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2015年12月23日
今日は天皇誕生日だ。リテラが「天皇誕生日を前に安倍が宮内庁に圧力」と云う記事を書いていたので、ザックリと目を通した。筆者は、特に日本国憲法における象徴天皇と云うことに限らず、明治天皇から大正天皇、昭和天皇に対して、特別な感慨を持った事はない。天皇の存在に気づいたのは、ごく最近だ。ゆえに、天皇に対しては、極めて初心者である。今上天皇を通じて、その制限された中で行われている公私に亘る言動をつぶさに観察するうちに、あることに気づいた。
あぁ、これが日本人の平均的考えの中心にあるのだろうな、と思わせる天皇皇后両陛下の行動や発言から、筆者は感じ取った。現在の天皇皇后陛下の言動情報から、芸能情報的なものを排除して観察すると、戦前、戦中、戦後の日本人の「良識」を、天皇皇后両陛下の言動の中から、垣間見ることが出来る。このことに、気づいた。無論、現時点で気づいている事は、この感慨の範囲であり、思考と云うレベルには達していない。しかし、その昔の後醍醐天皇の政治的野心意外に、歴代の天皇が、実際にどの程度、政治に参加していたのか、寡聞にして知らない。室町から江戸に至る時代において、天皇がどのようなものであったか、市民レベルで触れる機会は少ないだろう。それ程の関与がなかった事は、幕府政治であった以上、概ね頷ける。
しかし、昭和天皇には、敗戦後の日本国憲法における、象徴天皇と云う地位が、どのようなものであったか、相当に複雑な心の揺れが存在したのだろうと思われる。現在の天皇皇后陛下にしても、昭和天皇が抱いた、複雑な心模様を受け継いでいる面は存在するだろう。しかし、その複雑さは、昭和天皇とは、当事者意識において、相当にかけ離れたものなのだと推察する。そして、日本史の中で、為政者は時代により、顔ぶれはコロコロと変わったわけだが、御所におわす天皇は、有能であれ、無能であれ、政治的には、概ね現在同様に象徴的であった。
戦前までは、主権は朕にあったわけだが、実際上は、その地位を利用した時の政府の為政を追認していたに過ぎないと見立てておくのが妥当だ。このように考えると、実は明治天皇や大正天皇、昭和天皇は、自己決定権が存在しているように見せかけられていただけで、殆ど決定権は不存在だったのではないかと云う想像が成り立つ。つまり、幕府政治における天皇の地位と、見せかけは極端に権力が集中した地位のように見えていたが、今上天皇よりも遥かに自己決定権を保持していなかった実情がありそうだ。それにもかかわらず、主権は我にありと主張させられた天皇だとも解釈できる。謂わば、時の政府の囚われ人だった。
このような推論を重ねていくと、実は、憲法によって象徴化された天皇の地位の方が、断然、自己決定権を有しているという皮肉な現象に出遭える。象徴天皇なのだから、政治への口出しは立憲主義が堅持されている限り、御法度である。
しかし、象徴天皇だと、自らの地位を定義づけられた日本国憲法の立憲精神の解釈に齟齬が生まれた場合、象徴天皇の地位も危ういわけだから、政治的であろうが、倫理や道徳的であろうが、情報を発信する権利は存在するのではないかと、最近考えている。天皇を中心に“人間宣言”している、させられた?わけだから、人間としての権利が不存在と云うのは理に適わない。
こういう発想で、リテラの記事を読むと、一層味わいが出てくる。筆者は、天皇誕生日の天皇のお言葉に、大変興味がある。安倍官邸の副産物として、日本人と日本国憲法が意識させられたし、天皇の存在も際立ってきている現実をみつめ、次なる国のかたちに夢を馳せるのも素晴らしい頭の体操になる。
≪ 安倍政治に危機感、天皇は誕生日に何を語るのか?
