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低賃金での強制労働と老後は棄民のアベノミクスー(植草一秀氏)
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12th Nov 2015 市村 悦延 · @hellotomhanks
アベノミクスがすっかり色あせた。
アベノミクスのうすっぺらなメッキの下には醜いアベノリスクが潜んでいる。
そのアベノリスクが露わになっている。
2012年12月に発足した第2次安倍晋三政権。
「アベノミクス」として「三本の矢」が提示された。
金融緩和
財政出動
成長戦略
しかし、これは、ごく普通の経済政策。
経済政策の三つの手法を挙げろ、と問われれば、この答えが返ってくる。
安倍のみ、「くすっ」
で、誰も笑わないし、誰も驚かないような代物だ。
この陳腐な経済政策を大宣伝したのは、マスメディア。
御用メディア、マスゴミ
である。
安倍首相に幸いしたのは、
前任の野田佳彦氏があまりにひどかったこと、
米国金利が上昇して円安が進行したことだった。
円安が進行すると、もれなく株高がついてくる。
円安が進み、野田超緊縮財政運営で、安くなり過ぎていた株価が正常値に回帰した。
その恩恵を安倍首相が一手に受けた。
しかし、円安、株高が進行したのは最初の半年だけだった。
1ドルが78円から103円になり、
日経平均が8664円から15627円になった。
これをメディアが絶賛して安倍政権が引き揚げられたのである。
2014年は暗転の年だった。
年初から株価は下落。
為替は2013年末に円安に振れたが、2014年に入ってからは横ばい推移だった。
株価が下落したのは、安倍政権が消費税大増税を実行したからだ。
日本経済新聞は
「消費税増税の影響軽微」
の大キャンペーンを展開したが、消費税増税の影響は激烈だった。
最終需要ベースでは2014年4−6月期のGDP成長率が
年率換算で17%のマイナス成長に陥った。日本経済は崩落したのである。
2014年10月に米国株価が下落して、
日経平均株価も14500円の水準に下落したが、米国株価が持ち直した。
安倍政権はここで工作を展開した。
GPIF=公的年金130兆円の資金配分を変更して、
日本株とドル資産への投資比率を大幅に引き上げた。
国内債券への投資比率を引き下げたから、債券が暴落しておかしくなかったが、
日銀が年間70兆円国債を購入する方針を提示して、この暴落を人為的に回避した。
国が発行する国債は年間40兆円。
日本の財政赤字はすべて日銀が引き受け、
さらに30兆円の国債を買うという暴挙が展開されている。
しかし、これらのマニピュレーション=人為的な価格操作は
12月14日に実施した選挙のためのものだった。
選挙のためなら、何でもやる。
これが安倍政権だ。
2015年なかばにかけて株価が2万円を突破したのは、
消費税再増税を延期したことと、原油価格が暴落したことに依っている。
原油価格の暴落も安倍氏の運の強さを示している。
運だけは強い。
しかし、運が尽き始めているのではないか。
経済政策が全体として、まったくうまくいっていない。
「新三本の矢」などという施策が出てきたが、その中身は、あまりにおぞましいものだ。
国民の幸福は一切考慮されていない。
考慮されているのは、ただ、強欲巨大資本の利益だけである。
日本の主権者がこの点に気付かなければならない。
ネトウヨと呼ばれる人々が安倍政権を支持しているようだが、
ネトウヨと呼ばれる人々を安倍政権が大切にするということは基本的にないのである。
そのことをネトウヨと呼ばれる人々は正しく理解しておくべきだと思う。
「新三本の矢」、「一億総活躍」の政策はあまりにもひどい。
この点をよく理解するべきである。
新三本の矢は
GDPを600兆円にする。
出生率を上げる
介護離職をなくす
だが、これは、国民の生活を良くするものではない。
GDPの数値を取り上げても意味がない。
実質経済成長率の目標値を示し、そのための具体策を示すなら意味があるが、
名目GDPの数字に意味はないのである。
しかも、今後、GDP統計の推計方法の改定があり、
その改定によって、数字が30兆円程度かさ上げになると見込まれている。
それを踏まえての目標設定だが、あまりにも姑息な発想だ。
問題は第二と第三の矢だ。
出生率を上げる目的が悪い。
出生率引き上げの目的は、労働力の確保なのだ。
働く人数を増やせば、GDPが増える。
だから、出生率の引き上げなのだ。
介護離職ゼロも、まったく同じ発想だ。
介護離職を減らして労働力が減ることを回避する。
これが目的なのだ。
国民生活の質を高めようというような発想ではない。
働く人数を増やして、そのことによってGDPを増やす。
これがアベノミクスの本質だ。
菅義偉官房長官がテレビ番組で、福山雅治さんと吹石一恵さんの結婚について感想を求められ
「この結婚を機にママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいい」
と発言した。
この発言に、
「新三本の矢」
の本質が明確に示されている。
経済の持続的成長は、消費主導の成長でしか実現しない。
消費が拡大する決め手は、所得が増えることだ。
その際、重要なのは、誰の所得が増えるのかである。
富裕層の所得が増えても消費は増えない。
富裕層の消費の限界消費性向は低いからだ。
富裕層の所得が増えても、増えた所得のうち、消費に回す比率は低い。
消費が増えるには、中低所得者層の所得が増えることが決め手になる。
とりわけ、低所得者層の所得が増えることが重要だ。
つまり、
「格差の是正」
が経済の安定成長を実現するために不可欠な施策である。
ところが、安倍政権の政策は逆だ。
中低所得者の所得を減らす政策だけを実行している。
一方で、高所得者の所得を増やすことだけは猛烈に推進している。
消費税を大増税して、法人税は減税しているのだ。
これでは、景気は回復しない。
現実に安倍政権の下で景気回復は実現していない。
この政策失敗を隠すために、働く人数を増やす方向に政策の舵を切ったのだ。
人数は増やすが、一人一人の労働者の所得は削減する。
新しい貧困層が、安倍政権によってさらに生み出されてゆくのだ。
そして、安倍政権が参加方針を示しているTPP。
国民生活にもっとも深刻な影響を与えるのは、国民保険医療の崩壊である。
いつでも、だれでも、どこでも、必要十分な医療を受けられる制度が崩壊することになる。
実は、安倍政権にとって、生産年齢を超えた国民の長生きは迷惑なのだ。
働ける年齢にある間は、一人残らず、低い賃金で働かす。
生産年齢を超えたら、医療を与えず、早くに死んでもらう。
早く死んでもらうことによって、社会保障支出を切り詰めることができる。
安倍政権が提示する
「一億総活躍」
の真意は、
「一億総動員」
であり、
年をとったら「姥捨て」を制度化しようということである。
日本は「女工哀史」の時代に突入させられつつある。
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