http://www.asyura2.com/15/senkyo196/msg/416.html
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安倍首相が「改憲は緊急事態条項から」。阪神、東日本大震災などの災害弁護士たちは不要だと言っています。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/5a1455de0caa12b60cf219f19896b4df
2015年11月11日 Everyone says I love you !
災害復興とそのミッション―復興と憲法
片山 善博 (著), 津久井 進 (著)
クリエイツかもがわ
憲法違反とまでいわれながらも「住宅再建の支援策」を実施した片山善博鳥取県知事(当時・現在慶應義塾大学教授)が「ミッション」という視点から災害復興と憲法を論じる。若き法律家津久井進弁護士が憲法を再発見。
たった2日間しか開かない国会。
新閣僚の所信表明演説もなく、安保法制だけでなく、TPPやマイナンバー、政治とカネの問題など喫緊の課題が山積で、憲法53条に従って野党が臨時国会を開くように要求したのに開かない。
安倍政権の憲法無視の立憲主義破壊の態度はもはや異常です。
安倍首相、憲法には「臨時国会を召集しなければならない」と書いてあるのに、何を与党と相談するのですか?
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/cd23d5d29ef110e5e40a47b25c8bd2ab
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さて、そんな少ない時間の中、安倍総理は衆院でも参院でも、憲法改正への意欲、なかでも緊急事態条項の導入について強く主張しました。
本日2015年11月11日の参議院予算委員会では、自民党の山谷えり子議員が
「安全を巡る環境は急変するなか『憲法改正が必要では』という大きな声が上がっている。感染症や大規模な災害への対応など、国民の生命・財産を守るためには、憲法に『緊急事態』を規定することが必要であり、議論を深めていくべきではないか」
と質問しました。これに対して、安倍総理大臣は
「大規模な災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るため、国家そして国民自らがどのような役割を果たしていくべきかをですね、憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く大切な課題であると考えています。
新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民的な議論と理解が深まるようですね、努めてまいりたいと、こう考えております」
と述べました。
前日の衆院予算員会でも、安倍首相は岡田民主党代表の質問に答えて、
「(自民)党において、緊急事態条項からやるべきだという議論もかなり有力だ」
と言っています。
もちろん、戦争放棄と武力の不保持を定めた憲法9条についても
「国民の命と平和な暮らしを守っていく上で9条改正が必要であると、自民党の総意として(憲法改正)草案をまとめた。その考え方に変わりはない」
と念を押すことは忘れませんでしたが。
しかし、本当に緊急事態条項は緊急の課題なのでしょうか。
日本弁護士連合会には、災害弁護士と呼ばれるエキスパートたちがいます。
その中で、阪神大震災で被災した兵庫県弁護士会の永井幸寿弁護士は
「災害をダシにして、憲法を改正してはならない」
「災害への対策は『事前に準備していないことは、できない』というのが原則。国家緊急権は『事後の応急対策』にすぎない。災害がおきた後に、憲法を停止しても何もならない」
「災害への緊急対策は、現場に近い市町村が主体的に動くべきで、国家はあくまでそれをサポートする役割だ」
と述べています。
また、緊急災害に対処する仕組みとしては、すでに「災害対策基本法」があり、さらに万が一の際には、すでに日本国憲法にも「参議院の緊急集会」といって、衆議院が開催できない場合に、参議院が国会機能を代行する制度が、憲法に盛り込まれていると指摘しています。
大災害と法 (岩波新書)
津久井 進 (著)
岩波書店
地震、津波、台風、豪雨、噴火など、毎年のように日本列島を襲う大規模災害。なぜ国、自治体の対応は遅いのか。どうして被災者に救助の手が届かないのか。東日本大震災を経たいま、災害に関する複雑な法制度をわかり易く解説した上で、その限界を明らかにし、改善策を探る。被災者のために、法は何をなし得るのか。
さらに、永井弁護士は
自民党の憲法改正草案にある「国家緊急権」には次のような問題点があるとしています。
(1)緊急事態の発動要件を法律で定められること。
(2)緊急事態の期間に制限がないこと。
(3)内閣の承認が得られない場合の規定がないこと。
(4)できる範囲に限定がないこと。
「災害救助法」徹底活用 (震災復興・原発震災提言シリーズ)
津久井 進 (著), 永井 幸寿 (著), 田中 健一 (著), 山崎 栄一 (著), 出口 俊一 (著)
クリエイツかもがわ
大災害のあとに適用される災害救助法。理解と運用は災害対応の基本、復興への重要な備え。被災者救助の徹底活用法と災害救助制度の課題をはじめて提起する画期的な本。
また、東日本大震災で大活躍した岩手県弁護士会の小口幸人弁護士も
『日本は、憲法上の国家緊急権はないけれども、こうした災害に関する「法律上の国家緊急権」は山ほどあるんです。
よく
「外国の憲法には国家緊急権がある。日本にないのはおかしい」
