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[創論]携帯電話料金 引き下げ要請
首相が口にすることか インターネットイニシアティブ会長 鈴木幸一氏
安倍晋三首相が携帯電話の料金を下げるよう異例の要請をした。総務省は有識者による作業部会を立ち上げて年内に結論を出す。そもそも日本の携帯電話料金は高いのか。ユーザーの不満は何か。通信業界の論客であるインターネットイニシアティブ(IIJ)の鈴木幸一会長と、作業部会の中心メンバー、野村総合研究所の北俊一・上席コンサルタントに聞いた。
――安倍首相の携帯値下げ要請をどう評価しますか。
「首相が特定の業界に対し、料金が高いとか安いとか言うのはあまり聞いたことがない。なぜ世界的に見て高くもない、むしろ通信の品質を考えれば安い部類に入るのに『高いですよ』と言うのか。そんなに問題になっていないところで安くしろと言ったらみんなが喜びそうだから考えたのかと勘繰りたくなる」
「インターネットの普及促進について、国がやれば変われることはいっぱいある。携帯電話の料金なんてはっきり言って、首相の関心としてはちょっとさみしいなと思う」
――首相は景気の好循環に向け、賃上げ要請に続き企業に設備投資の拡大を求めています。携帯値下げも含め民への介入との批判もあります。
「設備投資というのは個別企業の判断だ。大きな意思決定だし、現在は(日本だけでなく)グローバルな環境での判断となる。それを首相が政治の立場で言うのは、どうなんだろうか。それなら国としてもっと設備投資しやすい環境を整える方が先だろう」
――携帯料金よりも国がやるべきことは他にあると?
「むしろ問うべきはIT(情報技術)分野でなぜ日本に巨大企業ができないのかという問題ではないか。携帯でも日本の大手は現状では、(iPhone=アイフォーン販売で不利な条件を結んでいるとされる)米アップルに『上納金』を納めているようなものだ。iPhoneに使われる電子部品では日本企業が強い。でもなぜ日本の企業がiPhoneのようなグローバルスタンダードを作れないのか。言葉を換えればなぜビジネスのプラットフォーム(基盤)を握れないのか。ITビジネスで本当にもうかるのはこの部分だし、今後の産業のエンジンになるものだ」
「企業側の責任もあるが、国にもそのための仕組みを作る仕事があるはずだ。例えば医療分野。米国ではビッグデータを活用して医者個人の能力まで分かる仕組みができた。日本でももっとネットを使い便利なシステムを作れないのか。日本のITを駆使すれば日本発の世界的な医療系ビッグデータを築けるはずだ」
「それ以前に日本の省庁は通信が総務省、コンピューターが経済産業省と縦割りになっている弊害がある。ネットはこの2つを一緒にやるから面白いものができる。米国では商務省が一括している。日本でも情報通信省のようなものを作ればどうか。そこでIT産業の仕組み作りを進める。こういうことこそ首相の立場でしかできないことだ」
――携帯などモバイル機器の料金が下がればIT産業の活性化につながりませんか。
「そう単純ではない。例えば、一口に(モノがネットとつながる)IoTと言っても用途は様々だ。値段より確実性を求め、一日に4度ほど通信できれば良いというものもある。低料金を求める場面では安く提供すべきだ。要は多様化したサービスに対応できるかどうかだろう」
――携帯料金の引き下げ議論ではユーザーの不公平感の解消が論点になっています。
「そもそもネットは不公平なものだ。大多数のあまり使わない人がごく一部のたくさん使う人の分を負担することで成り立っているという面もある。昔は(使った分だけの)従量課金だったが今はほぼない。ネットの料金水準がすごく下がったためで、負担と言ってもたいした金額ではない。それにごく一部のものすごく使う若い人たちから生まれる新しいアイデアもある。我々はある程度、許容度を持たないといけないとも思う」
「それに、あまり使わない人のために割安なサービスを提供できる仮想移動体通信事業者(MVNO)も出てきた。ユーザーは自分のニーズにあったサービスを選べるようになってきているはずだ」
――既存の通信大手から回線を借りて「格安スマホ」を提供するMVNOでは、IIJも大手の1社です。ただITに詳しい一部の人以外にあまり普及が進んでいません。
「我々も努力が必要だ。(格安スマホの)初期設定もできない人が多いと思う。カタカナ文字を使わずにユーザーに理解してもらうにはどうすべきか。イオンやビックカメラの店頭でサービスを始めたが、もっと分かりやすく説明することが必要だろう。最低でも(スマホ全体の)2割のユーザーにMVNOを使ってもらいたい。そのためにはもっと工夫しないといけない」
(聞き手は杉本貴司)
すずき・こういち 早大卒。インターネットイニシアティブの創業メンバーの一人で、日本のネット業界の草分け的存在。69歳。
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消費者の不満は大きい 野村総合研究所・上席コンサルタント 北俊一氏
――現在の携帯料金引き下げ議論をどう見ますか。
「これまでの作業部会では『家計支出に占める携帯料金の割合が高いのは世帯ごとの契約数が増えてたくさん使うようになったから』、『日本の携帯料金は国際的に見て高くも安くもない』と説明してきた。だがどんな経緯や事情があるにせよ、多くの消費者は日本の携帯料金を高すぎると見ているのが現実だ。この状況をしっかり受け止め、携帯業界を健全化するチャンスと捉えて前向きな議論に持って行くことが重要だ」
