http://www.asyura2.com/15/senkyo197/msg/570.html
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いわゆる「130万円の壁」に関する新たな政策だが、記事に書かれているような仕組みが真顔で論じられていることにびっくりさせられる。
賃上げを何とか推し進めたいという政府の気持ちはわかるが、政府官僚たちの頭のなかは大丈夫なのかと心配になる。
「130万円の壁」問題は、他の問題ともども、給付付き税額控除や家族合算課税など、個人所得税と社会保障(保険料と受給)の全面的な改変を通じて解決すべきであり、小手先対応の“バラマキ”は、効果がないだけでなく法的平等性を歪めることになる。
記事に書かれている新政策の概要を説明し、問題点を指摘すると、
1)問題
年収が130万円を超えると、それまで徴収されなかった社会保険料(約20万円)の納付義務が発生し手取りが減るため、パート労働者は年収が130万円を超えないよう就労時間を調節する。
事業者も、就労者に社会保険料の納付義務が発生すると、保険料のおよそ半分が負担増になる。
このように労使双方に阻害要因があるため、パート就労の需要と供給が増加しても、一人ひとりが労働時間を抑制するため、社会保険料収入が伸び悩むだけでなく、特定分野で人手不足も起きる。
2)解決策
この問題を解決するため、政府は、雇用保険特別会計を原資とし、就労者の手取り減少と事業者の負担増を少なくするため、事業者に一定の条件を付けて補助金を給付する政策を考えた。
3)ぶっちゃけ
この政策は、賃上げ分も社会保険料の事業者負担分も補助金で渡すから、事業者は、社会保険料を徴収されてもパート労働者の手取りが“それほど”減少しないよう賃上げをしてくれというものである。
4)パート就労者にメリットはあるのか?
転載する記事は、次のように例を示し新政策の説明を行っている。
「現在、時給1000円で週20時間働くと年収は104万円。社会保険料もないため手取り額も同じ104万円だ(税金は計算の対象外とした場合)。新制度の適用を受け1030円の時給で週25時間働く場合、年収は約30万円増の133.9万円。社会保険料の19.4万円を引いた114.5万円が手取り額となり、104万円を上回る」
まず、比較にならないものを比較して“上回る”と言うのは、意味がないどころか、詐欺的言動になると言っておく。
なぜなら、
就労時間が週あたり5時間増・1年で260時間(5時間×52週)も増えているから、それだけ働けば、賃上げなしの時給1000円でも130万円の年収になる。
この年収は「130円の壁」を超えていないから、手取りは130万円のままで、新制度で想定する手取り114.5万円より15.5万円も多い。
このような仕組みなのに、この政策で「130万円の壁」を壊すことができると思っているとしたら、政府の頭脳崩壊を心配する。
4)誰が得をするのか?
記事によると、一定の条件を満たせば「パート労働者1人あたり20万円、賃上げ率に応じて2万円以上の補助金を支給」とあるから、3%賃上げの場合、冒頭の図とは違い年間23万円の補助金が事業者に渡ると思われるが、記事に沿って22万円の補助金とする。
時間あたり30円の賃上げだから、事業者は、年間1300時間で39000円の人件費増になる。加えて社会保険料の半分19.4万円を負担するためで、合計で23.3万円の負担増になる。
そのうち22万円は政府からの補助金なので、事業者の実質負担増は1万3千円である。
まず、新たに社会保険料を納付するようになった人の保険料は、戻ってくるが、政府が全額負担することになる。
次に、事業者は、年間わずか1万3千円の人件費増で、260時間分(1300時間−1040時間)の労働力を手に入れることができるという仕組みである。(260時間分の労働力は時給換算50円で購入)
一方、就労者のほうは、3)で説明したように、時給据え置きで週5時間労働時間を
増やしたほうが、新政策より最終の手取り年収が得である。
消費税や軽減税率の詐欺に騙されてしまうのとは違いすぐに気づくと思うが、意味のないデタラメな説明で就労者に労働時間を増やさせ、事業者がただ同然の労働力を手に入れることができる補助金を支給する仕組みでしかない。
雇用保険特別会計を財源にそのような政策を実施するのは、あまりに筋が悪い。
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パート就労拡大へ企業に補助金 「130万円の壁」対策
政府、19年度までの4年間
2015/12/5 1:29
政府はパートで働く主婦などが労働時間を増やすための支援をする。就労時間の延長と賃上げを条件に企業に補助金を配り、社会保険料の負担を和らげる。対象は20万人程度のパート労働者になる見通し。社会保険料負担を懸念して働く時間を減らす動きを抑え、人手不足の緩和につなげたい考え。ただ2019年度までの一時的な政策となる。専業主婦世帯などを優遇する配偶者控除の見直しを含む税制と一体の本格改革が急務だ。
厚生労働省や財務省などが調整しており、塩崎恭久厚生労働相が7日の経済財政諮問会議で表明する。
年収が130万円を超すと年金や医療の保険料が20万円近くかかるようになる。働く時間を抑制する「130万円の壁」と呼ばれる。16年10月から従業員501人以上の企業では厚生年金や健康保険の加入基準が変わり保険料が発生する年収基準は130万円から106万円に下がる。諮問会議は「人手不足が一層深刻になる」と厚労省に対応を求めていた。
今回の対策は16年4月から19年度までの4年間実施する。(1)大企業で2%、中小企業で3%以上の賃上げ(2)パート労働者が働く時間を週5時間以上延長――などが条件。労働時間の拡大に対してパート労働者1人あたり20万円、賃上げ率に応じて2万円以上の補助金を支給する。
社会保険料は労使折半で、パート労働者の収入が130万円を超すと、企業側にも社会保険料の負担が発生する。企業は配られた補助金で社会保険料の負担増を抑えられる。労働者も賃上げ分で社会保険料の負担を抑えられ、手取り収入の減少を緩和できる。収入に比例して受け取る年金も受給できるようになる。
現在、時給1000円で週20時間働くと年収は104万円。社会保険料もないため手取り額も同じ104万円だ(税金は計算の対象外とした場合)。新制度の適用を受け1030円の時給で週25時間働く場合、年収は約30万円増の133.9万円。社会保険料の19.4万円を引いた114.5万円が手取り額となり、104万円を上回る。
補助金の支給は都道府県ごとで1事業所あたり最大600万円が上限になる。財源は特別会計の雇用保険を活用し支給額は4年間で約400億円を見込む。
ただ、今回の給付金事業は19年度までの緊急対策との位置付けだ。対象となる20万人は約1600万人のパート労働者の1%強にすぎない。「雇用保険の積立金が余っているなら保険料を引き下げる形で企業や家計の負担を減らすのが筋だ」との議論も根強い。
専業主婦世帯の就労を阻む要因としては、年収103万円以下の専業主婦世帯の税負担を軽くする配偶者控除の見直しも課題となっている。政府・与党は配偶者控除見直しなどの所得税改革を来年以降に先送りする。
政府は企業が独自に支給する配偶者手当の見直しも促す構えだが、税と社会保障の一体改革に基づく制度の見直しを進めない限り企業側の動きも停滞しかねない。
▼130万円の壁 パート労働などの収入が130万円を超えると、正社員と同じ給与所得者として位置づけられ、厚生年金や健康保険など社会保険料がかかる。主婦層が手取り額を減らさないように労働を抑える要因とされ「130万円の壁」と呼ばれる。収入が103万円を超えると、専業主婦がいる世帯の所得税を軽くする配偶者控除が受けられなくなる「103万円の壁」もある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS04H5T_U5A201C1MM8000/?dg=1
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