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アベノミクスとは大資本のみクスッのことー(植草一秀氏)
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1st Dec 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
安倍政権の経済政策はアベノミクスと表現されているが、
アベノリスク、アホノミクス、アベコベノミクスなどの呼称も併せて用いられている。
権力にすり寄る御用マスメディアが、アベノミクスが成功しているかのように報道するから、
市民が実態と真実を把握できない。
アベノミクスを客観的に評価すると、アベノミクスが失敗していることは明白であり、
また、極めて有害な内容を含んでいることも明らかである。
アベノミクスが失敗であると言えるのは、
アベノミクスとして提示された当初の課題がまったく解決されていないからである。
アベノミクスは当初、三つの政策を掲げた。
三本の矢などと呼ばれている。
金融緩和強化
財政政策発動
成長戦略
である。
金融緩和強化は、インフレ誘導を実現するための方策として提示されたものである。
安倍政権は、この方針を明示して日銀人事に介入した。
政治が日銀人事に介入することは、本来的に望ましいことではない。
日銀幹部人事は5年に1度行われるが、たまたまそのときに政権の座にある者が、
個人的な趣味嗜好で日銀人事を支配すると、金融政策運営の安定性、継続性が阻害される。
この問題は横に措くとして、安倍政権は日銀人事にまで介入して、
インフレ誘導の政策を推進することを宣言した。
しかし、インフレは実現せず、同時に、インフレ誘導政策が間違った政策であることが明らかになった。
2015年9月の消費者物価上昇率は前年比0.0%で、
インフレ率を前年比2%以上にするという公約はまったく実現しなかった。
ただし、これは国民にとっては不幸中の幸いだった。
インフレ率が上昇していた時期は、インフレの分だけ実質所得が減少した。
主権者は、より深刻な状況に追い込まれていたのだ。
インフレ誘導が失敗して、インフレ率がゼロに回帰したために、
労働者の賃金伸び率が、ようやくプラスに回帰しつつある。
「アベノミクスが失敗して国民は助かった」
というのが実情だ。
インフレ誘導は企業に利益を付与する政策であって、
労働者、消費者、生活者には不利益を付与する政策なのである。
財政政策は、2013年は補正予算で日本経済を支える方向に進んだが、
2014年は消費税大増税で、日本経済を転落させる方向に進んだ。
日本経済は2014年に不況に陥り、2015年後半に再び不況に転落している。
日本経済を浮上させるために財政政策を活用するという方針は、
第2次安倍政権の発足当初しか、実行されなかったのだ。
第三の矢とされる成長戦略は、まだ本格的には動いていないが、その基本方向が間違っている。
「成長」は大企業利益の「成長」であって、国民所得の「成長」でもないし、国民生活の「成長」でもない。
企業の利益だけを「成長」させること。
これが「成長戦略」の核心である。
だから、「成長戦略」が実行されることは、国民にとっては不幸なことなのだ。
アベノミクスによってもたらされた
『日本経済の真実』
『不都合な真実』
を象徴しているのが、
株価の上昇とGDPの停滞
である。
アベノミクスが始動した2012年11月以降、日本株価は大幅に上昇した。
その最大の理由は、企業収益の拡大である。
他方、日本のGDPはまったく成長していない。
「成長戦略」を看板に掲げているのに、肝心かなめのGDPが成長していない。
2015年も4-6月期と7-9月期が連続してマイナス成長になった。
米国流の定義に当てはめれば、景気後退に転落している。
GDPが減っているのに、企業収益が拡大しているということは、
労働者の所得が大幅に減っているということを意味している。
主権者である国民、生活者、消費者、労働者の所得が圧縮され、
その圧縮された部分が大企業の利益に付け替えられているのである。
この真実を知ったときに、どれだけの国民、労働者、主権者が、
「それでも安倍政権を支持する」
と述べるだろうか。
主権者は、この日本経済の真実を知ったうえでアベノミクスの評価をしなければならない。
本メルマガでも記述してきたが、この安倍政権が法人税の減税を検討し、
他方で消費税の再増税を検討している。
法人税については、実効税率を引き下げる一方で、
赤字企業に対する課税強化の方針が示されている。
しかし、日本企業の法人税および社会保険料負担は2007年の段階で、
すでに、国際比較上高くはないとされていた。
日本政府が税制調査会で財政資金を投入して行った調査の結果として、この判断が示された。
ところが、その後に法人税減税が相次いで実施されてきた。
法人税減税を推進する理由は、
安倍政権がグローバル強欲巨大資本の手先であるというのが、
一つの理由だが、もう一つの理由は、経済界に飴をしゃぶらせて、
消費税増税反対の世論を封じ込めるということである。
経済界は消費税増税が単独で実施されるなら、消費税反対を表明するだろう。
しかし、経済界が消費税反対に回ると、反対論に勢いがつく。
日本のメディアは、その収入源の大半を経済界に依存している。
経済界が消費税増税反対で足並みをそろえれば、
メディアの論調が消費税増税阻止の方向に傾く恐れが高い。
そこで、財務省と政府は、経済界を消費税賛成陣営に引き込むために、
法人税減税を打ち出しているのである。
安倍政権の「成長戦略」の柱の一つは、労働規制の撤廃である。
労働規制の撤廃とは、労働者の身分の安定化と処遇の改善を辛うじて
支えてきた各種規制や制度を破壊することである。
この政策が段階的に実施されてきた結果、
日本社会は目を覆うような格差社会に転落してしまったのである。
日本ではいま、新しい貧困問題が大きな広がりを示している。
出生率が低下している最大の理由は、若い人の貧困が広がり、
とてもではないが、結婚、出産の夢を実現できない、との思いを抱く人が激増していることにある。
格差大国日本
になってしまった。
その「格差大国日本」を是正して、
「共生社会日本」に作りかえることが求められているときに、
安倍政権は真逆の方向に進路を定めている。
そして、生活苦にあえぐ所得の少ない階層にとどめの一撃を食らわせるかのように、
消費税率10%の実現が、淡々と推し進められようとしている。
すべてが逆なのだ。
いま必要なことは、グローバル強欲巨大資本の利益を極大化させることではなく、
日本のすべての個人、労働者の所得環境を改善することなのである。
労働者の権利の保障が求められている。
また、税制においては、法人課税と累進税率の下にある所得課税を強化する一方、
消費税を抑制する方向に税制改正の方向を定めるべきだ。
消費税について、軽減税率を設定するのであれば、生活必需品は非課税とするべきである。
他方で、すべての国民に一定の所得を保証する、ベーシックインカム制度を検討するべきである。
大資本を優遇して労働者の権利を抑圧するのか。
それとも、大資本や富裕者の負担を重くして、中低所得者の生活支援を強化するのか。
どちらの方向を選ぶのかが問われている。
安倍政権は、明確に前者のスタンスを提示している。
日本の主権者多数が、この路線を選択するのなら、それが日本の選択ということになるだろう。
しかし、日本の主権者多数が、後者を選択するなら、
その政策を実現できるように、政治の現状を変える必要がある。
重要なことは、考え方を明示して、国民に選択を迫ることだ。
国民が考えて、国民が決める。
これが国民主権の下での政治的意思決定の基本とされるべきである。
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