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安倍政治、その強さと弱さ 奢れる者、久しからずの伝
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/01/03/post-561.html
サンデー毎日 2016年1月 3日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載81
安倍晋三政権は一体いつまで続くのか? この素朴で重要な設問にどこまで答え切るか。政治記者の勝負どころである。
まずは、軽減税率騒動の決着について、政策の是非は触れず、その政局的意味合いのみを考える。
安倍官邸の判断は速かった。軽減枠1兆円という公明党の主張を丸のみし、4000億円を落としどころにしていた自民党執行部をあっさり寄り切った。
そこには、明快な政局判断があった。自民党内民主主義を捨て、公明党の戦闘能力を取った。つまり、税制についてはすべて自民党税調を軸に決めてきた、という従来の慣例を尊重するよりも、平和の党の看板を汚してまで安保法制成立に協力し、かつ2016年の国政選挙では700万の組織票をバックに自民候補を応援してくれる政治集団への対価支払いを優先した。
それはまた、安保から経済へという安倍政権のカラー転換を促進し、かつ、弱者対策重視という次の選挙へのキャッチフレーズ作りにもつながる選択であった。新聞業界にも軽減税率適用で恩を売った。そのための1兆円は安い買い物であった。かくしてこの政局は、安倍官邸側の圧勝に終わった。
これが安倍政治の動態力学だとすると、静態力学はどうか。五つの物差しで政権強度を測った。
第一に、その党内基盤である。麻生太郎財務相に言わせると、2本足(麻生、菅義偉(よしひで)官房長官)支持体制に高村正彦副総裁、谷垣禎一(さだかず)幹事長が加わり4本に補強された。派閥領袖(りようしゆう)にもこの体制をひっくり返す意思と能力が見られない。
第二に、その対米強度である。米国との首脳関係がうまくいった政権は長持ちし(中曽根康弘、小泉純一郎政権)、そうでない政権は短命に終わる(田中角栄政権)というジンクスがある。安倍氏は、当初歴史修正主義者として警戒されたが、その後は安保法制実現(米軍への集団的自衛権一部容認・後方支援強化)、TPP(環太平洋経済協力)交渉の妥結という対米協力姿勢が評価されている。
第三に、その対財界強度である。アベノミクスによる円安、株高政策、法人税の20%台前倒し減税は、輸出製造業中心の日本財界をいたく喜ばせた。財界の自民党への献金が軒並み復活したのはその蜜月時代の何よりの証しである。
第四に、その対メディア強度である。かつて新聞もテレビも政治権力に対しては一定の距離を置き、批判的視点をその持ち味としていたが、安保法制論議で顕在化したのは、政権批判派(朝日、毎日、東京)と政権肯定派(読売、産経)というメディアの分断だった。政権からすると対世論操作をするフリーハンドが広がっている。
第五に、その対野党強度である。憲法で国権の最高機関と定められた国会を構成するのは与党だけではない。国民の少数派を代弁する野党と対話し彼らの意向を取り入れるのが、与党としての度量であり、民主主義の建前である。安倍政権はその努力を怠ってきた。野党第1党である民主党の存在を軽視、維新カードを使うことで強気一辺倒の国会運営をしてきた。
国内的な政治力学とは別次元で、安倍政権を支えているのが、中国の台頭、という歴史的事実であろう。日本人はこの中国の大国化という現象に二重の意味で適応できていない。一つは、日本人が戦後最も大切にしてきたアジアで一番の経済大国というポジションを中国に取って代わられたことに対する欠落感であり、もう一つは、あの戦争で中国をさんざん侵略、簒奪(さんだつ)したにもかかわらずその賠償、謝罪が不十分なまま今に至っていることへの贖罪(しよくざい)感と、逆もまたありうるという不安感である。
安倍政権支持が底堅いのは、このある種日本民族のアイデンティティー危機に対するそれなりの回答があるからだ。経済的にはアベノミクスとTPP、軍事的には安保法制で中国を牽制(けんせい)、包囲する。
◇日中ともに賢明ならざる軍事的抑止力の強化 それ以外の選択肢を考えよ
次に安倍政治の弱点を見る。面白いのはそれぞれの強みの中に脆(もろ)さが胚胎していることである。
軽減税率枠の拡大は、手続き煩瑣(はんさ)化や線引きのあり方に対する数百万事業者の不満を呼ぶ。その政治力学をばかにしてはならない。1986年の売上税議論では党税調のドンであった山中貞則氏もそれを封じ込められず、結果的に中曽根政権の命脈を絶つことになった。
党内基盤も然(しか)り。骨格そのものは麻生氏が言うように強固だが、一方でいまだに閣僚になれない多数の適齢者の不満は爆発寸前だ。政権が何らかの失態をおかせば、一気に噴き出すであろう。対米国では、新法制により米国からの対日軍事要求が増えるのは確実であり、ノーと言えば日米関係は崩れ、イエスと言えば、戦死者リスクを抱える不毛な選択を迫られる。
政治と財界の過剰な癒着・介入は、スキャンダルをもたらすのみならず、民間企業の自発性を奪い、成長の阻害要因になる。政権派メディアの台頭は結果的に政権を弱体化させ、野党第1党への不義は、改憲も含め重要政策における広範な支持拡大への障害になる。
何よりも、中国が対日融和政策に転換した時のことも念頭に置くべきだろう。安倍政権にはその想像力が欠けている。双方にとって賢明とは言えない軍事的抑止力強化以外の選択肢をどう考えるか。
この強さと弱さが政権内部でどう化学変化しせめぎ合うか。強さが薄れ、弱さがそれを上回る局面はいつどういう形で来るのか。
ダブル選挙になろうと単独であろうと、16年夏の参院選がその契機になることは間違いあるまい。それだけの政治決戦の場である。
もう一つ言えることは単純である。奢(おご)れる者、久しからず。日本古来の無常観。そこにこそ安倍政治の盛衰を占うカギがある。
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