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官邸前、珠玉の一人芝居 安保論議が植えつけた種
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2015/11/29/post-478.html
サンデー毎日 2015年11月29日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載76
首相官邸前の交差点。
安倍晋三首相の住まう館と道路一つ隔てた歩道は、週末ともなると、安保法制や原発再稼働反対グループであふれる名所であるが、その日の夕時は、一味違うパフォーマンスが繰り広げられていた。
背の高い男性が、一人朗々と声を張り上げ、両手を広げて、戦争と平和について語り始めた。
「私、アレン・ネルソンは1947年ブルックリンで生まれました......」。極貧に育った黒人青年である私を主人公にした一人芝居だった。
◇ ◇ ◇
私は18歳で海兵隊に入り、ベトナムで多数の民間人を殺傷して帰国後PTSD(心的外傷後ストレス障害)にかかり悪夢にうなされる。ある日、小学校教師をしている高校時代の友人に会い、子供たちにベトナムの体験談を話すよう頼まれる。
私はそれを受ける。「ベトナムは蒸し暑い。ジャングルには見たこともない虫がたくさんいる。その中でベトナム兵と米兵が戦い、多くの人が死んだ......」。私は評論家のようにきれいごとを語った。
「ベトナムの家はどんな家?」
「子供たちは学校へ行くか?」
いくつか質問があった。
「時間なので最後の質問です」
「ハイ」
「ハイ。どうぞ」
「ミスターネルソン、あなたは人を殺しましたか?」
「えっ?」
「あなたは人を殺しましたか?」
私は返答に悩む。数え切れないほどの人を殺した。ただ、それを語ると残虐な殺人者になってしまう。戦争で活躍したヒーローの話を聞きたかったはずだ。だが、子供たちには嘘(うそ)をつけない。どのくらい沈黙が続いたか。気がつくと私はつぶやくように答えていた。
「......殺した」
ここに来るべきではなかった。皆、私を恐れ、憎むだろう。
「かわいそうなミスターネルソン」
「えっ?」
子供たちは泣きながら私を抱きしめてくれたのだ。
私は戦場での殺人という自分の罪を認めることでPTSDから回復するきっかけを得た。
米国人はベトナム戦争が間違いだったと思っている。だが、悲しいことに戦争が間違いであるとは思っていない。
私は、沖縄の米兵による少女暴行事件(95年)を機に日本でも活動を始めるようになった。
訓練を受けた沖縄の基地がまだ残っていることに驚いたが、何よりも驚いたのは日本の友人が教えてくれた憲法9条の存在だった。
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し......(戦争は)永久にこれを放棄する」
これを読んだ私は思わず立ち上がった。キング牧師の演説「私には夢がある」以来のショックを受けた。これこそ神から与えられた何よりも強い武器だと思った。これは米国から押し付けられたもので自分たちで考えたものではない、という日本人もいた。だが、誰にもらったかは問題ではない。たとえ宇宙人からもらったものでも人類が進むべき道を示している。
世界平和が始まるのは、米国からでも、国連からでもありません。ここから私たち一人一人から始めるのです。ご清聴ありがとうございました。
◇ ◇ ◇
─この間30分。最後まで聴いてしまった。さわやかな魅力があった。拡声器を使わない。一方的に糾弾するシュプレヒコールでもない。数に頼むわけでもない。ただ、ベトナム帰還兵から見た9条というストーリーを一人淡々と、かつ敢然と演じただけ。だが、今の日本に対するリアルなメッセージが込められているような気がした。
男性をお茶に誘って聞いた。
「ここでやるのは今日が初めて。ドキドキでした。警察ざたを懸念したが、憲法の素晴らしさを伝えているだけで、やめろと言われるはずがない、と信じてやった」
「ノンポリです。政治にも無関心だったけど、シールズ(安保法制に反対する学生集団)の動きに触発された。日本の平和の光景が脅かされている気がして、いてもたってもいられなくなった」
◇憲法9条と日米安保 戦後日本の平和維持めぐり国民レベルでの議論を
役者歴二十余年。いじめや自殺をテーマに小学校で一人芝居を演じている。ネットに出ていたアレン・ネルソン(故人)の動画に感動、一気にシナリオを書き上げた。
「こういうことをやりたい人はいっぱいいる。たまたま、自分はどこに属しているわけでもなく、体が空いているからやっている」
強行採決(9月19日)以降始め、最近は水、金と週2回国会正門前でやっている。
「シールズに加わりたいわけでも、マネをしたいわけでもない。足を止めて聴いてくれる人が一人でもいい。できる範囲で無理なく続けられることをやっています」
たまさか私がその一人だった。
安保法制論議のもたらしたものはいろいろある。首相は、中国の台頭に切れ目のない日米同盟強化を実現できたと、ご満悦であろう。野党は、これを政界再編の契機にすべく動き始めた。国民世論はなお、真っ二つに割れている。
我々はあまりに自国の安全保障に対して無自覚でありすぎた。憲法9条と日米安保条約がどのような形で戦後日本の平和と安定を維持してきたか、国民レベルでの議論は極めて薄かった。
それが分かっただけでも、貴重なレッスンである。それよりも議論の種に注目したい。国会の壁を越え、国民一人一人の意識の中にまかれたのではなかろうか。それぞれが心の中にそれぞれのアレン・ネルソンを持ちそれぞれの発信を継続すること。それが熟度の高い民主主義の根っことなる。いずれ葉が茂り、実をつけるだろう。
◇
アレン・ネルソン 「9条を抱きしめて」
2015/10/01 に公開
国会正門前でのひとり(?) 芝居 (2015.09.30)
アレン・ネルソン 「9条を抱きしめて」
演者 : みぎた たかし
PR版「9条を抱きしめて」〜元米海兵隊員アレン・ネルソンが語る戦争と平和〜
2013/07/14 に公開
〜元米海兵隊員が語る戦争と平和〜 DVD好評配布中
このDVDは、ネルソンさんの貴重な講演やインタビュー映像、政治学者ダグラス・ラミスさんとの対談、劇画風マンガによる戦争体験や人間性をとり戻していくストーリーなどによる、感動的なドキュメンタリーです。戦争という殺戮に関わった一人として、ネルソンさんは、戦争や暴力の恐ろしさを訴え、人間が平和に生きていくための道筋を、優しくも力強く語りかけています。
NNNドキュメント「9条を抱きしめて〜元米海兵隊員が語る戦争と平和〜」 15 05 03
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