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選挙が怖い自公は軽減税率茶番劇で混乱を狙い消費増税先延ばしを画策するー(田中良紹氏)
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13th Dec 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
軽減税率を巡る自公協議は食料品全般を対象とすることで大筋合意した。
自民党税制調査会は公明党と官邸に押し切られ、
かつて財務省が主導した「税と社会保障の一体改革」を看板とする
自公民の三党合意も否定された。
それは社会保障のサービス低下を招く懸念を生じさせている。
民主党は自らの主張を全否定された訳だから、
通常国会でそのことを批判する事になるだろう。
そこが安倍政権の狙いである。民主党が批判すればするほど、
国民の目は「消費税の制度設計」にくぎ付けになる。
議論がすったもんだすれば、国民から安保法制強行可決の記憶が薄れていく。
そして安倍政権は選挙直前に消費増税先送りを発表するのである。
折しも米国のFRBは今月中に利上げを発表すると見られ、
ドルの米国還流が起これば新興国経済は混乱し、世界経済の見通しを不透明にする。
消費税の制度設計を巡る議論が混乱し、世界経済の見通しも不透明になれば、
それを理由に消費増税を見送る。
そうすれば国民は選挙で安倍政権を支持すると考えている。
それはただ選挙に勝つためだけの方策で、
日本国家の将来を見据えた政治とは無縁なのだが、
来年の選挙が怖くて仕方がない自公政権にとって、
それ以外に勝算を確実にする方法はない。
軽減税率を巡る今回の自公協議はそのために仕組まれた茶番劇の第一弾だとフーテンは見ている。
今回の自公協議は、そもそも消費税が何のためかの議論から離れ、
選挙を意識した政党の党利党略に利用する材料となり、
それが国民を目先の利益に誘導し、国を滅ぼす方向に向かわせる。
竹下政権が消費税を導入する頃、政治取材の前線にいたフーテンはそのことを痛感する。
そもそも日本政府が消費税を導入しようとした要因の一つは財政赤字の解消である。
1973年の石油危機は日本の高度経済成長を終わらせマイナス成長をもたらす。
税収の減少を三木内閣の大平蔵相は財政法で禁じられていた赤字国債発行で切り抜けた。
だが政府の借金のツケを将来の子孫に回してはならない。
その思いが首相になった大平に消費税導入を決断させる。
それは同時に米国の占領政策で押し付けられた直接税中心のシャウプ税制から脱却する事を
意味した。
つまり第二の要因は米国主導の戦後政治からの脱却、つまり「戦後レジームからの脱却」にある。
米国は所得税と法人税からなる直接税中心の国で、
国民は税金が安い方が良いと考え、
その代り国が国民の面倒を見る「福祉」を「悪」と考える。
これに対し欧州では直接税に加えて物やサービスに税金をかけ、
その財源で社会福祉を充実させ国民の面倒を国が見る。
つまり「高福祉高負担」の「福祉国家」である。日本はそちらを目指そうとした。
一方で直接税は申告制であるから悪い人間が嘘を申告して脱税する余地がある。
給料から税金を天引きされるサラリーマンは正直に税金を払っても、
農家や自営業者は税金逃れをしていて不公平だと指摘され、
物の値段に課税される消費税は最も公平だと言われた。
ところが大平内閣の「消費税導入」は79年の総選挙で自民党惨敗の原因となる。
日本人は昔から税金の額には関心があるが、
税金がどう使われるかには関心がないと言われる。
財政赤字の解消も福祉国家の目標も国民には届かず、とにかく増税というだけで消費税は否定された。
そのため竹下政権は消費税を「福祉目的税」とすることで国民の理解を得ようとした。
また課税対象を高額所得者が購入する高級品に限定する案も俎上に上る。
庶民の買う物は非課税にしようとしたのである。
しかし大蔵省は税の使途を制限される事を嫌い、
また高級品の線引きも難しいとなり、
欧州が税率20%程度でその代り生活必需品を非課税にしているのに対し、
日本は3%の低い税率ですべての物品に課税することになった。
フーテンが最も残念なのは、欧州を真似て「福祉国家」を目指そうとした構想が
まったく国民の議論にならなかった事である。
消費税を決める国会はリクルート事件の直撃を受け、「政治とカネ」の議論に終始し、
そのため福祉国家に賛成の野党まで反対に回り、
消費税法案は強行採決される事になった。そこで消費税には悪のレッテルが貼られることになる。
消費税の問題点は逆進性にあると言われる。
確かに富裕層が所得から消費に回す割合と低所得者が消費に回す割合を比べれば、
低所得者の割合が高いので、消費税には逆進性があると言える。
しかし税金は国家が国民にサービスをするための財源である。
自分が払った税金より多くのサービスが戻ってくればその国民は得をし、
戻ってこなければそれは他人のために使われた事になる。
フーテンは欧州の国民が逆進性を問題にしているという話を聞いた事がない。
おそらく税金を払っても納得のできるサービスが受けられているのだと思う。
仮に間接税をやめて所得税の累進課税を強化すれば、
富裕層は外国に逃げて日本国に税金を払わなくなる可能性がある。
問題は国が国民のどの層にどれだけのサービスを施すかである。
それを見なければ逆進性の判断はできない。
ところが自公の軽減税率を巡る議論は目先の損か得かだけを考えさせ、
愚かな大衆を惑わすものでしかない。
TPPを巡って「関税が下がれば安い商品が買える」と宣伝したのと同じで、
そう言われれば愚かな大衆は「高い国産品より安い外国産が有難い」となる。
しかしそうして食料自給率が下がれば、
日本国民は外国に依存しなければ生きていけない民族となり、国家の安全保障を著しく損なう。
欧米は食料自給率を下げて国の安全保障を危うくするような愚かなことはしない。
国民は高くとも国産を買う。あるいは政府が税金で農業を支える仕組みを作り、
決して外国に依存しなくとも国民が生きていけるようにする。
そのための税金は国民が国民として生きるための納得できる支出なのである。
日本人の主食である国産品の消費税をゼロにするという話なら立派な軽減税率である。
戦後日本は米国の植民地政策によってパン食に変えられ、
食料自給率を50%以下にされてしまった。それを反転させて食糧自給をめざし、
自立の道を歩むための税制に変えるというなら「戦後レジームからの脱却」と言える。
ところが消費税導入の目的であった財政赤字からの脱却のためでもない、
戦後レジームから脱却して福祉国家を目指すためでもない自公の軽減税率協議は、
フーテンから見て選挙目当ての茶番劇でしかない。
しかしその茶番劇は来年の通常国会に引き継がれ、
民主党を巻き込んで最後は増税先送りの目くらましに利用される。
それを裏返せば、それほどに自公は次の選挙を怖れているという事だ。
賢明な国民はそこのところを認識して茶番に巻き込まれずに自公が怖れる選挙準備を
着々と進めるべきなのである。
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