といいますが、外国が憲法で定めているものよりよっぽど精密なものを、日本では法律のレベルで定めて、しっかり機能するように整備されているんです。』
と言っています。
Q&A 被災者生活再建支援法
津久井 進 (著)
商事法務
自然災害で住宅が全壊等した被災者に対する公的給付制度について、被災者、法律実務家、行政担当者に向けて、Q&Aにより具体的に分かりやすく解説。
そのうえで、逆に憲法に国家緊急事態条項が制定される危険性について、小口弁護士はこう述べています。
「自民党草案の条文では、何人も「国その他公の機関の指示に従わなければならない」とあります。
現行の災害救助法や災害対策基本法では、指示の内容によって「命じられる」「協力を要請できる」と言葉が使い分けられていますし、指示できることも限定されていますが、ここではそれもありません。
普通の読み方をすれば、緊急事態には一定程度人権を制限されてもしょうがない、ということになります。
もちろん、今の法律でも一定の人権制限はできますが、それが過度にならないように、必要十分なことは何か、不当に制限しないためにはどこまでか、ということがしっかり考えられてバランスを取ってある。あくまで法律なので、憲法の範囲内に収まるよう、不当に人権を制限しないよう調整した上でつくられているわけです。
ところが、憲法上に「従わなければならない」ということが書かれると、同じ憲法レベルということで、「こっちの必要性が上がったからこっちの権利は制限する」という乱暴なことが可能になり、不当に人権が制限される恐れがあります。
緊急時に、その場で慌てて判断したら、広く、過剰に制限される可能性は大でしょう。」
阪神大震災以降、災害弁護士の第一人者として活躍している津久井進弁護士(元同僚で、うちからブログをリンクさせてもらっていますhttp://tukui.blog55.fc2.com/)は、こう警鐘を鳴らしています。
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皆さんにも肝に銘じておいていただきたいと思います。
『「大災害への対策だ」という大義名分を冠に載せると、社会もメディアも、何となく無批判に受け入れてしまう。
国民も、何となく良いことと受け止め、それ以上は深く考えない。
東日本大震災の直後に日経電子版が行ったアンケートでは、災害への対処や防災等のための私権制限に賛成する意見が約8割にのぼり、賛成派議員の論拠にもなった。国民の善意はよく理解できる。
しかし、緊急事態条項を設けたら、真っ先に制限や束縛を受けてしまうのは、被災地の人々や避難した人々であるという想像力は働いていただろうか。』
参考記事
マガジン9条http://www.magazine9.jp/
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小口幸人さんに聞いた
http://www.magazine9.jp/article/konohito/23087/
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災害の現場で必要なのは「国家緊急権」ではない
緊急事態条項の導入は「災害」を名目にした「戦争への準備」
http://www.magazine9.jp/article/konohito/23097/
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関連記事
憲法記念日 安倍政権の「自由民主党 日本国憲法改正草案」に見る緊急事態条項=戒厳令の恐怖
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/2f3f8c8cff5088b3875067eb627e0036
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安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖1 緊急事態条項=戒厳令の明記
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/c5f5f11e6dd5b06b3d3c1f1b47321a6f
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緊急事態条項を名目とする改憲は、それが「お試し改憲」と言われるように9条などの改憲の尖兵であることも危険です。
しかし、なにより、緊急事態条項そのものの危険性は凶悪です。
国家に、表現の自由や財産権や居住・移転の自由といった国民の基本的人権を停止できる「大権」を渡してしまうところが何より恐ろしい。
◇
緊急事態条項の新設は「大切な課題」 安倍首相が強調
http://digital.asahi.com/articles/ASHCC31D4HCCUTFK001.html?rm=514
2015年11月11日15時25分 朝日新聞
参院予算委員会は11日、国会が閉じている際の質疑の場となる閉会中審査を開いた。安倍晋三首相は、憲法改正について「緊急時に国民の安全を守るため、国家、国民自らがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかは極めて重く大切な課題だ」と述べ、現憲法に規定がない緊急事態条項の新設が重要なテーマになるとの考えを示した。
