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安倍首相と榊原経団連会長(C)日刊ゲンダイ
永田町の裏を読む ナチスばりの総動員体制を拒絶する意思
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/171330
2015年12月10日 日刊ゲンダイ
日経新聞株式面のコラム「大機小機」は、短文ながら鋭い批評が飛び出すことがあり、欠かさず目配りしているファンも多い。8日付の同欄は筆名「無垢」氏の担当で、タイトルは「日本版『国家資本主義』でいいのか」。官民協調の名のもとに政府が経団連を呼びつけて、賃上げしろ、設備投資を増やせ、料金を値下げしろと強制するのは「企業経営の根幹を政府に握られているようなもの」で、「戦前の大政翼賛会や産業報国会を思わせる」と、手厳しい。
情けないのは経団連の榊原定征会長で、安倍晋三首相の前で「設備投資を3年間で10兆円増やす」とか「来年は今年を上回る賃上げを目指す」とか約束している。そもそも、経団連会長が各企業の経営責任を担えないのだから、設備投資や賃上げの見通しを政府に約束などできるはずがない。
「少なくとも石坂泰三、土光敏夫といった経団連会長だったら、政府の要請を断り政府がやるべきことは何かを諭していただろう」と同コラム。同感だ。石川や土光の頃は「財界総理」と呼ばれて、首相と同格か、それ以上の国家運営に関わるご意見番として重きをなしていた。それに比べると、今の会長は「そういえばあの人、どこの会社の出身だっけ?」と言われてしまうような(東レだが)小者で、安倍のナチスばりの1億総動員体制づくりの提灯持ちを演じて恥じるところがない。
その経団連の忠誠ぶりを愛でて、安倍は「法人税をさらに軽減する」と言うが、富岡幸雄著「税金を払わない巨大企業」(文春新書)が指摘するように、経団連加盟1329社の中には法人税を払っていなかったり、払っていても法定税率をはるかに下回る数%や1%以下の実効税負担率で済ませている大企業がゴロゴロある。こういう「節税」という名の公然たる巨額脱税行為を野放しにしておいて、庶民には等しくふりかかる消費増税を押し付けようというのがアベノミクスの本質である。
8日付の毎日新聞にも「官民対話 政府は介入しすぎ」という横浜市の若い会社員の投書が載っている。携帯電話の料金引き下げを大手3社に提案したのは「大きなお世話」で、企業は国営ではない。「1億総活躍会議は来夏参院選のためのパフォーマンスにしか見えない」と見抜いている。
政府と経済界が茶番に等しいなれ合い劇で国民を欺こうとしても無理で、おそらく参院選で多くの人々は安倍流の国家社会主義による総動員体制を拒絶する意思を示すのではないか。
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