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NPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典氏(C)日刊ゲンダイ
注目の人 直撃インタビュー 藤田孝典氏 “下流老人”は「バカにするな」と声上げるべき
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/171862
2015年12月21日 日刊ゲンダイ
介護、引きこもり…ふとしたきっかけで貧困に転落
安倍政権が低所得の年金受給者1人あたりに3万円を払う方針だが、来年の参院選を見据えた「バラマキ」もいいところだ。こんな目くらまし政策で、高齢者の貧困問題が解決するわけがない。日本人の9割がふとしたきっかけで「生活保護レベルの暮らし」に転落するというショッキングな現実を描いた「下流老人」(朝日新書)は20万部を突破し、今年の流行語にもなった。「一億総老後崩壊」の日本に未来はあるのか。貧困現場を見続ける著者・藤田孝典氏は「このままではもっと悲惨なことになる」と怒りをぶちまけた。
■特養「50万人待ち」という異常事態
――今年、著書のタイトルである「下流老人」が大きなトピックスになりました。
関心を示すのは高齢者が多いかなと思っていたら、若い人からも連絡があった。全世代から反響がありました。非正規雇用が4割に達し、雇用や将来に対する漠然とした不安を、みんなが持っているんだと思います。
――「下流老人」とは生活保護を受ける生活レベルで暮らす高齢者、そうなる恐れのある高齢者のことを言うんですよね。最近の相談にはどのような変化がありますか。
以前は、40年間非正規で働いてきた人や低年金で不安定な働き方をしていた人が多かったですが、今の相談はもう普通の人です。1部上場企業のサラリーマン、地方公務員、銀行員など超安定といわれた職業だった人もいます。
――誰でも「下流老人」になりうるということですか。国民全体の下流化も大きな問題となっています。
親が突然、介護が必要になったら、どうしますか。(公共性の高い)特別養護老人ホーム(特養)には入れないですよ。全国で約「50万人待ち」とか、介護保険料を払っているのに、ありえない状況になっています。有料老人ホームは、月20万円以上かかる。入居金も数百万円など一般的です。それでは、生活できないですよね。在宅で見るなら、家族の誰かが会社を辞めないといけない。あらゆる世代が家族の介護などのふとしたきっかけで、いつ貧困に転落してもおかしくない状況です。
――恐ろしいですね。
介護、病気、引きこもり……何か2つのファクターが合わさったら、老後は終わりです。家族がいつ病気になって倒れるかなんてわからない。息子がブラック企業に入ってうつ病になれば、会社を辞めることになる。そうなれば再就職も難しい。自分の年金で引きこもり状態にある息子を食べさせていくことになるんです。今の高齢者、団塊の世代は多くが終身雇用で、正社員で年金を多くもらっているから、まだ20%程度の貧困率で済んでいます。しかし、その下の世代になればなるほど、非正規雇用が増えて年金額も下がっていく。支える人口も少子化で減っていますから、もう絶望的です。このまま少子高齢化対策がなされないのであれば、日本は経済や社会システムが沈んでいくだけです。
――個人で何かできることはあるのでしょうか。
日本人は家族で何とかしようという意識が強すぎて、早めに相談することがなかなかできないんです。家を売るくらい困ってから相談に来るケースが多い。介護をするにしても、お嫁さんや娘さんがやるべきという伝統的な家族観も状況を悪くしています。大事なのは「受援力」です。援助が必要な時に、必要な援助を受けるということ。変なプライドを持たないで、生活保護や社会保障に対する知識を持ち、場合によってはそれを受けることです。
――そうした現実を前に、安倍政権は何か対策をしているのでしょうか。
安倍首相は社会保障にまったく興味、関心を持っていないと思います。本腰を入れてやっている政策は、何ひとつない。例えば、非正規雇用が深刻なほど広がっているのに、何かやっていますか。本来なら、格差をなくすために税制を変えるとか、公営住宅を増やしたり、家賃補助制度を入れていく。そういうのを政策というんです。「1億総活躍」と言ってますが、一体、何をどうするのか。スローガンを打ち出せば、国民が期待してくれるので、ごまかしているだけです。看板は立てるんですが、中身がない。