緊急事態条項は大災害時や有事(戦争)での政府・国会の権限や議員の任期を定めるもので、自民党が2012年にまとめた憲法改正草案にも盛り込まれた。公明党や民主党内にも何らかの規定が必要との意見がある。首相は「憲法改正には国民の理解が必要不可欠で、具体的内容についても国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくる」と述べ、国会などでの議論に期待を示した。
首相はまた、日米など12カ国が合意した環太平洋経済連携協定(TPP)について、韓国やインドネシアなども参加を検討していることを念頭に「大筋合意されて以来、各国が参加に関心を示している」と言及。その上で「基本的価値を共有する国々と経済的相互依存関係を深めることは、我が国の安全保障にもアジア太平洋地域の安定にも資する」と意義を語った。
ログイン前の続き今月、3年半ぶりに開かれた日中韓首脳会談について、首相は「前提条件を付けずに行うべきだと一貫して主張し、実現した。日中韓の首脳とも地域の平和と安定に責任を共有するという共通認識を示すことができた」と成果を強調した。
野党側が求める憲法53条に基づく臨時国会の召集について首相は、「憲法53条は召集時期については何ら触れられておらず、時期の決定を内閣に委ねている。国会で審議すべき事項などを勘案しつつ、様々な検討を行っている」と答弁。開会に消極的な構えを崩さなかった。自民党の山谷えり子氏、渡辺猛之氏、民主党の小川敏夫氏らの質問に答えた。
首相「憲法の在り方巡り国民的議論深めたい」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151111/k10010301751000.html
11月11日 12時32分 NHK
安倍総理大臣は、参議院予算委員会の閉会中審査で憲法改正を巡り、大規模な災害などに対応する「緊急事態」の分野は「極めて重く大切な課題だ」としたうえで、憲法の在り方を巡る国民的な議論や理解が深まるよう努めていく考えを示しました。
国会は、10日の衆議院予算委員会に続いて、11日は参議院予算委員会の閉会中審査が行われています。
この中で、自民党の山谷前国家公安委員長は「安全を巡る環境は急変するなか『憲法改正が必要では』という大きな声が上がっている。感染症や大規模な災害への対応など、国民の生命・財産を守るためには、憲法に『緊急事態』を規定することが必要であり、議論を深めていくべきではないか」と質問しました。
これに対して、安倍総理大臣は「大規模な災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るため、国家そして国民みずからがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかは、極めて重く大切な課題だ」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「憲法改正には国民の理解が必要不可欠であり具体的な内容についても国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくる。引き続き、新しい時代にふさわしい憲法の在り方について、国民的な議論と理解が深まるよう努めていきたい」と述べました。
民主党の徳永エリ参議院議員は「TPP=環太平洋パートナーシップ協定は、農業や自動車の関税だけでなく医療や労働、それに食の安全・安心など、私たちの生活にどんな影響があるのか不安な要素はたくさんある。日本はどう変わるのか、抽象的なスローガンばかりでは全く分からない」とただしました。
これに対して、安倍総理大臣は「TPPは、アジア太平洋地域において、自由や民主主義、法の支配などの基本的な価値を共有する国々とともに、21世紀にふさわしい新たな経済ル−ルを作っていき、人口8億人、世界経済の4割近くを占める広大な経済圏を生み出すものだ」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「大切なのは、新たなル−ルが作られ、恣意的(しいてき)で不透明な政府の介入を排除していくことだ。透明性の高い秩序の下で、自由で公正な競争を促進していくことになり、イノベーション=技術革新を起こして、マーケットを拡大させていく大きなチャンスを得ることができた」と述べました。
日銀総裁「量的・質的緩和 続ける」
一方、日銀の黒田総裁は、いまの金融緩和策について、「いまの時点で、いわゆる生鮮食品を除く消費者物価の上昇率は0%近傍で推移しているが、エネルギー項目を除くとプラス1.2%というのが一番直近の数字であり、そういう意味では、まだ道半ばというところだ」と述べました。
そのうえで、黒田総裁は、「いまの量的・質的緩和を続けていく。『いつ出口で、どうする』ということは、まだ道半ばなので、2%の物価目標の実現に向けて着実に、しっかりとこの量的・質的金融緩和を進めていくということに尽きる」と述べました。
自民党の憲法改正草案「国家緊急権」は導入すべきかーー弁護士が「危険性」を指摘
https://www.bengo4.com/other/1146/1287/n_3847/
2015年10月23日 11時55分
小林節・慶大名誉教授(左)と永井幸寿弁護士(右)
大災害や戦争などの非常事態が起きた際、総理大臣に権力を集中させる「国家緊急権」。現在の憲法では認められていないこの制度を、憲法改正によって導入すべきなのか。そんな問題を考える意見交換会が10月21日、東京都内で開かれた。
意見交換会は、震災などの被災者支援の経験から、国家緊急権の創設に反対している弁護士たちが、条件つきで国家緊急権の導入を支持する小林節慶大名誉教授を招くという形で行われた。
国家緊急権は、自民党が公表した改憲草案に含まれており、「憲法改正」をめぐる今後の議論で注目を集める可能性がある。
●緊急事態に国家に権限を集中させる理由とは?
