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米国の「テロとの戦い」は「永続戦争」を意味するー(田中良紹氏)
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28th Nov 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
米国の同時多発テロ事件から14年、今度はパリを舞台に同時多発テロが起きた。
20世紀の戦争は第一次世界大戦が4年、第二次大戦が6年、
泥沼と言われたベトナム戦争でも12年で収束したが、
21世紀の「テロとの戦い」は14年経っても終わらない。
終わらないどころか収束させる出口がない。世界はまるで「永続戦争」の時代に入ったようだ。
14年前に始まる「テロとの戦い」は米政権内のネオコン(新保守主義)が主導した。
ネオコンは元々「共産革命の世界輸出」を主張する
トロツキストが転向して作った政治イデオロギーである。
伝統的保守主義が急進的な改革を望まないのに対し、
自由と民主主義を世界に広げる事を目的に積極的な外交・軍事政策を採用する。
国連には批判的で国連の主導する「多国籍軍」ではなく、
国連の影響力が及ばない「有志連合」を組織して「テロとの戦い」を行う。
軍産複合体や国防総省と利害が近くその競争相手となるCIAに批判的である。
またユダヤ系が多い事から共和党の親イスラエル政策を強く支持し、
カソリックの総本山バチカンに対しても民主化の必要を主張する。
その勢力がブッシュ政権にアフガン戦争とイラク戦争を決断させ、
中東の独裁政権を打倒して民主主義政権を誕生させようとした。
当時、米政権内部でよく語られたのは、第二次大戦に勝利して日本を占領し、
民主化できたという成功話である。
テロリストが米本土の世界貿易センタービルに航空機を突っ込ませたやり方は、
日本軍による真珠湾奇襲攻撃とカミカゼ特攻隊を連想させ、
その野蛮な日本を占領した米国が民主化に成功したのだから、
アフガニスタンもイラクも民主化できるというのである。
フーテンは、米国が天皇制を利用して統治に成功した日本とアフガンやイラクは
国情が違うと思ったが、ブッシュ大統領は日本を民主化した成功例をしばしば口にした。
そして案の定、アフガンもイラクも米国の思い通りにならなかった。
それどころか「テロとの戦い」はイスラム内部の宗派対立を激化させ中東の混乱を収拾不能にした。
ブッシュを支持した米国民は終わらない戦争に嫌気がさし、
米軍撤退を主張して選挙に立候補したオバマを大統領を選出する。
しかし相手が国家ではない戦争を収束させるのは容易ではない。
オバマは軍を撤退させる代わりにCIAを使い
テロリストのリーダー格を抹殺する事で戦争を終わらせようとした。
ネオコンとは真逆の手段を採用したのである。
またバチカンのローマ法王を介してキューバとの国交正常化を図り、
イスラエルと対立しながらもイランとの交渉を進めたやり方もネオコンとは真逆である。
ネオコンのやり方は一掃されたかに見えたが、
しかしネオコン勢力が米国から消滅した訳ではない。
むしろ政権に揺さぶりをかける存在としてネオコン路線は見えない形で継続されてきた。
それが「民主化のドミノ」という形をとり、旧ソ連圏や中央アジア、中東などで展開された。
ウクライナに軍事クーデターを起こしてロシアのプーチン政権を揺さぶり、
それによって接近しつつあったロシアとEUとに楔を打ち込み、
また一連の「アラブの春」の背後にもネオコン路線があるとフーテンは見ている。
その中でオバマ政権に最も打撃を与えたのはCIAのスノーデン容疑者による
秘密工作の暴露である。彼はオバマ政権とは相容れない考えの持ち主で、
ネオコンの思想に近いとフーテンは見ているが、
軍ではなくCIAに頼っていたオバマ政権にこの暴露は痛かった。
しかもロシアに亡命した事で世界の二大軍事大国である米ロが緊張関係に陥る。
「アラブの春」はシリア内戦を引き起こし、
米国のイラク戦争から生まれた「イスラム国」はその内戦に乗じて成長し、
さらにトルコからシリア、イラクの一帯ではそれ以外にも米国から提供された武器で
戦闘を繰り広げる様々な武装組織が存在する。
オバマ大統領は米軍を中東から撤退させ、外交の重心をアジアに移そうと考えていたが、
それが出来なくなった。しかも「イスラム国」のテロが欧州に飛び火すると、
欧州各国と共にロシアが「イスラム国」攻撃に介入し、
オバマ政権と疎遠になったイスラエルと接近するなど中東への関与を強めだした。
世界は第三次世界大戦前夜を思わせるような状況である。
そこでフーテンが思うのは、この状況こそがネオコンの思惑通りではないかということだ。
アメリカ同時多発テロの後、日本占領に成功した例を根拠に米国は戦争を始め、
フーテンはそれに疑問を抱いたが、
今になって考えると、ネオコンは占領を成功させようとは思っておらず、
むしろ混乱が深まる事を計算していたかもしれない。
軍需産業にとって冷戦終結は売り上げを大幅に減少させた。
それを回復させるのに「テロとの戦い」は絶好のチャンスである。
そして世界が混乱するほど、
その後にネオコンの考える「新世界秩序(ニュー・ワールド・オーダー)」が
出来上がると考えている可能性がある。
ネオコンが理想とする自由と民主主義の世界を作るにはいったん世界を破壊する必要、
つまり「革命」を考えているかもしれないのである。
しかし破壊の後に理想が実現される保証はどこにもない。
21世紀の14年間を見てきてフーテンは「テロとの戦い」が出口のない「永続戦争」を意味すると
思うようになった。
その「永続戦争」に米軍撤退を公約して誕生したオバマ政権まで巻き込まれてしまった。
そして「永続戦争」の米国に日本の安倍政権はどこまでも追随していく構えなのだ。
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