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日本の政府中枢に「モグラ」がいる! 〜日中朝「スパイ大作戦」の全貌
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46281
2015年11月13日(金) 週刊現代 :現代ビジネス
中国当局に立て続けに拘束された日本人。事件の裏側では、日本政府内に潜伏するスパイ=「モグラ」の存在が疑われていた。知られざる日中朝の諜報戦の内情を、最前線で取材を続ける二人が語り尽くす。
■北≠ノ情報が漏れている
竹内明 先日、複数の日本人が、スパイの嫌疑をかけられて、中国で身柄を拘束されていることが明らかになりました。
多くの人が驚いたと思うのですが、このニュースに関しては、意外なほど続報が少ないですね。菅義偉官房長官が「我が国がスパイ行為をすることは絶対にない」と述べたように、まず日本政府が強く否定していて、情報が出てこない。
そして、現在でも当事者が中国で拘束されたままの状態にあることから、マスメディアでは、なかなか事件の深層や背景を報じにくい状況にあります。
たけうち・めい/'69年生まれ。慶應大学法学部卒業後、'91年TBS入社。ニュース番組「Nスタ」キャスターを務めながら国際諜報戦や外交問題に関する取材を続ける。最新刊『マルトク 特別協力者』
富坂聰 政府関係者は、そうこうしているうちに、世間がこの件を忘れてくれるのを息を殺して待っているのではないですか。
とみさか・さとし/'64年愛知県生まれ。拓殖大学教授、ジャーナリスト。'80年に台湾に渡り中国語を習得、のち北京語言学院を経て北京大学中文系に進む。'94年に21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞を受賞
竹内 そうでしょうね。今回拘束された4人は民間人ですが、うち3人は公安調査庁の協力者だったと報じられています。
富坂 たとえば、中朝国境地帯の遼寧省丹東で拘束された男性ですね。
竹内 ええ。この50代の男性は、現在では日本国籍を取得しているけれども、もともとは北朝鮮からの脱北者でした。
富坂 私もそう聞いています。月1回ほどのペースで中朝国境に入り、ジャーナリストだとか報道関係者だと言って、情報収集をしていた。
ただ彼は、脱北者を支援するNGOの活動もやっていたようですね。中国では「脱北」は不法越境と見なされていますし、海外NGOなどによる人権活動にも敏感ですから、「お前はメディアではなくて、活動家ではないか」ということで逮捕されてしまった。そうしたら、取り調べの中で、公安調査庁に依頼されて情報を集めていたと話してしまったようです。
竹内 そもそも、一般の日本国民からしてみると、「日本のスパイ」と言われてもあまりピンとこないと思うのです。スパイと言えば、『007』のようなイメージで、日本にそんな人々がいるものかと思ってしまう。
富坂 そうでしょうね。
竹内 確かに、米国のCIA(中央情報局)やジェームズ・ボンドが所属している設定の英国のMI6のようなヒューミント(人的諜報)をやる諜報機関は日本にはありません。しかし、日本がインテリジェンス活動をしていないわけではない。
各国の在外公館では、警察庁からの出向者や自衛隊から派遣された防衛駐在官が情報収集にあたっています。ただ、公務員がいわゆる非公然スパイとして、身分を隠して海外に赴き、諜報活動をすることはないわけです。
実質的にその役割を担っているのは、民間の協力者なんですね。
富坂 私自身はやったことはありませんが、海外に出る機会の多い実業家やジャーナリスト、NGOの職員などが、公安調査庁の人間に食事に誘われて、「今度あの国に行くんだったら、こういう写真を撮ってきて」と頼まれたりするわけです。
竹内 私もテレビの取材で北朝鮮に行くことがあるのですが、現地で不審行動は禁物ですよね。そもそも、私は日本政府の情報管理を信用していない。頭をよぎるのは、'99年に北朝鮮当局に拘束され、2年間も帰国できなかった元日本経済新聞記者の杉嶋岑氏の事件です。
富坂 あれもまさに、公安調査庁でしたね。
竹内 ええ。杉嶋さんは'80年代から取材で何度か訪朝していて、そのたびに写真や情報を公安調査庁に提供していた。日本のためと言われて、志に燃えていたのでしょう。しかし、北朝鮮に身柄を拘束されて以降、日本政府のフォローは何もなかった。それどころか、杉嶋さんは帰国してから、こんな証言をしている。
「北朝鮮では、自分が公安調査庁に提供した資料を見せられて、『お前はスパイだろう』と追及され、驚愕した」と。
富坂 日本政府から、北朝鮮に情報が流出していたというわけですね。
■その協力者は信頼できるか
竹内 北のスパイが公安調査庁に食い込んでいた疑いが強まったわけです。
そもそも、日本でインテリジェンスを担っている機関は、いくつかに分かれています。外交を司る外務省。軍事を司る防衛省。カウンター・インテリジェンス、つまり防諜を担う警視庁公安部。蒐集した情報を分析し首相官邸=政権に上げる内閣情報調査室。それらの中で公安調査庁は少し異質なところがある。
富坂 どのような意味で異質なんでしょう?