国家緊急権は、アメリカの憲法などで認められているが、なぜなのか。その理由について、憲法学者の小林氏は次のように説明する。
「大災害などの際には、法律がないからといって、すったもんだやってる場合じゃなくなる。内閣総理大臣に大権を集中してスピーディに動くことが大事だ。非常事態が去った時点で、総選挙をして民意を仰ぎ、補償をすればいい。ただ、国家緊急権はある意味危険なので、憲法上の根拠が必要だ」
小林氏は「もし私に白紙から憲法を書かせてもらえるなら、人権を制限された人への補償や、非常事態が終わった後に解散総選挙をすることなどを盛り込んだ、世界に比類なき、安全な緊急事態条項を書きたいと思っている」と話した。
●日本には緊急災害に対応する制度がすでにある
一方で、阪神大震災で被災した兵庫県弁護士会の永井幸寿弁護士は「災害をダシにして、憲法を改正してはならない」と強調。「災害への対策は『事前に準備していないことは、できない』というのが原則。国家緊急権は『事後の応急対策』にすぎない。災害がおきた後に、憲法を停止しても何もならない」と話した。
永井弁護士は「災害への緊急対策は、現場に近い市町村が主体的に動くべきで、国家はあくまでそれをサポートする役割だ」と指摘。仮設住宅の用地をめぐる交渉でも、住民に顔がきく市町村職員が頼んだほうが、国から仕事を請け負った業者が頼むよりもずっとスムーズにいくと説明した。
また、緊急災害に対処する仕組みとしては、すでに「災害対策基本法」がある。さらに万が一の際には、「参議院の緊急集会」といって、衆議院が開催できない場合に、参議院が国会機能を代行する制度が、憲法に盛り込まれているとした。
●「アメリカと日本では状況が違う」
だが、海外には、アメリカのように国家緊急権を認めている国もある。日本もそれにならうべきではないのか。
その点について、永井弁護士は「アメリカでは、国家緊急権が憲法上認められ、何度も行使されているが、あの国は大統領と議会の権力がハッキリ分立し、司法が違憲判決をバンバン出す国だ。日本とは状況が違う」と指摘。アメリカと違って議院内閣制をとっているうえ、司法も違憲判決に消極的な日本で、国家緊急権を導入することは、「危険性ばかりが高い」と主張した。
実際、自民党の憲法改正草案にある「国家緊急権」には次のような問題点があると、永井弁護士は指摘した。(1)緊急事態の発動要件を法律で定められること。(2)緊急事態の期間に制限がないこと。(3)内閣の承認が得られない場合の規定がないこと。(4)できる範囲に限定がないこと。
一方、小林教授は「国家緊急権の概念は、理論的に不要とは言い切れない」としながらも、「非常時に、権力側が一方的に『国を預かりました』とするだけなら、私も賛成できない」と意見を表明。「災害が起きたあと、総理大臣が大元帥みたいになって、突然何かしようとしてもどうなるものでもない。すでに法律が整っている今の日本で、国家緊急権の議論をする必要はないだろう」と締めくくっていた。
(弁護士ドットコムニュース)
津久井進 ファンになる
http://www.huffingtonpost.jp/susumu-tsukui/
弁護士、日弁連災害復興支援委員会副委員長、公益財団法人ひょうごコミュニティ財団監事ほか
災害対策の現場からみた憲法改正「国家緊急権」創設の危うさ
http://www.huffingtonpost.jp/susumu-tsukui/national-emergency-rights_b_6710650.html
投稿日: 2015年02月19日 16時05分 JST 更新: 2015年02月19日 17時09分 JST
