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2015年11月20日
いやはや、時代と云うものは面白いものだ。一国の内閣総理大臣と中央銀行総裁が、揃って「給料上げろ!」と公然と企業側に要求を突きつけている。まあ、労働運動などお茶濁し程度のことしか行わなくなった、わが国の労働組合。まして、官公労中心の最大労組をしのぐ声で、「給料上げろ」と公然と話すのだから、“あれこれ珍百景”である。
昨日の日銀黒田総裁の発言を聞いていると、原油安を魔女として扱い、インフレターゲットの動きが鈍くなっているが、様々な経済数値を観察するかぎり、物価の基調は改善されており、実質家計最終消費が予想以上に回復しているので、物価2%の上昇目標達成のコミットメントは不変だと、言い訳じみた強気論を堅持した。しかし、日銀黒田総裁の、このようなセリフは、デジャブ現象であり、何度となく聞かされた話のようで、眉に唾して聞くことになる。
現時点での日銀黒田総裁の今後の展望は、中国等の経済減速と原油の供給側の供給力の影響下にあるだろう。そして、そのよう状況の下、企業側のインフレ予測が低下し、設備投資を減速させ、賃金の上昇が抑えられる不安が残ると金融政策決定会合後の記者会見で発言した。 日銀黒田総裁の、財務省との連携的金融緩和政策は、もう効果はないだろう。日銀は悪くない。状況を悪化させているのは、原油安であり、賃金が思うように伸びないこと、中国経済の減速などに足を引っ張られている。こう云う風に、言い訳序でに「魔女」を出すようでは、金融政策は、日銀のバランスシートを傷つけただけで終わることになる。
≪日銀総裁:賃金上昇「やや鈍い感否めず」−来春の春闘「重大な関心」
(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は19日午後、金融政策決定会合後の記者会見で、2%の物価目標の早期達成のために不可欠な賃金の上昇 について、史上最高となっている企業収益や雇用のひっ迫からすると「やや鈍いという感は否めない」とした上で、来年の春闘について「重大な関心を持って見 守っている」と繰り返し強調した。
黒田総裁は「長期的に見ると、賃金が上がっていかないと物価は上がらない。また、物価が上がらなければ賃金は上がらない。反対に、賃金が上がっていけば物価は上がっていくし、物価が上がっていけば賃金も上がる」と指摘。その点、来春の春闘は「かなり重要」であり、「春闘でどのような賃上げが実現するかは大きな関心を持って見守っている」と語った。
さらに、「今のところ企業収益が非常に良く、失業率も構造的失業率に近いところまで来ており、有効求人倍率も数十年ぶりの水準まで上がってきていることからすると、賃金上昇率は上昇はしているが、やや鈍いという感は否めない」と述べた。
「これは経営側と従業員側の交渉の問題でもあるので、一概に決めつけることはできないと思うが、来年の春闘に向けてどのような交渉が行われ、政労使ないし官民の会議でどのような議論が行われ、具体的にどの程度の賃上げが実現するかは、私どもとしても重大な関心を持って見守っている」と話した。
■足元の物価が影響も
連合が来春のベア要求について「2%程度」と今春の「2%以上」と比べてやや慎重なことについては「原油価格の下落は無限には続かずあくまで一時的なので、それがはげ落ちれば物価は上がる。当然そういったことも十分考えておられると思うが、確かに足元で物価上昇率が0%程度で推移していることは、物価あるいは賃金の今後について何らかの影響を与えている可能性はある」と述べた。
一方で、「いくつかの予想物価上昇率の指標はこのところ若干弱めになっているが、企業の価格設定行動その他を見ていると、予想物価上昇率は長い目で見て上昇していることは間違いない。足元で原油価格の下落の影響で消費者物価が0%程度になっていることが、来年の春闘に決定的に効くとは考えていない」と語った。
日銀は19日までの2日間の会合で8対1により政策の現状維持を決めた。
2%物価目標の早期実現のための鍵となる予想物価上昇率について、これまでの「や や長い目でみれば、全体として上昇している」という表現は据え置いたものの「このところ弱めの指標もみられている」との記述を追加して判断を引き下げた。
■評価変える必要ない
黒田総裁は各種のアンケート調査やBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)の中で「いくつか弱含んだ指標がみられる」と述べた。その上で、「ただ、こうした指標だけでなく、企業の価格設定スタンスや家計の支出行動も予想物価上昇率を反映したものだ」と指摘。「消費者物価を構成する品目のうち、上昇した品目から下落した品目を差し引いた指標ははっきり上昇している」と述べた。
さらに、「食料品や日常品などの日次、週次の指標も4月以降プラス幅の拡大傾向が続いている。こうしたことは本年度入り後、企業の価格設定の動きがかなり進んでいるとともに、家計も雇用や所得環境の改善を踏まえて以前より値上げを受容するようになってきているのではないか。こうしたことも含めて判断すると、やや長い目で見れば全体として上昇しているという評価を変える必要はない」と述べた。