竹内 公安調査庁は法務省の外局ですが、もともとは破壊活動防止法(破防法)の前身である団体等規制令を所管する組織でした。一連のオウム真理教事件に関連する報道によく登場していましたが、極左、極右の暴力集団やカルトなどを調査する組織です。
富坂 つまり、主に国内の組織を対象とした、ドメスティックな組織だったわけですね。
竹内 本来は対外諜報機関ではないのです。その評価も政府内ではまちまちです。首相官邸で取材をすると、「北朝鮮関連で公安調査庁の上げてくる情報は質が高い」という人もいる。一方で警視庁公安部の外事課の捜査員などは公安調査庁のやり方は危険だと言うんです。
富坂 危険、ですか。
竹内 公安調査庁の調査官はとにかく個人の裁量が広くて、資金力も豊富です。調査官たちは単なる情報収集にとどまらず、CIA的な「協力者を使った工作」に重きを置いています。
同じ「公安」という言葉を冠していても、警視庁の公安部の場合、協力者の運用に際して、俗に「チヨダ」と呼ばれる警察庁警備局警備企画課が危機管理を統括しています。すると、たとえば急に金銭の要求が多くなった協力者はすぐ分かる。
富坂 カネに困っているな、と。
竹内 そういう協力者は、いい情報を持っていると見せるために情報を捏造したり、相手方からもカネをもらって寝返ってしまう危険もある。警視庁公安部の捜査員は、「公安調査庁は我々が切った協力者にも接触している。情報の信頼性に問題がある」と批判していました。
富坂 協力者に依存した情報活動をしているけれども、その信頼性を担保できていないと。
竹内 そうですね。
■「千の砂粒を集める」中国
富坂 中国も協力者の運用を中心にした情報活動を行っていますが、その様子はだいぶ違います。中国にはCIAに相当する国家安全部という組織があって、諜報活動を行っているわけです。彼らの特徴は「千の砂粒を集める」と言われるような、いわば面的な手法です。
竹内 面的、ですか。
富坂 いま中国がもっとも力を入れていることは企業情報、とくに技術情報の収集です。そのためには産業スパイや、外国企業のサーバーに対するハッキングのようなこともする。
しかし、たとえば中国に渡って現地の大学などで科学技術を教えている日本人研究者や企業の元技術者などに会うと、「これからは中国ですよ。私は日中友好の懸け橋になりたいんです」と言う人が多いんですね。
竹内 彼らはスパイではないけれど、日中友好という理想を刷り込まれて、一種の中国シンパになっているわけですね。
富坂 ええ。もちろん、自分でその理想を持った人もいるでしょうが、中国の情報関係者にさりげなくリードされ、本人は自覚もないまま協力者になっていく。
この手法は企業情報の収集に限らず使われていて、米国の政策シンクタンクなどに行くと中国系の研究者がいて、上院議員や政権担当者への助言チームに入っている。中国人研究者が著名な政治家らの名をあげて、「彼らの対中政策の論文は、私が書いたんだ」と言っているのを聞いたこともあります。
竹内 政界工作、諜報の世界で言う「アクティブ・メジャーズ」ですね。
富坂 一人一人は一般の企業人や研究者であるわけですが、少しずつ情報を集め、少しずつ外国の政策や意思決定に影響を与えている。「千の砂粒」と呼ばれる所以ですが、獲得したシンパ、協力者から得られる、細かい情報を大量に集めていけば、やがては重要な機密も得られるというわけです。