消費税10%で生活保護が急増する
NPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典氏(C)日刊ゲンダイ
――低年金受給者に月3万円出すようですが。
3万円を永続的に出すならわかります。しかし、3万円を1回だけというのは、「選挙で入れてください」という“買収”に近いですよ。その対象が1250万人もいるというから、恐ろしい話です。しかし、皮肉にも相当数の高齢者が低年金で暮らしている事実が明らかになりましたので、この層に対する政策をどうするかを注視していくべきだと思います。
――3万円はどのように使われると思いますか。
預貯金には回らないでしょう。貧困の高齢者はエンゲル係数が高い。満足に食事を食べられていないので、食費や医療費に回る。一時的に経済効果は出るとは思いますが、これをどう受け止めるか。満足して「安倍さん、ありがとう」と言うのか。「バカにするな」と声を上げるのか。基本的に安倍さんは高齢者のことをバカにしていますよ。だからこそ、声を上げないといけないんです。
――再来年には消費税10%の引き上げも控えています。
悲惨なことになると思います。預貯金を使いながら生活している高齢者は、それが底をついた時に、生活保護になだれ込んでくるでしょう。結果、社会保障費は増えますよね。消費も落ち込んで、納税率も上がらない。生活に余裕がなくなれば、削られるのは「遊興費」です。そうなれば、心のゆとりもなくなり自殺者も増加するでしょう。相当暗い未来です。
――どうすればいいのでしょうか。
抜本的に政策を変えるしかないんです。少なくとも「最低保障年金」の制度は必要です。すでにフランスなどの欧州では確立しています。一定の年金額が保障されていないと、現役世代はお金を使うことができない。老後のために2000万〜3000万円を貯蓄しておかないと不安だという先進諸国なんて、聞いたことがありません。若い人がお金を使わなくなったら、個人消費は伸びず、経済は衰退するに決まっています。
――一方で、老後のお金を貯めておかなかったほうが悪いなどの「自己責任論」という考え方も日本には根強いです。
自営業者なんて40年間頑張って働いても、年金は月6万円しかもらえません。どう考えても制度上の不備があるのは明らかです。厚生年金も報酬比例なので、賃金が安ければ年金も低いということになる。年収400万、500万円でも、老後にもらえる年金は生活するのにギリギリの額です。単純な話、現役時代に年収800万円はないと老後の安定は成り立たない。しかも、夫婦ともに健康で、離婚もしないで、息子も非正規ではなく働いている。いろんな条件をひとつひとつクリアしていかないと、老後の安泰はありません。問題は、努力できる条件を整備しないといけないということなんです。今は生まれた家庭で将来が決まっちゃう。お金がある家に生まれないと大学進学などは困難になります。みんなが大学に進学できる条件が保障されているなら、頑張って競争してくださいという話になるが、それがない以上は、自己責任論は効力を持たないです。
――経済力も大事ですが、心の持ち方も大切ですね。
貧困自体をつらいと思わないこと、今ある生活を楽しむことです。お金がなくても楽しめる趣味を持つ。同時に人間関係をうまく築くことも大切です。実際に地方のムラでは助け合っている。お茶飲み仲間で集まって、みんなで食事を持ち寄るから1食、2食はいくらでもどうにかなる。年金の月額は4、5万円と低いですが、持ち家があるからそういうことができる。地方のほうが経済的に貧困ですが、ホンワカしていて貧困を感じさせない。助けてくれる人が周りにいるんです。もちろん、生活保護などの受け取るべきものは受け取るべきです。「下流老人」を出したきっかけのひとつは、意識を変えましょうということなんです。生活保護は恥ずかしくない、社会福祉の権利を行使しましょう、と。受けなければ結局、富裕層や大企業の利潤・内部留保がたまるだけです。
▽ふじた・たかのり 1982年、茨城県生まれ。生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー。聖学院大学客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。厚労省社会保障審議会特別部会委員。著書に「ひとりも殺させない」など。
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