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全国民の幸福を目指す経済政策が求められているー(植草一秀氏)
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14th Dec 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
公益財団法人日本漢字能力検定協会の理事長らが法人の利益を不適切に、
また私的に利用していた問題が発覚したのは2009年2月のことである。
その結果として2009年6月、同協会の前理事長と前副理事長が背任罪で起訴された。
この裁判で京都地方裁判所は2012年2月29日、
前理事長と前副理事長の両名に懲役2年6月の実刑判決を言い渡した。
そして、2014年12月9日、最高裁で実刑判決が確定した。
ちょうど1年前のことである。
この日本漢字能力検定協会が、毎年12月に、
「今年の漢字」
を発表する。
「今年の漢字」
は一般応募された「今年の漢字」のなかから、最多数のものが「今年の漢字」第1位に選出される。
2015年の「今年の漢字」は、
12月15日に、京都清水寺で発表される。
ちなみに、2014年の「今年の漢字」第1位は
「税」
だった。
2015年の第1位に選ばれる漢字は何になるか。
爆買い、爆発の「爆」
「安保法制」、「円安」の「安」
なども候補になるだろう。
昨年1位の「税」は、応募総数167,163票のなかの8,679票を獲得した。
この規模の数で第1位になるなら、組織票が動けば、
その組織票で「今年の漢字」が決まってしまうことも考えられる。
そんな裏があるのか、ないのか。
といったことも考える必要はあるのだろう。
第二次安倍内閣が発足して、12月26日で丸3年が経過する。
この3年間に、円安と株高は進行したが、人々の暮らしぶりは、まったく改善していない。
「今年の漢字」と言われても、
なかなか、明るい言葉、希望に満ちた言葉が思い浮かばないのはこのためである。
大企業の利益は拡大したし、株価も上昇した。
とりわけ、輸出大企業の収益は激増したから、
そのような企業の、ごくひとにぎりの人々は、アベノミクスを絶賛するだろう。
しかし、そのような恩恵に浴したのは、本当にひとにぎりの人々だけなのだ。
大多数の庶民にとっては、アベノミクスの恩恵などまったく無縁なのだ。
その理由は、アベノミクスが、一般庶民の幸福など、微塵も考えていないことに依っている。
むしろ、アベノミクスは、一般庶民の処遇を引き下げることを推進するものなのだ。
一般庶民の処遇を引き下げることは、裏を返すと、
一般庶民を労働力として活用する巨大資本にとっては、利益増大がもたらされるということを意味する。
労働諸規制が緩和され続けている。
正規社員の比率は趨勢として引き下げられ、非正規労働者が激増しているのは、
政治がその変化を後押ししているからだ。
残業代ゼロや、解雇自由化など、庶民にとっては、生活の根幹に関わる
制度改悪
でしかないが、労働コストを究極の水準にまで切り下げたい大資本にとって、
こうした規制緩和は大歓迎なのである。
何よりも象徴的であるのは法人税減税である。
財務省は2007年の時点で、
「日本の法人の税および社会保障負担は、国際比較上、高いとは言えない」
との判断を明示している。
「法人税減税の必要なし」
の判断を確定したのである。
その法人税について、日本政府は2012年以降、引き下げに次ぐ引き下げで対応している。
その一方で、消費税については、引上げに次ぐ引上げを実行している。
このような日本の現実を示す漢字は、
「暗」であり、「苦」であり、「酷」であり、「惨」であり、「終」でしかない。
この経済政策を変えること。
いま一番求められていることは、これだ。
経済の好循環を作るために、やらなければならないことは、
中低所得者層の支援
である。
国を支えている根幹は、
一般庶民
なのだ。
この一般庶民を大切にする政策を実行せずに、国の繁栄、国民の幸福はあり得ない。
ところが、安倍政権は、1%の富裕層の利益拡大だけを追求している
1%の利益を拡大するためなら、99%の一般庶民を踏みつけにしても構わない。
この考え方に沿う経済政策が実行されている。
2012年以降の法人税減税は、まったく必要のないものだ。
日本の法人の税および社会保険料負担は国際比較上高くないのだから、
法人税減税を実行する正当な理由は存在しない。
2007年政府税調報告書のポイントは、税負担だけでなく、
社会保険料負担を併せて考察している点だ。
この調査結果によると、日本の法人に対する税および社会保険料負担は、
英米よりはやや高く、
独仏よりはかなり低い。
その理由は、欧州では企業の社会保険料負担が高いのである。
したがって、百万歩譲って、法人税減税を実施するなら、
同時に、社会保険料負担の増大を実行するべきなのだ。
ところが、財務省が主導して、法人税減税を推進してきた。
40%超の実効税率が30%以下にまで引き下げられるのである。
財務省が
「法人税減税必要なし」
の判断を示していたのに、
「狂ったように法人税減税を推進してきた」
理由はただひとつ。
消費税増税を実行するためである。
法人税減税を行えば、政府の税収は減る。
本来は、財務省が税収を減らす政策を推進するはずはない。
しかし、財務省は法人税減税を熱烈推進しているのだ。
それは、日本の経済界を消費税増税推進のエンジンとして活用することにある。
経済界も消費税増税反対になれば、消費税増税を実現することは不可能になる。
一般個人は、基本的に消費税増税に反対である。
そこに、経済界、法人の消費税増税反対が重なれば、消費税増税は不可能になる。
そこで、消費税増税賛成派を作るために、経済界に法人税減税という飴をしゃぶらせているのだ。
もうひとつ、財務省が法人税減税を推進する重要な理由がある。
それは、日本の民間メディアを支配しているのが、経済界であることだ。
民間マスメディアの収入を支えているのは、100%経済界だ。
経済界の提供するスポンサー料が、民間メディアの収入そのものなのである。
経済界を消費税増税賛成派に組み込むことは、
日本の民間メディアが、消費税増税推進の世論操作、情報操作を実行するための、決定打になるのだ。
法人税減税を際限なく推進して、経済界を消費税増税推進のエンジンとして活用する。
このエンジンは、日本の情報空間を支配するエンジンになるのである。
こうして、日本はいまや、世界に冠たる
「弱肉強食国家」
に転落しているのである。
このような国で本当にいいのか。
問われるのは、日本の主権者だ。
私たちが目指す日本は、
「弱肉強食国家」
ではなく、
「共生国家」
である。
力のある者に負担を求め、その財源で、低所得者を支える。
若者には、無償で高等教育を提供する。
これを全面的に展開するだけで、すべての主権者に活力や希望が生まれる。
いま求められている政策は、この方向の経済政策である。
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