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12月8日院内集会「冤罪を生む刑事訴訟法の改悪を許さない」
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2015-12-09 八木啓代のひとりごと
日本の司法を正す会と週刊金曜日共催の12月8日院内集会「冤罪を生む刑事訴訟法の改悪を許さない」に行ってきました。
シンポジウム形式で、登壇者は、今井恭平氏(ジャーナリスト)、郷原信郎氏(元特捜検事・弁護士)、桜井昌司氏(布川事件冤罪被害者)、鈴木宗男氏(新党大地代表)、司会に青木理氏(ジャーナリスト)という非常に濃い面々。
まず、今井氏から刑事訴訟法改正案の問題をレクチャー。
取調べの可視化、盗聴の合法化、司法取引など、本来、別個に一つづつ、しかも丹念に審議すべきものが、どさくさまぎれに一括で審議され、まとめて法案可決されようとしていることへの危惧が指摘される。
もともと、厚労省の村木さんの冤罪事件とこれにともなう証拠改ざん事件をきっかけに検察批判が高まったうえ、さらに2010年の足利事件、2011年の布川事件、2012年の東電OL事件と、重大な事件で次々に無罪判決が出て、冤罪が明らかになったこともあり、それらの流れの中で、法制審議会で、時代に即した刑事司法制度のの基本構想が考えられ、法務大臣に答申されたはずだったのが、真逆の方向に行ってしまったと。
では、なぜ、こういうことになってしまったのか。
村木さんの冤罪事件の後、「検察の在り方検討会議」が設置されて、抜本的に検察のあり方を変えることになるはずだったのが、そうならなかったことについて、この会議のメンバーだった郷原弁護士からコメント。
この会議のメンバーは12人いたが、「法務省が受け入れ可能な内容」に落とし込むような議論に持って行かれてしまった。なかでも露骨だったのは、まさに、検察性善説の御用学者と言える東京大学の井上教授だった、と。
そのような状態で、最初のうちこそ厳しい検察批判などが出たものの、年明けには議論が収束方向に向かい、しかもそこに東日本大震災が追い打ちをかける状況で、会議自体が話題にもならなくなってしまった。
その結果、この会議を受けてつくられた法制審議会で作られた問題の法案は、検察にとって反省を受け入れる内容になっているかというと、No。むしろ検察の武器を増やしてしまう形になってしまった。たとえば、米国の刑事司法と日本の刑事司法とはまったく違うものだが、その違いを無視している、と、元特捜検事の立ち位置から、厳しい指摘。
一読の価値有り。
そして、冤罪のため、29年を獄中で過ごした桜井氏。日本では「冤罪」事件は他人事だと皆が思っていること。実際に自分自身も、自分が冤罪に陥れられるまで、警察や検察は正義の味方で、裁判所は正しい裁定をおこなう立派なところだと信じていた、と。しかし、実際には、警察にしても検察にしても裁判所にしても、何をしても責任を取らなくてもいいというシステムになっている。
続いて、やはり、収監経験があり、現在再審請求中の鈴木宗男氏。
「そもそも、みなさん、なんで私が逮捕されたかご存じですか?」
この問いに正確に答えられる人が、じつはほとんどいないという事実を指摘。
検察のリークを無批判に垂れ流すメディアのために、何の証拠もなく、検察がまったく立件すらできていない件に対して、「真っ黒」であるかのような報道がなされ、してもいない「自白」までしたと報道にされてしまったという事実を説明しつつ、しかし、そうなったことには、法務省性善説でやってきた政治家に責任があると。
検察官と裁判官が個人的に親しくなり、情が湧いてしまう根源になりうるため、批判を浴びた判検交流を3年前に廃止にしたことは、ささやかであるが功績であると。(場内拍手)
しかし、事実上の司法取引のようなものは、選挙違反などのケースや自分の場合にも、前からあったと喝破。つまり、政治家の応援をするような支援者や企業に対して、重箱の隅をつつき、些細なことを罪にしてやると脅したうえで、それをやらないかわりに、検察が目をつけている政治家について、検察のストーリー通りの供述をしろと迫る手口だという。
実際に鈴木氏は、有罪判決を受けて収監され、出所してから、裁判で鈴木氏に不利な証言をおこなった関係者から、実際は検察に脅されていた旨の話を聞き、現在、再審請求中だという。
ここで、郷原弁護士から、現在の法案で提案されている「可視化」をまったく評価しない、と。
この点については、今井氏からも詳細な説明がある。
法案賛成派の拠り所にしている主張は「それでも可視化が決まることが、重要である。この法案を潰せば、可視化を潰すことになる」というものだが、実際には、この法案で提案されている可視化は、裁判員裁判と検察独自捜査に限定されているため、実際には全裁判のうち3%に過ぎず(計算方法によっては、0.8%説も)、しかも、条件付きであることが強調。
何より問題は、録音・録画は簡単に開示されるわけではなく、供述調書で「自白」した被告人または弁護士から、「その承認が任意でされたものではない疑いがあることを理由として異義を述べたとき」、つまり、その自白が、警察や検察に強要されたで事実ではないというクレームがあったときに、検察官だけが、その取調べ記録を証拠請求できる、という点。
