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特集ワイド:これって見返り? 自民党と大企業 法人税減税/政治献金再開 - 毎日新聞 https://t.co/shpkvDlekg
— 上脇博之 (@kamiwaki) 2015, 12月 22
http://mainichi.jp/articles/20151221/dde/012/010/002000c
「社会貢献」を強調するが……経団連の榊原定征会長(左)と全国銀行協会の佐藤康博会長 コラージュ・松本隆之
あまりにも露骨すぎないか。大企業が自民党への政治献金を増やした見返りのように、2016年度税制改正大綱で法人税減税が盛り込まれたことだ。3メガバンクも18年ぶりに政治献金を再開する。経済界は政治献金を「社会貢献の一環として重要性がある」というのだが……。【葛西大博】
「法人実効税率が従来の計画より1年前倒しで16年度より20%台に引き下げられることになったことを歓迎する」。経団連の榊原定征会長は16日、税制改正大綱の決定を受けてコメントを発表した。法人実効税率とは企業の所得に対する税負担の割合を示すもので、現行の32・11%から29・97%に引き下げる。黒字の大企業にとって有利な政策だ。
アベノミクスに批判的とされた前会長の米倉弘昌氏の後を継いだ榊原氏は政府・与党にすり寄る姿勢が目立つ。経団連は09年10月以降、政治献金への関与をやめていたが、昨年9月に政治献金を呼び掛けることを再開したからだ。
政治資金収支報告書をめくると、14年の自民党の政治資金団体「国民政治協会」への企業・団体献金の総額は前年比13・3%増の22億1312万円で、5年ぶりに20億円を超えた。
表を見てほしい。献金額の上位にはトヨタ自動車、榊原氏が社長を務めた東レ、キヤノン−−と、歴代経団連会長を出した企業が並ぶ。
自民党への献金が増えたことについて榊原氏は7日の記者会見でこう述べている。「14年の自民党への企業・団体寄付は13年から約1割増加した。経団連としては、社会貢献活動の一環として政治寄付の実施を呼び掛けた。(増額は)呼び掛けに応じて、各社が自主的な判断で政治寄付を実施した結果だ」
経済界は政治献金は社会貢献だと説明するが、「政治資金オンブズマン」共同代表で神戸学院大法学部教授の上脇博之さん(憲法学)は憤る。「本当に社会貢献の一環ならば、企業はホームページなどで宣伝するはず。でも、『政治献金にこれだけ出しました』と公開している企業は見たことはない」。確かに経済界で政治献金が話題になることは少なく、「こっそり」というイメージがつきまとう。
税理士でもある立正大法学部客員教授の浦野広明さんは、企業の政治献金は犯罪行為になりかねないと指摘する。「企業が何かしらの見返りを期待して献金しているならば贈賄罪になりかねない。会社の利益にならないのに金を出すのは株主に対する背任になる可能性がある。どちらの事態もグレーな行為なのです」
それでも企業はなぜ政治献金をするのか。上脇さんと浦野さんは同じ認識を口にした。「社会貢献というのは都合のいい主張であって実際は財界によるあからさまな買収政治なのです」
自民党の懐をさらに温めることになりそうなのが、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FGの3メガバンクの政治献金再開だ。銀行は、1990年代後半の金融危機で公的資金の投入を受けたことで、98年から政治献金を自粛していた。だが、公的資金の完済や業績改善が進み、献金できる環境が整ったとして再開する。全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほFG社長)は17日の記者会見で「社会貢献活動としてふさわしいかどうかで決定する」と述べた。ここでもまた「社会貢献」だ。
「銀行の場合は他の産業と違って、献金と融資がセットになっているのが大問題なんです」。こう批判するのが、インターネット放送局「デモクラTV」代表で経済問題に詳しいジャーナリストの山田厚史さん。では「献金と融資がセット」の意味は?
その答えは14年の自民党の政治資金収支報告書にある。報告書によると、3メガバンクと、りそな銀行の計4行の融資残高は計74億円。山田さんは「融資先に献金するということは実質的には利子の減免、あるいは元本の減額と同じ意味になります」と、怒りを抑えながら説明する。
融資ならば担保はあるはず。そこで自民党本部(東京・永田町)の登記簿を調べた。土地は国有地で担保にならない。一方、建物(地上9階地下3階)は自民党のものだ。報告書によると建物の資産価値は15億5230万円。だが、抵当権は付いていない。山田さんは「融資先に献金した上、さらに無担保で融資するなんて、金融ビジネスではあり得ないことが堂々と行われています」とあきれ顔だ。私たちが銀行で住宅ローンを組んだ場合は担保に取られるのが一般的なのだが。全銀協の佐藤会長は11月19日の記者会見で「一般論でお答えするしかないが、物的担保がないからお金を貸さないということはない」と述べたが、納得できない人も多いだろう。
そもそも銀行はなぜ政治献金するのか。山田さんは「銀行は規制業種で、政府が作るルールによって収益が左右される場合が多い。本当は献金はしたくないが、やらないと自民党からいじめられるという心配もあるようです」と見る。
現在の金融業界で最大のテーマは、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額の引き上げ。政府内では来年4月に現行1000万円から1500万円に引き上げる方向で議論が進む。ゆうちょのライバルである銀行業界はダメージを受けるだけに、「献金で限度額引き上げ幅に少しでも手心を加えてほしい」(関係者)という銀行側の思惑が垣間見える。
共産党以外の政党は企業・団体献金のほかに、国民1人当たり250円の税金を原資とする政党交付金も受け取っている。この制度が95年に導入され、5年後には企業・団体献金は廃止を含めた見直しを行うはずだったが、存続したまま。十分な資金があるせいか、政界では高木毅復興相の選挙区での香典支出を巡る一連の騒動や、民主党の小見山幸治参院議員によるトレーニングジムへの政治資金支出が問題になっている。
上脇さんは「政治資金がバブル状態だから不透明なお金の使い方ができてしまい、国会議員はお金の中毒になっています。だから『お金を断つ』という意味もかけて、禁断(金断)症状の治療をしないといけない」と話す。具体策として政党交付金を廃止、企業・団体献金を禁止して個人献金を中心とした政治資金で政党は活動すべきだと主張する。
浦野さんも個人献金が主体になるべきだとの考えだ。その上で「今は企業献金が多いから企業の主張に配慮するのは当たり前。だが、個人献金中心になれば、政治家は個人の意見に耳を傾けるようになるはずです」と語る。
交付金導入時の「約束」を破り、政党が企業献金を受け続けている現実は許されないのではないか。
自民党(国民政治協会)への献金額上位企業・団体(1)日本自動車工業会 8040
(2)石油連盟 8000
(3)日本電機工業会 7700
<4>トヨタ自動車 6440
(5)日本鉄鋼連盟 6000
<6>東レ 4000
<6>キヤノン 4000
(6)不動産協会 4000
<9>住友化学 3600
(10)日産自動車 3500
<10>新日鉄住金 3500
(12)三菱重工業 3300
(13)野村ホールディングス 3200
(14)大和証券グループ本社 3000
<15>東芝 2850
(15)日立製作所 2850
(15)パナソニック 2850
(18)三菱商事 2600
(18)三井物産 2600
(20)ホンダ 2500
※2014年、単位は万円、白抜き数字は経団連会長を出した企業
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