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大阪都構想否決に内紛劇、それでも橋下維新がこれほどまでに強いのはなぜか? 写真右から、大阪ダブル選挙で街頭演説する大阪維新の会の橋下徹代表、大阪市長に初当選した吉村洋文氏、大阪府知事選で再選した松井一郎氏 Photo:アフロ/読売新聞
大阪ダブル選挙圧勝! 橋下維新「恐るべき強さ」の謎を解く
http://diamond.jp/articles/-/82075
2015年11月24日 松井雅博 [政治ジャーナリスト] ダイヤモンド・オンライン
11月22日、大阪に激震が走った。
この日投開票された大阪府知事選挙及び大阪市長選挙のいわゆる「大阪ダブル選挙」において、大阪維新の会の公認候補が圧勝したのだ。大阪府知事には現職の松井一郎氏が再選、橋下徹氏の後任となる大阪市長には新人の吉村洋文氏が選出された。
半年前、5月17日に維新の看板政策である「大阪都構想」を問う住民投票が行われたが、結果は否決。僅差とはいえ、大阪市民からの厳しい審判を受け、橋下徹元大阪市長は政界引退を表明。その後の維新の漂流と内紛劇につながった。
一方、相手候補は自民・民主・共産が推薦または支持する「非維新連合」。維新にとっては決して楽な戦いではなかったはずだが、大阪での根強い支持を全国へ見せつける結果となった。
それにしても、なぜ大阪維新の会はここまで根強い支持を受けるのだろうか。都構想が否決され、幾多の泥仕合を展開しても、なお支持されるカラクリは何なのか。客観的に考えれば、実に不思議な話である。
そして、これから再び4年間の任期を得た大阪のリーダーたちは、次に何を目指すべきか。この勝利が日本全体に及ぼす影響は何なのか。
本稿では、前回の大阪ダブル選挙からの維新をめぐる得票数に注目し、大阪の有権者の投票行動を分析しながら、今回の「勝利が持つ意味」について徹底的に考察する。
まず、大阪市について分析してみよう。
大阪市ではここ最近、頻繁に選挙が続いていた。2011年に前回の大阪ダブル選挙が行われたが、翌年には衆議院議員総選挙が行われ、2013年に参議院議員選挙が続き、2014年には突然橋下徹元市長が辞任を表明した大阪市長選挙(出直し選挙)と衆議院議員選挙、そして2015年は統一地方選挙を経て大阪都構想を問う住民投票があり、今回の大阪市長選挙が続いた。
多額の税金をかけて行われる選挙であるから、データは有権者の想いを汲み取るためにぜひ有効に活用しなくてはいけない。大阪市民の投票行動の推移をわかりやすく示すために、一例として、右のグラフを作成した。
このグラフを見ていただければわかるように、4年前、橋下徹元市長に投票した人たちは、マクロの視点で見れば、住民投票ではほとんどそのまま都構想に賛成していたと言える(もちろんミクロの視点で見れば交錯しているケースもあるだろうが)。そしてこの結果は、いわゆる慰安婦発言などの問題があっても、実は大阪市の維新支持者はほとんど離れなかったことを意味している。つまり、橋下徹氏のキャラクターに対して反感を抱いても、政策については評価しているのではなかろうか。
■筋金入りの維新ファンを動かした大阪市長選の「壮大な奇策」
一方で、都構想が否決された原因は、「維新支持層が離れた」のではなく「反対派が増えた」ことによる。すなわち、票の上乗せ分はすべて「反対」なのである。
この結果を総括すれば、大阪における維新支持の人たちは「筋金入りの維新ファン」ということになる。したがって、維新としてはこの筋金入りの維新ファンをより固くするとともに、反対派の有権者が選挙に来ないよう、または反対派が分裂するような戦略を打てばよいことを意味している。
たとえば、最近維新が連日マスコミを騒がせていた「お家騒動」も、一見呆れた内ゲバ劇に見える。だが、筆者は最近ダイヤモンド・オンラインで発表した論考「ビジネスにも役立つ!? 橋下徹の維新の党批判に学ぶ『伝え方の極意』」の中で、「橋下徹市長にとって正論はどうでもよく、ただなんとなく「戦っている雰囲気」だけを意図的に人々へ伝えているように見える」と論じたが、戦い方としては「まさにこれでよい」のである。