竹内 中国は日本国内でも活発に諜報活動を展開しています。'12年に発覚した李春光事件というのがありました。松下政経塾に学んで、日本語は堪能、永田町でも民主党議員を中心に豊富な人脈を築いていた在日中国大使館の李春光一等書記官という人物がいた。
警視庁公安部外事二課、いわゆるソトニでは、李書記官が中国人民解放軍の情報機関・総参謀部第二部に所属するスパイとみて「行確」(行動確認)していたわけですが、農水省の機密文書が、李書記官と関係が深い団体に流出していたことが判明した。日本から中国へのコメの輸出拡大をエサに日本のTPP参加を阻止する工作を展開していたとみられています。
富坂 ただ、李春光氏は外国人登録法違反か何か、微罪で書類送検されただけでしたよね。
竹内 ええ、立件されたのは微罪でしたね。中国のように、反スパイ法があれば話は違ったのでしょうが……(笑)。
富坂 それなんですが、私はちょっと違和感を持つんです。今回の邦人拘束について、「反スパイ法で中国での取り締まりが厳しくなった結果だ」という論調の報道が多かったでしょう。しかし、反スパイ法は'14年11月には施行され、当初から厳格に運用されています。いまさら、反スパイ法が云々というのは妙です。
竹内 では、何が問題だったのでしょうか。
■「モグラ」はここにいる
富坂 習近平政権になってからの中国は、非常に原則論にうるさい国になりました。本音と建前を曖昧にして使い分けるようなことが少ない。
安保法案の審議の中で、日本政府が中国を仮想敵にして、脅威論を強調しましたね。それで中国政府が「うちが仮想敵なら、お前たちのスパイは捕まえて当然だ」という姿勢に変わったのだという話も耳にします。
竹内 実は、警視庁公安部の捜査官からは、立て続けの日本人拘束の裏には、さらに深刻な疑惑があると聞かされました。
あまり知られていませんが、今回報道された4人だけではなく、最近、中国で拘束された邦人は20人近くいるという。そして、その20人の多くは公安調査庁からの接触を受けた人々であるらしいのです。その捜査官は言い切りましたよ。「公安調査庁内部にモグラ(潜入者)がいるとしか考えられない」と。
富坂 スパイが組織の内部に職員として潜り込んでいたり、中国側に取り込まれてしまった職員がいる、ということですか。
竹内 協力者のリストが中国国家安全部に渡っている疑いがあるのです。
富坂 公安調査庁の職員は裁量が広い分、組織のチェックを受けないまま、ときに怪しげな協力者と深い関係になって、感化されてしまう人も出てくるのかもしれない。誰のために働いているのかさえ見失うとしたら恐ろしいことです。
竹内 中国、北朝鮮との諜報戦では、隙を見せればそこを突いてくる。国内にスパイが潜入してくることを防ぐ公安警察の側も奮闘してはいますが、私はこれからは各省が省益にとらわれず、新しい日本のインテリジェンス機関を作っていくべきだと考えています。
富坂 私はその際、日本の情報組織のモデルになるのは、実はCIAなど米英の組織よりも、中国的な「面」での情報収集ではないかと感じています。平和国家の看板を維持しつつ、国際的な情報戦に取り残されないためには、広くさまざまな分野での情報を統合していく、「千の砂粒」モデルが有効だと思うのです。
竹内 そのためにも、本当の意味で民間の力を活用し、日本国民の安全を守っていける態勢作りが欠かせませんね。
「週刊現代」2015年11月14日号より
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