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国の主権を損なわないISD条項は存在しないー(植草一秀氏)
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5th Dec 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
12月5日付の北陸中日新聞の北経随想というコラムに横川善正氏が
「TPP抜けた視点」
と題する論考が掲載された。
横川氏は金沢美術工芸大名誉教授でもあるが、
大学退職後は金沢市郊外で1ヘクタール余の水田でコメを作る農民でもある。
横川氏がTPPが農業に与える影響について、非常に大切な指摘をしている。
横川氏はこう記述する。
「環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意のニュースを聞き、
日本の農が育ててきた食の安心と安全のみならず、
稲作から生まれた歴史的な祭りや伝統文化の喜び、
それを支える地域社会の共同性、
自然から学ぶ創造性や畏怖や謙虚さという「こころの知恵」までもが危うくなったと感じる。」
TPPは国民生活の根幹を直撃する。
食の安心・安全が破壊され、
食料の自給体制が一段と崩壊することになる。
医療の自由化公的保険医療の劣化を招き、
医療の分野に救いようのない格差が持ち込まれることが確実である。
日本の諸制度、諸規制であるのに、日本国民の決定権、主権が奪われる。
工業製品の関税は、すでにほぼ撤廃されており、TPPによって日本が得る利益はほとんどない。
唯一の利益と見られる自動車分野でも、
米国の関税率引き下げは進行しないことが協定で確定するのである。
TPPは日本の主権者にとっては、文字通り百害あって一利のない協定である。
こうしたことがTPPの根本問題ではあるが、問題はそれだけにとどまらない。
横川氏は、TPPの持つ、より重大で危険な側面を的確に指摘している。
日本の文化、伝統、社会が、TPPによって根底から破壊されることを憂う。
農業は単なる産業ではない。
東大教授の鈴木宣弘氏は、著書
『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』
(文春新書)
で、TPPによって日本の農業が破壊されることの意味を多面的な視点から論じた。
鈴木氏は同書の冒頭で、
「今だけ、金だけ、自分だけ」
の風潮が強まっている日本の現状を批判した。
鈴木氏は、
「食だけではない。
これ以上、一部の強い者の利益さえ伸びれば、
あとは知らないという政治が強化されたら、
日本が伝統的に大切にしてきた助け合い、支え合う安全・安心な社会は、さらに崩壊していく。
競争は大事だが、あまりにも競争に明け暮れる日々は人心も蝕み、人々は人心共に疲れ果てる。」
とあとがきで述べた。
日本社会の良き伝統、文化が破壊されることを私たちは憂う。
鈴木氏は、農業の持つ「多面的機能」の重要性を併せて強調する。
農業には、国土保全機能、生物多様性保全機能、景観保全機能などの重要な機能がある。
「目先の金」
には代えられない重要な価値
を、私たちは見落とすべきではない。
多面的な機能である、
国土保全機能、生物多様性保全機能、景観保全機能
ももちろん重要である。
しかし、問題はその次元にとどまらず、
「日本が伝統的に大切にしてきた助け合い、支え合う安全・安心な社会」
が、完全に崩壊してしまうことがより深刻な問題であると思われる。
横川氏は、
「国の農業補助は、食糧自給拡大のみではなく、
農業従事者が果たす社会の安穏と国土の美化を念頭に行われてきた」
と指摘し、
「伊などの老人ホームで高齢者の自立度が高いのは、
農を生きがいとこころの糧として日常生活圏に取り入れているからだ」
と記述する。
安倍政権は国民を騙すような手口で、公約違反のTPPを推進しているが、
条約を批准させないように、主権者が行動を拡大させなくてはならない。
TPP交渉は10月上旬に、米国アトランタでの閣僚級会合で大筋合意したと報じられている。
しかし、合意文書は日本語で作成されていない。
英語、フランス語、スペイン語だけである。
日本政府は、TPP交渉に早期に参加して、
TPPの内容に影響力を行使すると主張してきたのではないのか。
合意内容を日本語の正文として確定しなければ、
日本国民に正確に知らせることも、日本の国会で審議することもできないはずだ。
日本語文書を正文として作成することを求めなかった日本政府、
あるいは、求めたけれども拒絶された日本政府の責任を国会は厳しく追及しなければならない。
日本語の正文がないなら、日本はTPPを拒絶するべきだ。
「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、
国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること」
は国会決議もなされている。
また、
「交渉に当たっては、二国間交渉等にも留意しつつ、
自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、
それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること」
も国会決議に明記された。
日本政府は11月5日にTPP合意文書の概要を公開した。
これは、概要を「翻訳」したもので、合意文書概要の「正文」ではない。
日本語の「正文」が存在しないのである。
しかも、合意文書は2000ページが及ぶものであるのに対し、翻訳は、わずか97ページのものである。
国会決議の
「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、
国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること」
に反していることは明白だ。
TPP交渉差止・違憲訴訟
が提起され、すでに2回の口頭弁論が開かれた。
公判には、400名の市民が結集し、TPP阻止を求める主権者の意志が強固であることが確認された。
第2回期日においては、原告代理人が、大筋合意文書の翻訳文について、
いつまでに政府が公表するのかを問い詰めた。
政府代理人は、12月までに状況を報告すると回答したが、
その後の回答で、2月までの公表しないとの通告を行ってきた模様である。
合意文書の日本語翻訳すら開示されずに、どのように、
「国会に速やかに報告する」
「国民への十分な情報提供を行い」
「幅広い国民的議論を行うよう措置する」
ことが可能になるのか。
日本政府の怠慢は、徹底的に糾弾される必要がある。
本来は国会の責務だが、国会が堕落政府与党で占拠されてしまっている現状では、
主権者が直接行動を拡大してゆくしかない。
TPPの最大の欠陥はISD条項にある。
ISD条項は、後進国との協定に際して、投資する側が、
不整備の法体系によって損失を蒙らないように、
その設定が考案されたもので、
法体系が整備されている国との協定において設定されるべきものでない。
ISD条項を受け入れるのは、
「わが国の法体系は未整備である」
ことを認めることに等しい。
日本の諸制度、諸規制は、日本が決める。
外国投資家が日本の制度設計で被害を受けたと訴えるときにも、
決定を下す権限は日本国が保持するべきなのである。
日本の法体系のなかで判断し、日本の国家主権を行使して最終決定を下す。
当たり前のことである。
ISD条項は、これを根本において否定する条項なのである。
国会決議は、
「濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと」
と、逃げ道を作る言い回しにされた。
当初の自民党公約は、
「国の主権を損なうようなISD条項には合意しない」
だった。
ISD条項は、「国の主権を損なうもの」だから[合意しない]という意味だったが、
国会決議は、ISD条項に、あたかも、「国の主権を損なうISD条項」と
「国の主権を損なわないISD条項」があるかのような言い回しにされた。
姑息な安倍政権が工作したことは明白である。
国の主権を損なわないようなISD条項は存在しない。
ISD条項は、その根本的な性格が「国の主権を損なう」ものなのである。
日本はISD条項が盛り込まれているTPPには、絶対参加してはならない。
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