか
という点にある。
現在の財政は、社会保障を徹底して切り込み、他方で、巨大な裁量支出を維持拡大する方向にある。
この財政政策運営の基本を根本から刷新することが重要なのだと思う。
安倍政権の政策方針は非常にはっきりしている。
それが「成長戦略」である。
「成長戦略」と言うと、聞こえはいいが、本質は、
「グローバル大資本の利益極大化」
なのだ。
このことは、裏を返すと、一般労働者、一般庶民には、
グローバル巨大資本の利益のためには、我慢してもらう、あるいは、犠牲になってもらう、ということなのだ。
その本質をよく理解して、安倍政権に対するスタンスを決めるべきだ。
財政政策において、安倍政権は、社会保障を切り、裁量支出を維持拡大するスタンスを取る。
この裁量支出が、日本の津々浦々においても、末端の事業者の懐に影響を与える。
この財政利権が、地方において、集票マシーンとして機能している。
つまり、一般労働者としては安倍政権に賛同できないが、
財政利権の末端での、小さな利権に関与してしまうと、
自民党に反対できない環境が生みだされてしまっているのである。
「ふるさと創生」などの施策がまさにこれにあたる。
「ふるさと創生」利権に関わる人々は、自公政権に反対しにくくなり、
選挙の際には、必ず投票所に足を運んで自公に投票するコアになってしまうのだ。
しかし、経済政策全体においては、安倍政権は1%のための政策を推進する。
広く見ても、10%のための政策を推進しているのだ。
だから、これに対して、広く、90%の人々のための経済政策を明示することが重要である。
1.労働者全員の正規化を図る。
2.最低賃金を大幅に引き上げる。
3.すべての国民に一定の所得を保証するベーシック・インカム制度を導入する。
当然のことながら、財源をどうするのかという話が出る。
その場合は、裁量支出を全面的に切るのだ。
政府がやらなくてもよいようなことを、日本全国で政府が行っている。
本当に必要不可欠なこと以外の政府の裁量支出を基本的に全廃するのだ。
その一方で、社会保障支出については、必要十分な支出を確保する。
日本が世界第2位の経済大国になった言われても、
社会保障水準は、欧州の福祉国家に比べればはるかに見劣りする。
欧州では、社会保障の水準が高いが、その背景のひとつに、企業が負わされる負担が大きい。
米国は企業負担が大きくはなく、大きな格差を容認する社会体制だが、
欧州の多くの国は、企業負担を大きくして、国民に対する最低保障ラインを大きく引き上げている。
最終的な選択は主権者に委ねられる。
これだけ格差が拡大した日本で、主権者にこの点を丁寧に説明するなら、多くの人々が、
「弱肉強食」
ではなく
「共生」
を選択するのではないか。
すべての人の豊かな暮らしを実現する、
新しい経済政策の全体構想を明示することがいま求められている。
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