http://www.asyura2.com/15/senkyo196/msg/581.html
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消費税が付加価値税であるという原則を理解していない人が多い。そのため、消費税の話になると途端に、「都市伝説」まがいのおかしな伝承がはびこることになる。
(学者やメディアのなかにはわかっていながら、ある意図のため間違った説明を意図的に行う人もいる)
その一つの例が、転載する記事にも書かれている「売上高1千万円以下の事業者は現在も消費税が免除され、売り先からもらった消費税と仕入れで支払った消費税の差額が「益税」として手元に残る」といった免税事業者に関するデタラメな説明である。
まず、消費税が「売上高1000万円以下は免税」となっているのは、そのレベルの零細事業者は仕入力も販売競争力もないため稼ぐ付加価値が少ないことから、消費税(付加価値税)を課すと商売が持続できないという認識があるからである。
ベラボーな利益率で売上がまるまる付加価値であっても1千万円だから消費税まで課す必要はないだろうという考えである。(所得税ないし法人税は課される)
「売上高1000万円以下は免税」は、所得が低い人には所得税を課さないのと同じ社会政策なのである。
日本では、付加価値税である消費税を売上税であるかのように錯誤させるため、外税方式なる価格表示方法を認めている。
このため、消費税について、“売り先からもらった消費税”とか“仕入れで支払った消費税”といった類いのゴマカシ説明がまことしやかに流布してしまう。
それが誤った説明であることは、ちょっと考えればわかる。
免税事業者は、「私どもは消費税をいただきせん。価格表示は本体のみの総額表示です」とうたって商売をすることができる。
(「私どもは消費税をいただきせん」という表現は、日本では許されるのだろうが、ウソっぽいのでやめたほうがいい。正しくは「私どもは消費税を転嫁しません」である)
免税事業者が外税方式を採用せず下記のAのように総額で価格表示を行ったとき、「売り先からもらった消費税」という表現は妥当性を失う。
A:総額980円
B:外税方式:本体910円+消費税72円=総額982円
むろん、消費税を納付する義務を負う課税事業者も、総額一本(内税方式)で価格表示ができる。そのときも、消費税をもらっているとは言えない。
それなのにわざわざ消費税をもらっている(預かっている)ように錯誤される外税方式を選択するかと言えば、そのほうが“儲け”を少しでも多く稼げると判断しているからである。
儲けと思われるより、「消費税の分」と思われるほうが、お客はスムーズに支払ってくれると考えているからである。
上に示した例でも、外税方式のほうが1個あたり2円ほど儲けが大きい。
消費税が付加価値(粗利)に課される税であることをきちんと理解していれば、価格は「原価+利益」で構成され、「利益」に対して消費税が課されるとわかっているので、「益税」や「損税」といったデタラメな指弾や非難は消滅するはずである。
最後に、タイトルに付加した「軽減税率と欧州型インボイスの導入で有名無実化する免税事業者制度」について簡単に説明したい。
まず、軽減税率(複数税率)が導入されると、コメや野菜などの生鮮食品には間違いなく適用されるだろうから、これまで90%以上が免税事業者であった農家が課税事業者を選択するようになる。
なぜなら、売上に係わる税率は軽減の8%でありながら仕入に係わる税率は標準の10%という課税構造になるからである。
8%と10%という落差では、肥料や農機具などの購入を意味する仕入率が低い農家は免税を選択したほうがまだ得と言える可能性があるが、標準税率が15%、20%と上がっていけば、間違いなく課税事業者になった方が得で、消費税を納付しないで済むだけでなく“還付”(詐欺だが)まで受けられるようになる。
次に、欧州型インボイスの導入だが、これが導入されると、「免税事業者」は商売がやりにくくなるというか、「免税事業者」は嫌々ながらでも課税事業者を選択せざるをえなくなる可能性がある。
現在は、「免税事業者」からの仕入であっても、消費税の税額計算にあたって、仕入に関わる消費税額を控除することができる。
しかし、欧州型インボイスがそのまま導入されると、消費税課税事業者番号を取得していない事業者はインボイスを発行できないため、「免税事業者」からの仕入分は消費税を控除することができなくなる。
これは課税事業者にとって大きな損失なので、仕入れ先に課税事業者になることを求める。
このように、「軽減税率」や欧州型インボイスの導入は、与党が協議して決めてハイ終わりというわけにはいかない深刻で根深い問題を孕んでいるのである。
◎ 軽減税率導入後の「みなし課税」ついて
記事に、「5千万円以下の事業者は売上高に占める軽減対象品目の割合をあらかじめ設定し、その割合をもとに納税額を推計するみなし課税を選択できる。設定した割合が実際より高ければ、消費税をたくさん受け取る割に納税額が少なくて済む」ともあるが、上記説明でおわかりのように、“消費税をたくさん受け取る割に納税額が少なくて済む”という説明は誤りである。
「「見なし課税」が適用できない一般の事業者に較べて、稼いだ付加価値に対する消費税の負担度が軽くなる場合もある」という説明が正しい。
※ 関連参照投稿
「軽減税率導入の説明責任:選挙に勝てないからと、国民生活に重要な社会保障を削減し高所得者に有利な軽減税率を導入する愚」
http://www.asyura2.com/15/senkyo196/msg/553.html
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売上高1000万円以下は免税 消費税支払い 軽減税率で与党原案
消費税率を10%に上げる際に入れる軽減税率を巡り、自民、公明両党が検討する簡易な経理方式の原案が分かった。年間売上高が1千万円以下の零細事業者は消費税の支払い免除を維持する。5千万円以下の事業者は簡易なインボイス(税額票)か対象品目をどれだけ扱っているかを推計し納税額を決める「みなし課税」を選べるようにする。
5千万円超の事業者は簡易インボイスを使う方式とし、売り上げ規模に応じて3つに分かれる制度とする。
来週の両党の協議で、宮沢洋一、斉藤鉄夫の自公それぞれの税制調査会長がたたき台として示す。2016年度の税制改正大綱をまとめる12月にかけて詳細を詰める。
売上高1千万円以下の事業者は現在も消費税が免除され、売り先からもらった消費税と仕入れで支払った消費税の差額が「益税」として手元に残る。
5千万円以下の事業者は売上高に占める軽減対象品目の割合をあらかじめ設定し、その割合をもとに納税額を推計するみなし課税を選択できる。設定した割合が実際より高ければ、消費税をたくさん受け取る割に納税額が少なくて済む。
[日経新聞11月14日朝刊P.1]
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