1. 2015年11月20日 09:02:50
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(70年目の首相 アベノミクス:1)経済回帰、新3本の矢 2015年11月20日05時00分 朝日新聞 ■戦後最大600兆円目標「いいねぇ」 「2020年に、国内総生産(GDP)600兆円の戦後最大の経済をめざすべきです」 9月9日、首相官邸。内閣官房参与の藤井聡は、首相の安倍晋三に訴えた。そして、「これからの安倍内閣の経済政策ビジョン」と題した提案書を手渡した。 京大大学院教授の藤井は、6人ログイン前の続きいる経済政策担当の参与の一人として、政権発足時からブレーンを務めている。 「これ、いいねぇ」。安倍はうなずいた。新「3本の矢」の柱となるGDP目標600兆円が生まれた瞬間だった。 安倍が7月ごろから、安保法制成立後に打ち出す経済政策のイメージを探り始めた。周囲に「国民に分かりやすいメッセージはないだろうか」と漏らしていた。 財務省もアイデアを持ち込んだ。高齢者の介護不安を取り除き、子育てを支援して、男女ともに働きやすい社会をめざすというものだった。安倍はこうしたアイデアを集め、経済産業省出身で政務担当の首席秘書官、今井尚哉ら側近とひそかに練った。 9月24日、再び自民党総裁に選ばれた安倍は会見で、こう力を込めた。 「本日この日から、アベノミクスは第2ステージへと移る。目指すは1億総活躍社会だ。20年に向けて全力を尽くす」 20年は2度目の東京五輪が開かれる年だ。1964年の東京五輪を招致したのは、祖父である岸信介内閣だった。そして20年五輪は、安倍自らが招致活動の先頭に立った。だから、20年には特別な意味があった。 そこで、安倍が掲げたのが新「3本の矢」だ。「手段としての『矢』と明確な『的』を設定した」(10月29日の1億総活躍国民会議)と安倍は語る。 いま、4〜9月は2四半期マイナス成長となり、経済政策への期待感も落ちている。来夏の参院選を控え、安倍は「安保から経済へ」とギアチェンジを進める。自民党の最新ポスターにこうある。 「経済で、結果を出す。」 ■中国に抜かれ「誇り取り戻す」 「それは三ツ矢サイダーですか?」 麻生太郎は、安倍に冗談めかして聞き返した。 衆院選に圧勝した12年12月16日の前から、2人は新政権発足に向けて話し合ってきた。経済政策をどう打ち出すか。安倍の答えが「3本の矢」だった。 1本だと折れるが、3本重ねると折れにくい――。中国地方の戦国武将、毛利元就が3人の息子に結束の大切さを教えたとされる言い伝えだ。安倍が「矢」にこだわったのは、大学時代にアーチェリー部に所属していたということもある。 「三ツ矢サイダーではなく、毛利元就です」と安倍が返すと、麻生は「それは山口県人にしか分からんだろう」と安倍の地元を引き合いに出しつつ、アイデアを受け入れた。 この経済政策が生まれたきっかけは、中国の台頭だった。 「もっと早くあなたのデータや理論に出会っていればよかった」 11年8月30日、自民党本部で開かれた経済政策の勉強会。安倍は、講師に招いた学習院大教授・岩田規久男=現日本銀行副総裁=に声をかけた。 その前年、GDPで中国に抜かれ、40年以上守ってきた世界第2位の経済大国の座を明け渡した。海外メディアは「中国の台頭、日本の凋落(ちょうらく)」(米ウォールストリート・ジャーナル紙)などと大きく報道していた。 安倍は、岩田の資料に強い関心を示した。もし日本経済がデフレに陥らずに、1991年から名目4%の成長を続けていれば、10年の経済規模は実際の2倍になっていた、というものだった。つまり、日本はまだ中国に抜かれていない、ということになる。 安倍は、岩田や米エール大名誉教授の浜田宏一=現内閣官房参与=らと勉強会を重ねていく。アベノミクスが形づくられていった。 13年1月28日、安倍は首相就任直後の所信表明演説で訴えた。 「自らへの誇りと自信を取り戻そうではありませんか。私たちも、そして日本も、日々、自らの中に眠っている新しい力を見いだして、これからも成長していくことができるはずです」 「強い日本」を取り戻すには、まず「強い経済」――。安倍にとって、経済政策は「日本の誇り」を取り戻すための手段だった。 =敬称略 (鯨岡仁、関根慎一) ◇ 日米安保条約を改定した岸信介元首相、所得倍増を掲げた池田勇人元首相。安倍晋三首相はいま、安保と経済の一人二役をこなそうとしています。第4部では、アベノミクスがつくられた過程を追い、安倍氏の考え方の底流を探ります。 ◆キーワード <デフレ> 物価が下がり続け、経済活動が縮んでいく現象。日本は1997年ごろから、戦後初めて陥った。例えば、牛丼の値段が下がると、消費者はうれしいが、そこで働く従業員の給料も下がる可能性が高くなる。 デフレに陥ると、縮み志向が連鎖し、なかなか抜け出せなくなる。 http://www.asahi.com/articles/DA3S12076807.html |