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国民の幸福追求しない政権を支持できないー(植草一秀氏)
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17th Nov 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
11月16日、2015年7−9月期のGDP統計が発表された。
実質経済成長率は年率換算で−0.8%のマイナス成長となった。
4−6月期に続いて2四半期連続のマイナス成長となった。
米国の定義では、2四半期連続のマイナス経済成長に陥った場合、
リセッション=景気後退
としている。
日本経済は、再び不況に戻ってしまった。
日本経済は2014年に不況に突入している。
2014年4−6月期、7−9月期にマイナス成長に陥った。
昨年10−12月期、本年1−3月期にはプラス成長を記録したが、
その後の4−6月期、7−9月期が再び2四半期連続のマイナス成長に陥ったわけだ。
年率換算の経済成長率は以下のように推移している。
2014年4−6月期 −7.7%
2014年7−9月期 −1.1%
2014年10−12月期 +1.2%
2015年1−3月期 +4.6%
2015年4−6月期 −0.7%
2015年7−9月期 −0.8%
そして、2014年度の実質経済成長率は−0.9%だった。
メディアは「アベノミクス」を絶賛し続けてきたが、アベノミクスの実績は明らかに落第点なのである。
2012年11月14日は金融市場の変節点である。
この日、野田佳彦氏と安倍晋三氏による党首討論が行われた。
この日を境に金融市場が流れを変えた。
円安、株高が進行し、アベノミクスが絶賛された。
1ドル=78円、日経平均株価8664円が、
半年後の2013年5月22日に1ドル=103円、日経平均株価15627円に上昇した。
この相場変動で第二次安倍政権が軌道に乗り、3年間に及ぶ長期政権に転じてしまった。
円安が進行した理由は、アベノミクスの第一の施策である金融緩和策強化が一因ではあったが、
主因は米国長期金利の上昇だった。
米国10年国債利回りは2012年7月に1.38%の最低値を記録したのち、上昇トレンドに転じた。
この米金利上昇こそ、円安=ドル高進行の主因だった。
そして、為替レート変動に連動した推移を示してきた日本株価が円安に連動して跳ね上がった。
この金融変動のために第2次安倍政権の支持率が高まり、
2013年7月参院選での与党勝利をもたらし、安倍独裁政治を招いてしまったのである。
アベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略を三本柱とするものだとされた。
政権発足当初は、金融緩和政策強化の方針が示されるとともに、
13兆円の補正予算が編成され、この財政金融政策の発動が日本株価上昇をもたらしたとも言える。
前任の野田義彦政権が財務省主導の超緊縮財政政策を実施していたため、
日本株価は理論的妥当値よりもはるかに低位に押し下げられていた。
この安くなり過ぎていた株価が財政政策スタンスの修正により、適正な水準に回帰し始めた。
このことが、株価急騰の背景であり、安倍政権はその幸運をそっくり手中に収めたのである。
しかし、財政政策の方針は2014年度に180度転覆された。
消費税大増税が強行されたのである。
その結果、日本経済は大不況に陥った。
このことが、2014年4−6月期から7−9月期の2四半期連続のマイナス成長にくっきりと表れたのである。
窮地に追い込まれた安倍政権は、2014年末に、消費税再増税延期の方針を決定した。
そこに、原油価格暴落という幸運が日本経済に提供された。
日本経済は奈落に転落することを免れて、緩やかな景気改善の道筋に入りかけた。
しかしながら、2015年4−6月期、7−9月期のGDP統計が示すように、
日本経済は再び不況に逆戻りしてしまった。
安倍政権の経済政策には根本的な誤り、構造的な欠陥がある。
この欠陥を是正しない限り、日本経済の本格浮上はあり得ない。
株価は上昇したが、日本経済は浮上しない。
そのメカニズムを解明しなければならない。
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
の11月16日号を以下の内容で発行している。
「中国崩落説・FRB利上げ・国内政治の行方」
<目次>
1.【概観】アベノミクス相場始動から丸3年
2.【米国】イエレン流「利上げの作法」
3.【日本】景気が回復しない理由
4.【為替】円安の終わりの始まり
5.【株価】株価は崩落するのか
