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ワタミ過労自死事件で画期的勝利和解〜母・祐子さん「これでやっと泣けるかも」 /松元ちえ
http://www.labornetjp.org/news/2015/1208watami
*写真=原告の森夫妻・厚労省記者クラブ
入社わずか2ヶ月で亡くなった社員の死は、「24時間365日死ぬまで働け」という会社の理念が引き起こした長時間労働が原因だった、などとしてワタミ株式会社と元代表取締役の渡邉美樹らを提訴した過労自死裁判が、丸2年の和解協議を経て終結した。遺族と、裁判闘争を支援した全国一般東京東部労組の全面勝利だった。
「渡邉氏は最初から労組を嫌っていました。私たちだけでは途方に暮れたことも、東部労組と仲間がいたおかげで大きく勇気づけられました」。裁判原告となった森毅さん(67歳)は、12月8日、厚労省での記者会見でそう語った。
東京地裁では、裁判官から「『和解成立』という言葉を聞くまでは決裂する覚悟で臨んだ」という森さんは、この日、和解協議に出席した渡邉氏からはじめて正式に謝罪の言葉を聞いたという。
2013年12月、渡邉氏は初出廷したが「道義的責任について謝罪」はしたものの「法的責任は司法の判断を仰ぐ」と全面的に争う姿勢をあらわにした。裁判や過労自死があったことで、ブラック企業のレッテル貼りをされたことなどを「風評被害」だと主張した。森さんは「謝罪の言葉を聞きながら、無性に腹が立った」と思いを語った。それ以後は、娘の美菜さん(当時26歳)は「勝手に死んだ」ものとされ、人格・人権を無視した主張が続いた。
それが一転したのは、2期連続で赤字経営を記録したことも大きな原因であり、ワタミは介護部門を売却せざるを得なくなった。居酒屋ワタミで従業員が過労自死に追いやられたたという労務環境はブラック企業の象徴とされ、ワタミに過労自死の責任を追及する世論こそが会社と渡邉氏を追い詰めたのだろう、と東部労組の須田光照書記長は話す。
和解では、会社と会社責任者に過労自死の法的責任があることを全面的に認め、謝罪させた。そのうえで、過労死・過労自死の再発防止に努めるよう義務づけ、再発防止策として労働時間管理の徹底やボランティア活動・研修などを実労働時間と認めることも要求した。
これら内容に関しては、和解成立10日後から3ヶ月間は会社ホームページの表紙に掲示し、それ以降は9ヶ月間「お知らせ」「新着情報」などの冒頭に掲載することとした。
また、未払い残業代や控除(給与天引き)額に加えて、損害賠償金1億3365万円(精神的苦痛の慰謝料4000万円を含む)の支払いも会社に合意させた。
過去最高に近い水準で和解できたことを受けて、森さんは「過労死撲滅運動で呼びかけつつ、いま苦しんでいる人たちに何らか寄与できればと願います」と話す一方で、渡邉氏や会社が実際に職場環境改善に努めるまで信用できないだろう、とも話した。
和解では、現社員のみでなく元社員の未払い残業代や不当な控除の支払いを合意させたことも含め、判決では得られない内容を承諾させたことの意義は大きい、と弁護団の玉木一成弁護士は言う。
ときに言葉を詰まらせた父・毅さんとは裏腹に、淡々と感想を語った母・祐子さん(61歳)は、裁判が終結したことへの意見を聞かれ、次のように話した。「できれば時計を戻したい。娘がワタミに就職をしたい、と言ったときに何としても止めるべきだったと後悔している。生きているうちに助け出してやれなかったことは、死ぬまで後悔するだろう」。そして最後に「これまで涙が出ることはなかったけれど、これでやっと泣けるようになるかも」。そう言って、はじめて笑顔を見せた。
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