官邸が強める宮内庁への圧力、安倍ブレーンを使い天皇批判も
今日12月23日、天皇が82歳の誕生日を迎えるが、例年より一層、注目を集めているのが、恒例の記者会見で天皇がどんな言葉を語るか、だ。
「天皇と皇后両陛下は、安倍政権の改憲、右傾化の動きに相当な危機感をもたれている」
この数年、宮内庁記者や皇室関係者の間ではこうした見方が定説になってきた。
実際、2013年の天皇誕生日では、日本国憲法を「平和と民主主義を守るべき、大切なもの」と最大限に評価した上で、わざわざ「知日派の米国人の協力」に言及し、「米国による押しつけ憲法」という安倍首相ら右派の主張を牽制するような発言をした。
それに加えて、今年は戦後70周年、そして戦後の平和主義を大転換する安保法制が強行された年でもある。
天皇がこれまでよりもさらに踏み込んだ、憲法を軽視する安倍政治への警鐘を鳴らすのではないか、そんな予測が高まっているのだ。
「それを恐れてか、官邸周辺からはしきりに、天皇の言動に最近、不安があるかのような情報が流れています。『週刊文春』なども書いていましたが、あれもおそらく官邸発。実際は少し耳が遠くなられた程度なのですが、そういう情報を流しておくことで、何か安倍政権に批判的なことを言われた場合に備え、予防線をはっているんでしょう」(宮内庁担当記者)
もっとも、逆の見方もある。昨年あたりから、官邸が宮内庁にかなりプレッシャーをかけており、天皇、皇后が思いを素直に口にするのが難しくなっているというのだ。
実際、2014年には、安倍政権下で教育再生実行会議委員をつとめる安倍首相のブレーン中のブレーン、八木秀次が天皇・皇后の発言を「安倍政権批判」だと攻撃するなど、右派がさまざまなプレッシャーをかけた。その結果か、誕生日の会見も前年よりはトーンダウンしたものになった。
はたして今年の誕生日会見がどうなるのかはまだわからないが、少なくとも天皇の安倍政権への危機感は変わっていないはずだ。いったいその危機感がどこからきているのか。それを検証した記事を再録するので、読んでもらいたい。
(編集部)
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▽天皇家と安倍政権が対立!? 護憲姿勢強める天皇・皇后を首相の側近が批判!
それは、安倍首相に対して発せられたとしか思えないものだった。10月20日の誕生日を前にした文書コメントで、美智子皇后が「来年戦後70年を迎えることについて今のお気持ちをお聞かせ下さい」という質問に、こう答えたのだ。
「私は、今も終戦後のある日、ラジオを通し、A級戦犯に対する判決の言い渡しを聞いた時の強い恐怖を忘れることが出来ません。まだ中学生で、戦争から敗戦に至る事情や経緯につき知るところは少なく、従ってその時の感情は、戦犯個人個人への憎しみ等であろう筈はなく、恐らくは国と国民という、個人を越えた所のものに責任を負う立場があるということに対する、身の震うような怖れであったのだと思います」
実はこの皇后発言の2ヶ月前、安倍首相がA級戦犯として処刑された元日本軍人の追悼法要に自民党総裁名で哀悼メッセージを送っていたことが報道されていた。連合国による裁判を「報復」と位置づけ、処刑された全員を「昭和殉難者」として慰霊する法要で、安倍首相は戦犯たちを「自らの魂を賭して祖国の礎となられた」と賞賛したという。
皇后の言葉はこうしたタイミングで出てきたものだ。しかも、それは記者からA級戦犯をどう思うかと質問されたわけではない。自らA級戦犯の話題を持ち出し、その責任の大きさについて言及したのである。
「天皇と皇后両陛下は、安倍政権の改憲、右傾化の動きに相当な危機感をもたれている」
宮内庁記者や皇室関係者の間では少し前からこんな見方が広がっていた。天皇・皇后は、即位した直後からリベラルな考えをもっているといわれていたが、それでも以前は、一言か二言、憲法や平和、民主主義についてふれる程度だった。それが、第二次安倍政権が発足し、改憲の動きが本格化してから、かなり具体的で踏み込んだ護憲発言が聞かれるようになったのだ。
たとえば、昨年、天皇は誕生日に際した記者会見で、記者の「80年の道のりを振り返って特に印象に残っている出来事を」という質問にこう答えている。
「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」
日本国憲法を「平和と民主主義を守るべき、大切なもの」と最大限に評価した上で、わざわざ「知日派の米国人の協力」に言及し、「米国による押しつけ憲法」という右派の批判を牽制するような発言をしたのである。
また、美智子皇后は昨年の誕生日にも、憲法をめぐってかなり踏み込んだ発言をしている。この1年で印象に残った出来事について聞かれた際、皇后は、
「5月の憲法記念日をはさみ、今年は憲法をめぐり、例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます」
としたうえで、以前、あきる野市五日市の郷土館で「五日市憲法草案」を見た時の思い出を以下のように語り始めたのだ。