「東京と戦う大阪」「偉そうな国会議員と対峙する地方リーダー」という印象を創り出すことで、「東京 vs 大阪」「国 vs 地方」という対立軸を浮き立たせ、「筋金入りの維新ファン」の心をさらに引きつける。同時に、共産党候補を応援した維新の党の議員を徹底的に叩き、民主党との合流については新党を創ってまで拒否しつつ、官邸に近づいて見せることによって、「自公と民共は相いれない」というイメージを人々に植えつけ、敵陣の自・民・共の3党合作を見事に崩壊させた。実際、柳本候補は前回の平松氏の得票数も下回り、都構想に反対した有権者の多くを引きつけることができなかった。
このイメージ戦略によって大阪市長選挙を、見事勝利に結びつけることができたのである。大阪市においては、投票率が下がった方がむしろ維新には有利だったということだ。なかなか既存の政治家にはできない壮大な「奇策」である。
次に、視点を広げて大阪府について見てみよう。
今回、大阪府知事選挙は現職の松井一郎氏が制した。この結果を「やっぱり現職は強い」「大阪では維新は根強い支持を得ている」という安易な言葉で片付けるのは思考停止である。
この勝利の裏にも、計算づくの戦略が隠されているのである。
■大阪府での維新圧勝のナゾ 「200万」を裏付ける3つの仮説
大阪府における有権者の投票行動の推移は、右のグラフのようになる。
4年前の大阪府知事選挙では、松井一郎氏が200万票以上を獲得して圧勝した。この数字だけを見れば、あたかも「維新」が単独で強力な支持を受けているように思える。
だが、その約1年後に行われた衆議院議員選挙における比例代表政党別得票数を見てほしい。これらを比較すると実に面白い結果が見えてくる。実は、維新投票者数は約146万人であり、200万人には及ばない。
一方、自民・民主の支持者は合わせて約120万人となり、この数字は倉田薫候補の得票数とほぼ一致する。共産党の約31万の支持者数も梅田章二候補の得票数とほぼ一致している。
このグラフをじっと眺めていると見えてくるのが、公明党投票者数59万人の動きだ。これを維新投票者数に足すと、見事に松井一郎氏が得た約200万票の数字にぴったり近いものになる。つまり、公明党は国政においては自民党と連立政権を組みながら、大阪においては維新と手を組んでいる可能性が高いことが、統計上読み取れてしまうのである。
その後、去年の衆院選までの間に、維新の得票率は20%程度低下している。これは橋下徹市長の慰安婦発言などの影響によって「維新離れ」が起きた結果であろうと思われる。他の政党の得票数は、民主党支持層の一部が共産党に流れているように見える以外、ほとんど変化が見られない。
この流れから今回の結果を予想すれば、自民・民主に加えて共産が組んだ時点で、たとえ公明党の協力があったとしても、維新にとってはかなり苦しい戦いであった。
ところがフタを開ければ、松井一郎府知事は前回を上回る得票数を得て当選。果たしてこの驚異的な数字はどこから生まれてきたのか。2つの仮説が考えられる。
まず、離れていた維新支持者が「戻ってきた」こと。今回の選挙で負けてしまえば維新改革は間違いなく終わる。これが支持者たちの危機感を煽り、投票所へ向かわせた可能性はある。
次に、他党の支持層から一定の票を奪った、ということ。200万を超える得票は、明らかに維新支持層だけの数字ではあり得ない。共産党と組んでしまうことへのアレルギーなどがコアな自民党ファンを投票所から遠ざけ、公開討論会などで見せた栗原候補の抽象的な話に終始した印象のある主張が、いわゆる浮動票的な自民党支持者を現職支持に傾けさせたのかもしれない。
いずれにせよ、この厳しい戦いを制したところに維新復活の兆しがあることは間違いない。
■真の改革政党にならねば存在価値なし 維新が内包する課題と重い責任
ここまで、投票行動を分析しながら維新の強さの秘密を考察してきた。だが、当然のことだが、選挙に勝てばすべてが「民意を得た」として許されるわけではない。
多くの場合において、有権者は候補者の業績の評価に基づいて投票しているのではなく、安易な印象論に基づき、与えられた選択肢の中で消極的な投票をせざるを得ない、という選挙の限界が存在しているからだ。
筆者は維新の改革については賛同しているが、政党のあり方・ガバナンスについては、もっと謙虚に振り返り、反省するべき点もあるのではないか、と考えている。
