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税制・TPP・労働規制改変で弱肉強食熱烈推進ー(植草一秀氏)
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6th Dec 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
12月6日のNHKが『日曜討論』で経済問題を取り扱った。
NHKの偏向ぶりは目を覆うばかりである。
日本の四半期GDP成長率は本年4−6月期、7−9月期と2四半期連続でマイナス成長になった。
米国の定義では、リセッション=景気後退である。
日本の定義でも、常識で判断すれば、景気後退である。
それをNHKは
「緩やかな回復が続く日本経済」
と報道する。
第二次大戦で連戦連敗の日本軍について、連戦連勝と報じた大本営と変わらない。
圧巻はTPPだ。
甘利経産相を含む5名が出演して、全員がTPP賛成論者なのだ。
NHKは事前に出演候補者に詳細なヒアリングを実施する。
誰がどのような考え方を有しているのかを完全に把握する。
その上で、出演者を決定する。
この資料に基づいて番組の進行台本を作成し、質問を振り当てる。
したがって、その質問に出演者がどのような発言をするのかを事前に把握したうえで番組を構成する。
国会議員が出演する場合には、このような台本作りができないので、
生放送の場合には、NHKにとって不都合な発言が飛び出す。
山本太郎議員などの発言がその典型例である。
事前にヒアリングを行い、NHKが創作したい番組に適する出演者を選ぶ。
完全な「やらせ番組」なのである。
出演者に「やらせる」のではなく、
NHKが仕組む方向に沿う発言を行う出演者を配置するのである。
これも「やらせ」の一種である。
放送法は、第4条に次の定めを置く。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の
放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
日本経済について討論するというのなら、
日本経済の現状について異なる意見を持つ論者を出演させるべきである。
消費税について異なる意見を持つ論者を出演させるべきである。
また、TPPについて論じるなら、TPPについて異なる意見を持つ論者を出演させるべきである。
アベノミクス万歳、消費税増税万歳、TPP万歳を演出する番組なら、
政府広報番組
政府礼賛番組
と断り書きをつけるべきである。
甘利経済相は、実質賃金がプラスに転じたと発言したが、
その最大の理由はインフレ率がゼロにまで低下したことだ。
アベノミクスは第一の矢で金融緩和によるインフレ誘導を掲げていた。
これが失敗したから、ようやく実質賃金がプラスになったのであり、
アベノミクスが失敗したことを認めたに過ぎない。
企業利益が増加しても労働者の賃金は増えない。
安倍首相が経営者に賃上げを要請していると言うが、そんなことで賃金は増えない。
とりわけ問題になっているのは中低所得者の所得低迷である。
労働者の3割しか大企業には務めていない。
その所得の高い大企業労働者の所得を伸ばすことが求められているのではない。
TPPの最大の問題であるISD条項について、
何も触れないのはNHKが報道責任を放棄していることの表れだ。
同一労働同一賃金も、言葉を唱えれば実現するというものでない。
最低賃金の時給1000円を、罰則規定付きで法定化するなら話は別だ。
「そうなるといいね」と発言したところで、何の意味もない。
討論番組に意味を持たせるには、
「意見が対立している問題について」、
「できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」
論者を出演させることが必要不可欠なのだ。
河野氏は自説を淡々と述べたが、NHKが河野氏を出演させた大きな理由は、
河野氏がTPP賛成だからである。
NHKは政府に対峙する強力な論者を絶対に出演させない。
公共の電波の不正な利用を放送受信者は抗議するべきである。
第二次安倍政権が発足して3年の時間が経過するが、日本経済はまったく浮上していない。
2013年1−3月期から2015年7−9月期まで、11の四半期が経過したが、この11四半期のうち、
5四半期がマイナス成長である。
プラス成長になったのは6四半期に留まっている。
とりわけ、2014年4−6月期からの6四半期では、
プラス成長は2四半期
マイナス成長が4四半期である。
この経済の、どこが
「緩やかな景気回復の持続」
なのか。
「不況が続く日本経済」
が真実の姿だ。
人々が騙されている要因は株価推移にある。
日経平均株価は、2012年11月14日の8664円から
2015年6月24日の20868円にまで上昇した。
株価は大幅に上昇した。
理由は企業収益が拡大したことだ。
経済全体がゼロ成長を続けて、まったく拡大していないときに、
企業収益が大幅に拡大したことは何を意味するのか。
それは、労働者の所得が減ったことに他ならない。
労働者の所得が大企業の所得に移転された。
企業収益は増えて株価は上昇した。
その一方で、労働者の所得は減り、生活は一段と苦しくなったのだ。
この日本経済の真実を伝えるのが、公共放送の役割である。
政府代表と茶坊主に、事実に反する説明をさせて、
真実を伝えないのでは、公共放送として失格である。
このなかで、いま論じなければならない二大テーマが税制とTPPだ。
NHKは税制とTPPを取り上げたが、これもまた、いかさま討論である。
財務省は軽減税率に反対している。
だから、軽減税率に積極的に賛成する論者を出演させない。
軽減税率で税制が複雑化するのも事実だし、中小企業に大きな事務負担も発生する。
また、軽減税率を適用する品目と適用しない品目の線引きは難しく、
その線引きが新たな利権の温床にもなる。
その点に問題があるのは事実だが、より根本的な問題は、
財政活動の財源をどのように求めるのかという、税制全体のあり方の論議にある。
本メルマガで指摘してきているように、日本の税収構造は過去25年間に激変した。
25年前の税収構造はこうだった。
1989年度から91年度ころは、
所得税 27兆円(91年度)
法人税 19兆円(89年度)
消費税 3兆円(89年度)
だった。
これが2015年度は
所得税 16兆円
法人税 11兆円
消費税 17兆円
になっている。
この意味を考える必要がある。
法人税と所得税が大減税されて、消費税だけが突出して大大々増税されてきたのだ。
この消費税をさらに大増税する話が進められている。
政府が政府税制調査会報告書に
「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」で、
「日本の法人の税および社会保険料負担が国際比較上、「高いとは言えない」
と明記したのは、2007年11月のことだ。
その、法人税の実効税率が次のように引き下げられ続けてきた。
2011年度 39.54%
2012年度 37.00%
2014年度 34.62%
2015年度 32.11%
そして、これが、
2016年度 29.97%
に引き下げられる。
その財源としては、赤字法人などに対する外形標準課税を強化するのだという。
これほどの弱肉強食推進があるだろうか。
庶民の生活は苦しくなるばかり。
その庶民から、なたね油を絞り取るかのように、消費税をむしり取る。
大企業の内部留保は蓄積される一方なのである。
この税制のあり方の根本を糾弾する論者が登場しないで、税制の論議など成り立ちようがない。
民法の番組ならまだしも、NHKがこのような放送を続けることは許されない。
放送法を一刻も早く改正して、放送受信契約を任意制に移行させるべきだ。
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