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軽減税率導入の説明責任:選挙に勝てないからと、国民生活に重要な社会保障を削減し高所得者に有利な軽減税率を導入する愚
http://www.asyura2.com/15/senkyo196/msg/553.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 11 月 15 日 09:03:22: Mo7ApAlflbQ6s
 


 「低所得者から高所得者への所得移転」になる軽減税率導入の説明をきちんと行う責任があるとし、「後世、軽減税率の導入は愚策と評価される」と正論を語っている(ミスト)氏が、「高度な政治決定が行われた以上、消費税制度の信頼性を高める内容にする必要がある」と“奇妙な”逃げ(選挙に勝つために税制を悪用することをもって高度な政治決定とは言えないだろう)をみせる一方、欧州型インボイス制度の導入を力説するおかしさを見せている

 (ミスト)氏は、インボイス制度を導入するメリットとして3つ掲げているが、どれもあまり意味がないというか空論と言えるものである。

 まず、(ミスト)氏は、複数税率(軽減税率)の導入は、総売上と総仕入から納付すべき消費税を算定できない状況を生み出すため、事業者に多大な税務処理負担を強いることを無視している。

 それを踏まえつつ複数税率が導入されたと仮定し、(ミスト)氏の主張を確認していきたい。

 「第1に消費税のみならず所得税や法人税の正確な納税にも役立つ」という指摘は、インボイスでなくても、これまでの伝票や帳簿でもまったく同じ役割を果たすから意味がない。せいぜい、統一様式のインボイスになっていれば、税務署が調査するさい見やすいというメリットである。

 「第2にインボイスは導入時の初期費用はかかるが導入後は事業者の納税に関する事務負担を軽減する」も、これまでの伝票や帳簿をそのまま使い続けてもまったく同じだから意味がない。

 「第3にインボイスで取引相手に消費税額をきちんと請求できるので、事業者間では消費税の転嫁がスムーズになる」というのは空理空論である。
 取り引きは総額がいくらになるかが問題なのであり、総額を消費税と本体に分けたからといって、消費税をきちんと“転嫁”できるわけではない。
 総額を9800円として、内訳(消費税相当分)をそこから計算するのが大半の取り引き実態である。(売りたい価格を提示して、それに消費税転嫁分を加算してくれるといった奇特な取引先はまずいない)

 (ミスト)氏は、免税事業者とインボイス制度の関連について、「免税事業者はインボイスを発行できないので取引から排除されるというが、欧州諸国の免税事業者は課税を選択する場合も多い。免税では使えない「仕入れ税額控除」が利用できて有利になるため」と説明している。

 しかし、免税事業者が強制ではなく“自主的に”課税事業者を選択するのは、売上に軽減税率が適用される一方で、仕入に標準税率が適用されるようなケースである。
 この場合は「仕入れ税額控除」を利用することで有利になるが、他のケースでは免税事業者のままでいたほうが消費税については有利である。

 「欧州諸国の免税事業者は課税を選択する場合も多い」のは、“自主的”な選択ではなく、取引先から課税事業者になることを求められることが多いからである。
 課税事業者でなければVATのインボイスを発行できないため、「仕入れ税額控除」ができない不利を被ることになる取引先がそのような取り引き相手を嫌う結果である。

 このようなことから、インボイス制度の導入は、免税事業者制度を有名無実にし、売上規模が小さい事業者にも消費税(付加価値税)を負担させることで、シャッター商店街や倒産をよりいっそう増やす悪政と言える。

 そして、これまで免税事業者であった事業者が課税事業者になるため、消費税がきちんと納付されているかをチェックする税務署職員の増員が不可欠になる。(農家だけでも150万事業者)


 「取引相手に消費税額をきちんと請求できる」と説明するような(ミスト)氏は、消費税制度そのものをごまかしているかあまり知らないかのいずれかであろう。(消費税は取引先に転嫁しようとするものではあっても請求できるようなものではない)

 (ミスト)氏は最後に、「仮に事業者の反対の本音が「税務当局に正確な所得を把握されるのは避けたい」ということなら、なにをかいわんやである」と書いているが、インボイスとこれまでの伝票・帳簿方式のあいだで税務署の所得補足に違いがあるわけではない。

 (ミスト)氏の「この問題に政府税制調査会や学会が沈黙しているのは情けない」には激しく同意する。

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[大機小機]軽減税率導入の説明責任

 安倍晋三首相は公明党との選挙協力を進めようと、自民党税制調査会長を交代させて消費税の軽減税率の導入にカジを切った。消費税率の引き上げ時に、低所得者世帯の医療や介護といった自己負担総額に上限を設ける「総合合算制度」の導入を検討していたが、これを見送り、軽減税率の財源を確保するという。

 これは「低所得者から高所得者への所得移転」ということになる。高所得者ほど食料支出額が多いので、軽減税率は高所得者に有利だ。こうした「政策の逆流」を進めるのなら、安倍政権と公明党は国民にきちんと説明する責任がある。

 選挙公約をした、協力がないと選挙に勝てないといった理由で国民生活に重要な社会保障が削減され、高所得者に有利な軽減税率が導入されるのでは多くの国民の理解を得られない。後世、軽減税率の導入は愚策と評価されるだろう。

 ただ、高度な政治決定が行われた以上、消費税制度の信頼性を高める内容にする必要がある。そのカギを握るのは欧州型インボイス(税額票)の導入だ。

 メリットは多い。第1に消費税のみならず所得税や法人税の正確な納税にも役立つ。納税すべき消費税が事業者の手元に残る「益税」や、「不正」を防止でき税制全体の信頼向上につながる。それだけに事業者の抵抗が強いとも言える。

 第2にインボイスは導入時の初期費用はかかるが導入後は事業者の納税に関する事務負担を軽減する。手間がかかるのは複数税率の導入と区分経理であってインボイス導入ではない。

 第3にインボイスで取引相手に消費税額をきちんと請求できるので、事業者間では消費税の転嫁がスムーズになる。日本では特別法をつくらなければならないほど転嫁が問題になるが、インボイス制度ではそのようなことは起こらない。

 また、免税事業者はインボイスを発行できないので取引から排除されるというが、欧州諸国の免税事業者は課税を選択する場合も多い。免税では使えない「仕入れ税額控除」が利用できて有利になるためだ。

 仮に事業者の反対の本音が「税務当局に正確な所得を把握されるのは避けたい」ということなら、なにをかいわんやである。そして、この問題に政府税制調査会や学会が沈黙しているのは情けない。

(ミスト)

[日経新聞11月12日朝刊P.21]

 

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コメント
 
1. あっしら 2015年11月15日 09:10:46 : Mo7ApAlflbQ6s : 6tHhNSC4YI

追記:

 念のため、「高所得者に有利な軽減税率」というのは誤りである。

 日本では、消費税の転嫁ができるだけスムーズになるようにとの“配慮”から外税方式が許されているため錯誤されやすいが、消費税は事業者の付加価値に課されている税であり、軽減税率も、事業者間に有利不利をもたらすだけで、消費者の損得とは無関係である。


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