まず1つ目が、大阪だけを見ればコアなファンを固めることにつながった「内ゲバ劇」も、全国に視野を広げれば、支持の広がりに限界をもたらしていることを自覚することだ。大阪だけに集中するのか、国政においても支持の広がりを求めるのかによって戦略は異なるかもしれないが、支持の広がりを目指すならば、原理主義に陥ることなく、もっと他党との連携を模索した方がよいだろう。
今回の市長選挙の結果を見ても、支持者数は着実に低迷しており、支持の広がりは見えない。「筋金入りの維新ファン」を固定化させるだけでは、国政において与党になることは困難であるし、オセロゲームのように反対派を賛成にひっくり返していかねば、いつまで経っても都構想は実現できないだろう。
2つ目が人材の質の問題である。ここ最近を振り返っただけでも、維新の政治家の政治とカネをめぐるスキャンダルは、挙げたらキリがない。大阪市の伊藤良夏市議会議員が高級車「レクサス」の購入費を政務活動費から支出していたり、堺市の小林由佳市議会議員が政務活動費で支出した議会報告のチラシについて、印刷も配布もされていなかったことが報じられたりしたことは、党の看板でもあった美人議員たちのスキャンダルとして週刊誌でも大きく騒がれてしまった。
国政においても、馬場伸幸衆議院議員が、維新の党国体委員長時代に「毎月300万円もの党のカネを使って、連日連夜、仲間やメディアを引き連れ、銀座や赤坂などの高級店で遊び回っている」と日刊ゲンダイにすっぱ抜かれるなど、看板政策である「身を切る改革」の信頼が失われてしまうような指摘を次々に受けているようでは、支持の広がりは期待できないだろう。
そして最後に、ついに橋下元市長が引退するにあたって、いかに橋下徹の一枚看板から脱するかが、大きな課題となる。これまでは「大阪維新の会」「おおさか維新の会」の議員が支持されているというより、橋下徹の強烈なキャラクターとその周辺の「ブレーン」による改革が支持されていたと言っても過言ではない。その意味では、新しい大阪市のリーダーが誕生したことには心からエールを送りたいものの、今後橋下徹という政治家なくしてどこまで維新が自立できるかが、問われている。
■私たちが戦うべき敵は自分自身 維新は「平成の御一新」を起こせるか?
では、これから再び4年間の任期を得た大阪のリーダーたちは、次に何を目指すべきなのか。「都構想」を超えたビジョンを大阪に提示することはできるのか。そして、この勝利が日本全体に及ぼす影響は何なのか。
正直、都構想は1つの手段でしかない。今回の勝利をはずみにして、再度都構想を進化させ、雪辱を果たすのはよいが、そこだけではなく、維新が実行してきた改革の成果もさらに推進していくべきである。
民営化などによって実現した地下鉄の値下げや終電延長、行政改革で得た財源の使い道を変えることによって実現した中学校給食やエアコン設置、府と市の連携による高速道路淀川左岸線の建設決定によるいわゆる「ミッシング・リンク」問題の解決、関空問題をはじめとする都市インフラ整備などがこれまでの成果として挙げられようが、今後も維新の改革を進め、有権者の理解を広げていく必要がある。
つまり、「改革!」と叫べば政治家であり続けられるだろう、という改革詐欺師のようになってしまっては意味がない。実のある改革をきちんと実行し、成果を上げていかなければならない。
一方で、私たちは肝に銘じておかねばならない。これからの時代、政治家が何かをしてくれることを期待していてはいけないということを。高齢者の割合が増え続けるなか自治体の負担増は免れず、誰がリーダーになっても住民の生活が劇的に豊かになることはない。
私たちが戦うべき敵は、維新でも自民党でもなく、私たち1人1人の心の中にある「どうせ変わらない」という諦めや依存心である。この閉塞感を打ち破るのは、他の誰でもない私たち自身だし、地域を活性化させるのは他の誰でもないそこに住んでいる人たちなのだ。「どうせ変わらない」を打破し、時代に合致した新しい仕組みを柔軟な思考で実現していくべきときだ。
今回の大阪における維新の勝利が、成熟社会ゆえに漂う閉塞感を打ち破り、全国の地方政治が見直され、分権改革や地域活性化につながっていくことを願ってやまない。
今こそ「平成の御一新」の時代である。
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