つまり、検察官は、もしその録画(録音)内容が、自分に都合が良ければ、「いえいえそんな無茶な取り調べをしてませんよ」と、証拠として出すことができ、都合が悪ければ出さなくて良いのである。(もっとも、出さなければ、暗にやばい取り調べをしていたと認めるようなものなので、その自白調書は証拠として使えなくなるわけだが、どんなえぐい取調べをしていたとしても、出さないことができる以上、検察官が何らかの罪に問われることもなく、単に「証拠と使えなくなる」というだけである)
さらに今井氏は、警察からえぐい取調べを受けた被疑者の場合、そのえぐい取調べの真っ最中に自白するというより、えぐい取調べのあとで、やさしい態度をとられ「吐いて楽になってしまえ」みたいなことを言われて、被疑者の心が折れ、嘘の自白をしてしまうケースが珍しくないことを指摘。実際に、足利事件の菅家さんも、泣きながら自白している録音があるが、その自白の瞬間は「えぐい取調べ」は行われていないため、そこだけ切り出して聞かされると、誰でもが菅家さんの有罪を信じてしまうような形になっていたそうである。
つまり、こういったケースの場合、録音録画が、かえって真犯人をでっちあげる証拠に使われてしまう恐れがあるということだ。
これに対して、まさに「えぐい取調べ」を受けて、「嘘の自白」をしてしまった桜井さんが、「なぜやってもいない自白をしたのかと言われますけどね」とコメント。
取調室の中には時計がない。その中で長時間責め続けられ、時間も日付も判らなくなるような状態がずっと続くと、心が折れてしまうのだという。そして、どうせいつか真実がわかるのだから、という気持ちになって、やってもいないことを自白してしまうのだそうだ。
もちろんその裏には、嘘の自白をすることで、「今」をラクになりたいという心理の他に、たとえ嘘の自白をしたとしても、裁判所でちゃんと判断してくれるだろうという裁判官への信頼もある。
そのような体験をした身だからこそ、桜井さんは自信を持って断言する。「私が検察官だったら、一週間で、やってないことでもやったと自白させてみせますよ」
そういえば、元検察官で、後に裏社会の弁護士として「闇の守護神」という名を馳せた田中森一氏も、どんな被疑者でも3日で自白させるというようなことを著書に書いておられた、と司会の青木氏。
ここで鈴木宗男氏が、「検察はストーリーに合わせた調書を作る」
さらに、参考人には、裁判で「検察ストーリーどおり」の証言をさせるために、40回から50回にまで及ぶこともあるという、洗脳に近い「証人テスト」を行うという問題が語られ、可視化を行うのであれば、被疑者だけではなく、参考人の取調べの可視化も行わなければ意味がないと。
ここで郷原氏が、さらに「証人テスト」問題に言及。
今回の刑訴法改正案で、検察独自捜査の可視化が入っているのは、じつは、検察を縛ることができたわけではなく、単に、検察に実害がないからだという。
つまり、村木さん事件で、証拠の改ざんをおこなった前田恒彦元検事が実際に逮捕され、有罪になったことで、現場の検察官にも、あそこまでやったら逮捕&有罪だという認識が生まれたため、あれ以後、特捜では、あまりにもむちゃくちゃな取調べは影を潜めた、という実態があるのだという。
しかしその一方で、「証人テスト」の問題はほとんど知られておらず、こちらのほうがより重大な問題だと郷原氏は指摘する。というのも、「自白をさせられない」ことで検察官が責められるよりも、むしろ、裁判で、参考人に「調書通りの証言をさせられない」ことのほうが、検察官は上司にボロクソに責められるのだそうだ。
この証人テストと司法取引とは重大な関連がある。
ここでふたたび今井氏から、これから日本で解禁されようとしている司法取引の問題点について言及があった。
司法取引には、自分の罪を認めて全部告白する代わりに、刑の軽減を願う「自己不在型」司法取引と、他人の罪を解明したら自らの刑の減免になるという「利益供与型」司法取引とがあるが、日本で採り入れようとしているのは、後者の方。しかし、アメリカでは、この「利益供与型」司法取引は、Jail snitchと呼ばれ、冤罪の温床となっている実態があるという。
つまり、刑務所に収監されている犯罪者が、「刑務所内の雑談で、○○が、じつは自分があの事件の真犯人だって言ってました」みたいな密告を行うことで、自分の刑を軽くしてもらうというようなことである。
しかし、そもそもが、犯罪を犯して刑務所にいるような人なのである。自分の罪を軽くするためなら、嘘をついて他人を陥れるようなことをやってしまう人がいたって、全然不思議ではない。というか、そういう証言をもし採用するのであれば、相当、きっちりした裏付けがないと、むしろ危ないと思うのだが、むしろ、そういう「犯罪者の密告」を「重要な証拠」にしてしまうということの問題性は明らかである。
実際に、日本でも、司法取引制度がなくても、八海事件などのように、主犯者が自分の罪を少しでも軽くするために、関係のない他人を「主犯者」に仕立て上げ、自分が「従犯」であるかのようにして、冤罪を作ったケースが存在しているのである。
