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「首相「占領時代の仕組み変える」 改憲へ意欲:志は良だが、従米政治家たちに米国支配層が厭う改憲をやれるはずもなく」
http://www.asyura2.com/15/senkyo197/msg/653.html
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防衛費5兆円どう使う
陸上自衛隊が毎年8月に富士山の麓で行う総合火力演習、通称ソウカエンは入場券の抽選倍率が20倍を超す人気行事である。地響きをあげて進む重戦車。上空を舞うヘリ部隊。戦争ゲーム好きのミリオタ(軍事マニアのネット用語)でなくとも思わずわくわくしてしまう迫力がある。
30年近く前、北海道名寄市の陸自駐屯地を訪れたことがある。その頃、駐屯地の統廃合論が出ており、出迎えた陸自幹部は最北端の名寄がなぜ必要かをくどいくらい説明した。
「ソ連軍が宗谷海峡を渡ってきたら稚内からいったん退き、名寄の部隊が音威子府の峠で防ぎます。その間に上富良野と千歳の戦車部隊が北上します」
ソウカエンで見せているのはそういう戦争である。本土に上陸してきた敵軍を地上戦で押し返す。本当にそんな戦いが現在の日本で起きるのだろうか。
2007年の中越沖地震では新潟県にある自動車部品工場が被災して供給がストップ。自動車メーカーは長期間、操業停止に追い込まれた。よほどの離島を別にすれば、国内のどこかが戦場になった時点で日本経済は立ちゆかない。今後の日本の戦争は勝つにせよ、負けるにせよ、ミサイルを何発か撃てばおしまいだ。
となると、専守防衛の概念も変わらざるを得ない。敵軍が上陸してくるまで傍観している場合ではない。
米国の有力シンクタンクが最近、在日米軍に2隻目の航空母艦を配備するように提言して話題になった。自衛隊OBに「日本も空母艦隊を保有した方がよいのではないか」と聞いたら、「むしろ米軍と役割分担した方が効率的」との答えだった。
日本の得意分野は何か。そのOBによれば、自衛隊の哨戒能力は米軍をも上回るそうだ。日本は敵ミサイルを迎撃するイージス艦を6隻持ち、近海に配備しているが、広範囲に不穏な動きを察知するには偵察能力は一層高めた方がよい。
防衛省に今年できた防衛装備庁は11月、最適装備の導入に向けたプロジェクトチームを立ち上げ、無人偵察機RQ4グローバルホークや対潜哨戒ヘリSH60Kシーホークなど12品目を重点対象に選んだ。欲をいえば、オーストラリアとの共同開発を検討中の潜水艦をもっと増やしたい。
難点は新鋭装備はいずれも価格が高いことだ。防衛費はいよいよ5兆円時代に入る。岸信介の孫である安倍晋三首相は吉田茂流の軽武装路線はお気に召すまいが、アベノミクスも正念場を迎え、国内総生産(GDP)が日本の2倍を超えた中国と正面から軍拡競争するのはなかなかしんどい。
リストラ候補は本土決戦に備えた名寄の普通科連隊(旧軍でいう歩兵)のような部隊しかあるまい。災害対応や海外派遣を考慮しても陸自の15万人(全体の61%)はいささか多い。
1915年から16年にかけて中東のガリポリ半島で英軍とトルコ軍がぶつかった。第1次大戦で有数の激戦というだけでなく、陸海空戦力が初めて一体運用された戦いとして知られる。同大戦は戦争の姿を変えたが、これもその一つだ。
それから1世紀。再び戦争は変わりつつある。米軍は海空一体のエア・シー・バトルに向け、編成替えを進める。日本にも同じような名前の部隊はできたが、自衛隊全体を劇的につくり変えるには至っていない。
ソウカエンは近年、離島奪還作戦も披露するようになったが、ミリオタが喜ぶのは相変わらず10式戦車の華麗なスラローム射撃などである。航空決戦時代に大艦巨砲にこだわった旧軍の愚行を笑えるだろうか。
(編集委員 大石格)
[日経新聞12月6日朝刊P.]
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