7−9月の実質国内総生産(GDP)成長率は前期比年率0.8%減と2期連続のマイナス成長となった。黒田総裁は「内訳をみると、マイナス成長の主因は在庫投資であり、個人消費は底堅く推移しており、輸出も増加に転じるなど、最終需要は全体として増加している。こうした内容はわが国の景気が緩やかな回復を続けているとの評価に沿ったものだ」と述べた。
■利上げペース極めて緩やか
米連邦準備制度理事会(FRB)が12月に利上げに踏み切るとの見方が強まっていることについては「FRBが仮に今後、利上げを開始するとすれば、良好な雇用所得環境、堅調な家計支出など米国経済の強さが背景にあるので、世界経済、日本経済にとっても好ましいことだ」と語った。
利上げのペースについても「いろいろな考慮から、金利の引き上げが開始されても、その引き上げのテンポは極めて緩やかなものになるというのは、恐らく、当局者もそう言っているし、エコノミストの分析もそういうことを示しているようなので、そういうことになるのではないかと私も思っている」と述べた。
パリで起きた同時テロの影響については「少なくも現時点では限定的であると判断している。ただ、マインド面や金融資本市場への影響を通じて世界経済、ひいては日本経済に下方リスクをもたらす恐れはないかどうか、今後とも注視していきたい」と語った。 ≫(ブルームバーグ)
たしかに、原油価格の下落や、中国の経済減速、安倍首相が高らかに宣言するほど賃金の伸びは見られない。日本の企業の主論は、内需のキャパは充分に大きいが、長期的には、減少傾向にある。中国経済の減速、他の開発途上国の総体的減速は確実で、新規の設備投資に振り向けるキャッシュは限られている。国内のベースアップも、来春は、前年を下回らざるを得ないとしている。連合も、来春のベースアップには、弱気な姿勢なので、本年度を上回る可能性はゼロに近い。だからかもしれないが、安倍首相も日銀黒田総裁も、民間の賃金アップへの期待を強く滲ませている。
注:筆者から見ると、連合と云う労組体は、昔、馬鹿にした、御用組合と何ら変わらなくなった。
しかし、企業経営をする側から言わせてもらえば、政府や日銀の皮算用につき合って、将来的に重荷になるベースアップに易々と応じるわけにはいかない。確実である内需の市場が、TPPや様々なFTAなどが稼働したからと言って、市場規模が大きくなることは期待できない。大きな利益が出た時には、賞与で応えると云うのが筋である。現状のグローバル経済構造においては、内需にこだわる必要は益少ない。外需も、世界的な経済減速予測が重なると、投資の方向性は、マーケットそのものを買うと云う、企業買収(M&A)の計算できる確実性への投資が適切と云うことになる。その証左ではないが、日本企業の海外企業M&Aは史上最高10兆円を超えている。
昨日のウォールストリート・ジャーナルの社説では、日本市場を徹底的に開放して、市場原理を推進すべき、と主張したり、多くのマネタリストや、ルー米財務長官は、日本の緊縮財政の一時凍結を提唱している。結局、本質的に日本の経済成長を夢見ている限り、経済成長と云う「青い鳥」探しが、徒労に終わることを告げている。世界における、日本の総体的力量の比較経済と、歴史・社会学、民俗学や宗教倫理等々を総合的に加味した、自分の国を驕りもなく、卑下もせずに見つめる「空気」が生まれないことには、永遠にありもしない「青い鳥」捜しで、性も根も尽き果てるのだろう。
*青い鳥(Wikipedia引用) 2人兄妹のチルチルとミチルが、夢の中で過去や未来の国に幸福の象徴である青い鳥を探しに行くが、結局のところそれは自分達に最も手近なところにある、鳥籠の中にあったという物語。 なお、続編では「チルチルの青春」という話があり、作者は、モーリス・メーテルリンク。
≪「アベノミクスは息切れ」 米紙、社説で再考促す
米ウォールストリート・ジャーナル紙は17日、安倍政権の経済政策について「アベノミクスが息切れしている(Abenomics Sputters in Japan)」と題した社説を掲載した。2四半期連続のマイナス成長となったことを受け、「今こそ再考の時だ」と促している。
社説では、アベノミクスの財政出動で「日本の借金は国内総生産(GDP)の250%に近づき」、「米国より急激に金融緩和を進めている」にもかかわらず、「銀行の貸し出しが増えず、デフレが続いている」と指摘した。
労働市場の改革では「余剰となった正社員の解雇を難しくし、年功序列の昇進を促している法律の見直しもできていない」と批判。電力の自由化や環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意など構造改革の一部は評価しながらも、「安倍氏が本当の改革を後押ししなければ、自分が行き詰まることになる」と警告した。 ≫(朝日新聞デジタル:ワシントン=五十嵐大介)
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