「明治憲法の公布(明治22年)に先立ち、地域の小学校の教員、地主や農民が、寄り合い、討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で、基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務、法の下の平等、更に言論の自由、信教の自由など、204条が書かれており、地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が、日本各地の少なくとも40数か所で作られていたと聞きましたが、近代日本の黎明期に生きた人々の、政治参加への強い意欲や、自国の未来にかけた熱い願いに触れ、深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で、市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います」
日本国憲法と同様の理念をもった憲法が日本でもつくられていたことを強調し、基本的人権の尊重や法の下の平等、言論の自由、信教の自由などが、けっして右派の言うような「占領軍の押しつけ」などでないことを示唆したのである。
そして、今回のA級戦犯発言──。これはどう考えても偶然ではないだろう。この期に及んでA級戦犯を英雄視する首相に対して、「責任をとることの意味を考えなさい」と諭したとも受け取れる言葉だ。
もっとも、安倍首相やそれを支える右派勢力にこうした天皇・皇后の発言を真摯に受けとめようという気配はまったくない。それどころか、首相の周辺からは、天皇に対する批判発言までが飛び出している。
今年4月、安倍政権下で教育再生実行会議委員をつとめるなど、安倍首相のブレーンとして知られる憲法学者の八木秀次が「正論」(産業経済新聞社)5月号で「憲法巡る両陛下のご発言公表への違和感」という文章を発表。そこで、天皇・皇后に安倍内閣の批判をするな、と説教をしたのである。
「両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない」
「宮内庁のマネジメントはどうなっているのか」
この憲法学者は、日本国憲法第99条に「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」という条文があることを知らないらしい。そもそも現天皇は戦後憲法によって天皇に即位したのであり、自己の立脚基盤を憲法におくことは当然なのだ。象徴天皇制とは戦後レジームの象徴であり、だからこそ天皇と皇后は常に戦後憲法理念である平和と民主主義の擁護を語ってきた。そういう意味では、先に喧嘩を売ったのは、その戦後天皇制の立脚点をはずしにかかった安倍政権のほうなのだ。
だが、彼らにこんな理屈は通用しない。ネット上では安倍首相支持者が、護憲発言を繰り返す天皇・皇后に対して「在日認定」という表現で非難するケースまで出てきている。
これまで、安倍首相が議連会長をつとめる神道政治連盟はじめ、右派勢力は天皇を再び国家元首にかつぎあげることを公言し、天皇を中心とした祭政一致国家の復活を声高に叫んできた。ところが、天皇が護憲や平和、民主主義を口にし始めたとたん、その存在を敵視し、天皇を棚上げするかたちで国家主義政策を進め始めたのだ。現在の天皇・皇后はむしろ、政権に疎んじられ、完全に孤立しているようにすら見える。
しかも、こうした状況に拍車をかけているのが、マスコミの対応だ。新聞、テレビはオランダ王室との華やかな宮中晩餐会などを大々的に報道する一方で、天皇や皇后のこうした憲法発言はほとんど取り上げようとしない。
たとえば、天皇が昨年の誕生日会見で、「平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り〜」と憲法に言及した部分について、NHKは安倍政権に配慮して、完全に削除してしまった。また、今年の美智子皇后の「A級戦犯」発言についても、この部分を大きく取り上げた新聞、テレビは皆無に近かった。全国紙の政治部記者がその理由をこう解説する。
「読売、産経、NHKは安倍政権の広報機関のようなものですから、改憲に水を差すような発言は報道しない。一方、朝日などの左派系メディアは今、弱っていますから、それを取り上げることで『天皇の政治利用だ!』 と言われるのを恐れて腰が引けている。結局、天皇陛下や皇后陛下がどんなに護憲発言をしても、国民には伝わらない、そういう状況になっています」
この先、おそらく天皇と皇后はますます孤立を深め、何を話しても政権から無視される状態になっていくだろう。だが、そのことは、天皇が政治利用される危険性がなくなるということとイコールではない。たとえば、代替わりをして、次の天皇や皇后が自分たちの意に沿う発言をしてくれるとなれば、改憲をめざす国家主義的勢力は確実に「天皇のお言葉を聞け」と政治利用に乗り出すはずだ。
実際、安倍政権と一部の保守勢力はすでに皇太子、雅子妃夫妻を今の天皇、皇后とは逆の方向に導くべく動き始めているという見方もある。この件については、また稿を改めて検証してみたい。
≫(リテラ:社会・政治―天皇誕生日を前に安倍が宮内庁に圧力・エンジョウトオル)
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