よく映画やテレビドラマで見られる陪審員裁判は、じっさいにはわずかしかなく、米国での刑事司法の90%は司法取引であるとされている。つまり、ほとんど「裁判」ではなく、検察官と弁護士の取引で刑が決められているわけだ。
このような米国の状況は、モデルにするべきどころか、「司法が崩壊している状態ではないか」と、ここで郷原弁護士。
そして、日本でも事実上、闇の司法取引みたいなものは存在しているという実情があって、そのうえで、法制化することで、その闇の部分が透明化されるのであればいいが、おそらくそうはならないだろう、と。
さらに盗聴の問題がある。
現在も盗聴は、1999年から法律で限定的に認可されているが、そこでは対象犯罪がきわめて限定されている上、東京都の特定の場所で通信事業者の立ち会いのもとでおこなわなくてはならない。さらに国会に報告義務がある。
なので、実際にはあまり使われておらず、年に多くて30〜40件程度なのだという。
(とはいえ、けっこうやっているわけだ)
それが改正刑訴法では、対象犯罪がぐんと広がる。一般の窃盗などもすべて含むことができる。 そして、各警察署で盗聴が可能になる。裁判所の令状は一応必要だが、そもそも、勾留請求ですら「自動販売機」と呼ばれている現状なのだから、令状も事実上そうなることは目に見えている。
つまり、万引き程度のこじつけでも、盗聴を可能にしてしまえるわけだ。
まさに盗聴捜査の全面解禁である。
この問題に関して、郷原弁護士が、ちょっと怖いコメント。
「かつてNシステムは、過激派取締りのために、公安のみが使うことができるものであり、その内容も極秘とされていた。しかし、それが外に少しづつ漏れ、やがて一般の人も知るようになったわけだが、そうなったらそうなったで、その後なし崩しになって、プライバシーや個人情報の問題などは霧散して、いまでは当たり前のように捜査に使われるようになってしまっている。盗聴もそうなる可能性がある」
ここで、鈴木宗男氏から、検察と密着し、検察リークを垂れ流すメディアの問題と、その背景にある記者クラブ制度についての批判。
さらに郷原弁護士から、判検交流と比較にならないほどの重大問題であるにもかかわらず、見逃されていることとして、本来、検察を指揮監督するべき役割である法務省が、実際には検察との出向者で占められ、検察と一体化している問題が提議された。
ここで質疑応答。
私は、村木さん事件で証拠改ざんをおこなった前田元検事が、確かに逮捕・有罪になったとはいえ、証拠隠滅罪という軽い罪であったことや、陸山会事件で偽の報告書を作成した田代元検事などにいたっては不起訴であったことなどから、検察の犯罪を監視したり調査したりする組織を作る必要があるのではないか、そのあたり、米国ではどうなっているのかという問題と、重大な冤罪事件などでは、それをきちんと検証する第三者委員会のようなものを作る必要があるのではないかということをお尋ねした。
最初の質問に関しては、郷原弁護士からの回答で、米国ではそもそも検察官が選挙制であり、検察が「組織」ではないということだった。なるほど、つまり、米国では「検察組織ぐるみ」で、問題を起こしたり、あるいは問題を起こした検察官を庇ったりすることは、制度的にあり得ないということですね。うーん、日本て特殊。
重大な冤罪の検証については、事故調のような形で、国会で開催することを日弁連などで要請しているのだが、裁判所が抵抗しているのだとか。というか、冤罪事件が起こっているということは、単に、無実の人をとんでもない不幸に陥れるというだけの問題ではなく、真犯人をみすみす取り逃しているということなんですが、なるほど裁判所は無謬でありたいわけですね。そういうメンツが、正義や真実より大事ということですね。
そのあたり、「裁判官弾劾や検察官適格審査会などがまったく機能していないという現状も含め、(この問題に真摯に取り合ってこなかった)政治家の責任」と、鈴木宗男氏が締めて下さいました。
まあ、それはそうなんでしょうが、それだけの問題ではないですよね。
ここにも立ちはだかる官僚の壁があるわけですが、政治家が真摯にやってこなかった裏には、もちろん、政治家を動かさない(あるいは、そういう政治家しか選べない)有権者の問題もあり、メディアの責任もあるわけです。
そういう意味では、「日本の司法を正す会は連敗です。問題の所在も内容もわかっていながら、それを変えることはできていない」と青木さん。
それもそうかもしれませんが、でも、声をあげていくことで、最悪を避けるとか、先に延ばしていくことはささやかながらできると思って、やっていくしかないですね。
だって、だからといってなにもやらなければ、それこそ、「やりたい放題」にされちゃうのですから。
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151208 院内集会「冤罪を生む刑事訴訟法の改悪を許さない」
151208_院内集会「冤罪を生む刑事訴訟法の改悪を許さない」
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