――携帯料金が高いといわれるのはなぜでしょう。
「消費者に分かりにくい料金体系や販売手法をとってきた携帯電話業界への不信感の表れだろう。例えば、多種多様な割引キャンペーンを組み合わせ、端末価格を『実質ゼロ円』や『一括ゼロ円』とうたうことで新規顧客を勧誘する施策が続いている。新規契約した顧客に高額のキャッシュバック(現金還元)を提供する代わりに、有料のアプリ(応用ソフト)を複数契約させるケースも見られる」
「携帯会社には『もうけすぎで顧客に還元していない』との批判も根強い。携帯3社の2014年度営業利益は合計約2兆3000億円。確かに大きいが、それ以上に利益を出している自動車業界への批判はほとんど聞かれない。国内外の多様なメーカーが競い合う自動車業界と異なり、携帯電話業界は実質的に3社でシェアを分け合う。こうした状況が協調的寡占や横並び、料金の高止まりといったイメージにつながっている」
――現在の携帯業界の競争はどうなっていますか。
「今や携帯3社の料金プランやエリア、端末ラインアップはかなり似ている。各社は多額の販売奨励金を原資にした端末の値引きやキャッシュバックで顧客獲得を進めてきた。販売奨励金による値引きはどの業界にもあるが、1台10万円もする端末をタダで配り、それ以上に得をするような施策は明らかに行き過ぎであり不健全だ。販売奨励金は利用者の通信料金から広く回収して捻出している。頻繁に携帯会社を乗り換えたり端末を買い替えたりする人の値引き原資をそうでない人も同様に負担していることになる」
――改善策はありますか。
「各社が販売奨励金のムダをなくす方向に向かえば新たな原資が生まれる。作業部会で課題となっている携帯電話の利用が少ない人や同じ携帯会社と長年契約している人への優遇策などリバランス(再均衡)を図りやすくなる。業界全体で奨励金を減らすのは簡単ではないだろうが、顧客のために協調できる部分は協調すべきだ。総務省が過度な奨励金を抑制するよう勧告するのも選択肢の一つだろう」
「携帯をあまり使わないのに高い料金を払わされている人をどう救うかも課題だ。高齢者や未成年者などが本来不要な端末やサービスを勧められるままに契約してしまう例もある。来年施行の改正電気通信事業法では顧客が理解できない商品やサービスを勧誘してはいけない規定が入る。総務省は携帯会社に販売代理店の監督義務を課す方針だ」
――携帯会社に割安なプランを求める声もあります。議論の行方はどうなりますか。
「契約先を(格安スマホサービスを提供する)MVNO(仮想移動体通信事業者)などに切り替えれば通信費は劇的に安くなる。携帯3社が安い料金プランを出すべきか、利用者がMVNOを選びやすい環境をつくる方が良いか。まだ着地点は見えていない」
「携帯会社が安い料金プランを導入した場合でも、それで済むかは不透明だ。一人ひとりが持つ端末台数やデータ通信量は今後も増え、通信以外の様々なサービスまでまとめて支払うようになっていく。携帯会社に支払う額はどうしても増える方向にある」
――端末代金の徴収と通信料金の支払いを切り分ける案も出ています。
「競争施策の柱であり過去には実施されたこともあるが、行き過ぎると市場が混乱してしまう可能性もある。今後検討していく上では英国で現在定着している料金体系が参考になりそうだ。端末代金の一部を最初にいくら支払うかによって月々の支払額が異なる複数のプランを用意している。最初に端末を一括購入した上で通信料だけを負担する安いプランもある。端末の支払いが安くなる分を利用者自身の通信料でまかなう仕組みで公平性が高い」
(聞き手は高槻芳)
きた・しゅんいち 90年早大院修了、野村総合研究所入社。情報通信関連分野の調査・コンサルティング業務の専門家。49歳。
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<聞き手から>課題は料金より不公平感
日本の携帯料金は海外の先進国と比べ高くないというのが2人の識者の共通認識だ。スマートフォン(スマホ)の役割は年々大きくなり、日常的に動画を見たり電子書籍を読んだりといった使い方が当たり前になってきた。ビデオや本をスマホが肩代わりしているわけで、通信代の負担が増えたのはライフスタイルの変化の結果ともいえる。
そう考えれば一律に「高すぎる」という批判には違和感もある。問題の核心はむしろ不公平感だろう。スマホをあまり使わない人からすれば、料金体系が複雑で販売店が勧めるままに契約したのに「結構高い」と感じるケースは多いはず。また販売奨励金も新規ユーザーにだけ還元される仕組みで、スマホの長期契約者はその分、割を食う。
一方、携帯会社は増大する通信ニーズに応えるため今後も巨額の設備投資が求められる。携帯会社は不公平感が少なく手ごろな料金プランを提示し、なおかつ投資負担に耐えられる解を探る必要に迫られている。
(杉本貴司)
[日経新聞11月15日朝刊P.11]
- 携帯端末「値引き過剰」 :総務相が法規制案 不公平是正めざす あっしら 2015/11/23 01:44:49
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