6.【中国】周小川総裁が述べたバブルの意味
7.【政局】野党連合より主権者連合
8.【原油・金】米利上げ後を思案する原油・金
9.【投資戦略】小刻みな「逆張り」「利食い」の継続の方針
ご関心のある方には、ご購読を検討いただきたく思う。
「アベノミクス」の「第一の矢」は金融緩和であるとされた。
金融緩和の目的は
円安誘導
と
インフレ誘導
であった。
日銀総裁に就任した黒田東彦氏、副総裁に就任した岩田規久男氏は、
2年後の2015年4月に消費者物価上昇率を前年同月比+2%にまで引き上げることを公約した。
国会同意人事で、岩田規久男氏は、公約を実現できなければ職を辞して責任をとると明言した。
果たして、インフレ率は前年比+2%にまで上昇しなかった。
2015年9月の消費者物価上昇率は、前年同月比0.0%である。
2%にまで引き上げるとしていたが、実績はゼロである。
金融政策に対する信認は完全に崩壊した。
金融政策の有効性を回復するには、まず、両名が辞任するべきである。
岩田氏は、自分が国会でどう発言したのかを、改めて検証するべきである。
私は、2013年3月に上梓した
『金利・為替・株価大躍動』(ビジネス社)
『アベノリスク』(講談社)
において、インフレ誘導の政策が確立されていないことを述べた。
短期金融市場でベースマネーを大量供給しても、
マネーサプライ、マネーストックが増大するメカニズムが確立されておらず、
インフレ誘導が実現する保証がまったくないことを指摘した。
そして、現実は、この指摘が正しかったことを示した。
そして、そもそも、インフレ誘導という政策そのものが、間違った政策であることを指摘した。
インフレによって利得を得るのは、支払う賃金の実質負担を減らすことのできる企業部門、
インフレによって借金の実質負担を減らすことのできる企業部門だけであることを強調した。
企業から支払われる賃金で生活する賃金労働者、年金生活者は、
インフレが進行すれば、その分だけ、実質所得を失う。
また、なけなしのお金をこつこつ貯めて蓄えた貯金は、インフレが進行すると、その実質価値を減らす。
つまり、賃金労働者、年金生活者にとって、インフレ進行は、
「百害あって一利のない」
状況なのだ。
2015年7−9月期のGDP統計で、家計消費が辛うじてプラスの伸びを確保した理由は、
インフレ率がゼロにまで低下して、実質賃金が、
ようやくごくわずかなプラスの伸びを示すようになったからである。
安倍政権が掲げた「インフレ誘導」政策は、完全に失敗に終わったといえる。
他方、「第二の矢」とされた財政政策は、既述したように、2014年に完全に方向を変えた。
「アベコベノミクス」
に変わり果ててしまったのだ。
「アベノミクス」は、もはや、誰も擁護できない、
「完全な失敗」に転じていることが動かせない事実になっている。
このなかで、より重大な問題は、アベノミクス「第三の矢」とされた
「成長戦略」
である。
この点については、すでに
11月12日付メルマガ記事
「低賃金での強制労働と老後は棄民のアベノミクス」
に詳述したので、再度、ご高読いただきたいが、安倍政権の経済政策の致命的欠陥がこの部分にある。
国民の生活の向上が、まったく考えられていないのだ。
安倍政権が追及しているもの。
それは、ひたすら巨大資本の利益を拡大することだけだ。
資本の利益と労働の利益は相反するものである。
生産活動の結果として得られた果実=所得は、資本と労働に分配される。
資本の利益を増やすということは、そのまま、労働の利益=賃金所得を減らすことを意味する。
個人を大切にし、労働者の処遇を改善することを考えず、
ただひたすら、企業の利益を拡大することだけを追求するから経済が浮上しないのだ。
昨日発表されたGDP統計の最大の特徴のひとつは、
企業の設備投資が2四半期連続でマイナスを記録したことだ。
企業利益が拡大すれば、労働者の賃金所得が増大する、設備投資が増大する。
その結果として、経済の拡大循環が成立するとされてきたが、このメカニズムはまったく作動していない。
メディアがアベノミクスの問題点をまったく指摘しないから、
国民はアベノミクスの問題点をまったく理解できていない。
庶民は政策によって引き上げられるのではなく、政策によって沈められようとしている。
それにもかかわらず、その庶民の一部が安倍政権を支持しているのだ。
自分を苦しめる安倍政権を支持することほど、愚かなことはない。
経済政策の基本方向を
「弱肉強食推進」
から
「共生推進」
に転換することが必要である。
「共生」=「友愛」の理念、思想、哲学に基づく経済政策に大転換することが求められている。
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