与党・自民党は、次の参議院選後を目処に、緊急事態条項すなわち「国家緊急権」の新設を含む、改憲の国会発議を行う意向を明らかにした。
国家緊急権とは、自然災害や戦争などの緊急事態に、憲法秩序を一時停止して、非常措置を行う政府の権限のことをいう。
災害対策の現場からすると「国家緊急権」はいらない。理由は3つある。
■それ自体とても危ない
ひとつ目は、国家緊急権は、それ自体とても危ないからである。
要するに国家緊急権は、危機に瀕したときは政府に全てをお任せしてしまうということだ。しかし、たとえ緊急時といえども憲法秩序を取っ払ってしまうことには強い懸念がある。憲法は、一人ひとりの生命や財産や権利を守るために、政府に義務を負わせ、暴走に歯止めをかける法システムである。つまり、災害などで市民の人権が危機に瀕しているときにこそ、まさに憲法の出番なのだ。ところが、逆にこうした憲法秩序を停止してしまい、「何人も‥国その他公の機関の指示に従わなければならない」(自民党憲法改正草案99条3項)というのだから、国民の目から見ればまったく本末転倒である。歴史を振り返ってみれば、緊急事態に政府が誤りを犯した愚例は枚挙に暇が無い。
■日本の制度は十分整っている
ふたつ目は、国家緊急権などなくても日本の制度は十分整っているからである。
諸外国には国家緊急権の規定があるのに、日本にはそれがない、とよくいわれる。それは日本の法制が劣っているからではなく、むしろ優れているからである。自然災害についていえば、我が国の災害対策基本法のように、精緻に整備された制度は類を見ない。それは、災害が圧倒的に多い日本だからこそ蓄積された教訓があるからこその重みであり、戦争と災害をごちゃまぜにしている大陸法系の法制度よりずっと練られている。この災害対策基本法の中には、きちんと「災害緊急事態」の章が設けられており、災害緊急事態の布告の規定もある。いざという時の法の備えは既に存在している。しかるに、あたかも不備があるかのように強調するのはペテンだし、国家緊急権を設けようとする動きは、法の無知に乗じたアンフェアな姿勢だと思う。
■国家緊急権があっても使えない
みっつ目は、国家緊急権があっても使えないからだ。
思い出して欲しい、東日本大震災の直後の政府の対応を。被災者を助けるための「災害救助法」があるのに、それを正しく活用しない。惨憺たる被災地を応援する「災害対策基本法」の規定があるのに、それを適用しない。地球規模の緊急事態である原発事故に際し、情報を隠蔽し、予定された法システムを無視し、「子ども被災者支援法」を制定したのに実行しない。要するに、たとえ良い制度があっても使い方を知らない、想定をしていない、訓練をしていないから、こうした愚かな結果を招いたのである。あまつさえ、特別増税で集めた復興財源を、「復興基本法」を悪用して被災地と無関係に流用する。国土強靱化の名目で公共投資を繰り返す。「政府は間違うことは無い」と心底信じている人がどれだけいるのだろうか。既存の法制度さえ正しく使えない政府に、あぶない道具を持たせるわけにいかないのである。
■「災害対策」の大義名分による思考停止
ところが、「大災害への対策だ」という大義名分を冠に載せると、社会もメディアも、何となく無批判に受け入れてしまう。
国民も、何となく良いことと受け止め、それ以上は深く考えない。
東日本大震災の直後に日経電子版が行ったアンケートでは、災害への対処や防災等のための私権制限に賛成する意見が約8割にのぼり、賛成派議員の論拠にもなった。国民の善意はよく理解できる。しかし、緊急事態条項を設けたら、真っ先に制限や束縛を受けてしまうのは、被災地の人々や避難した人々であるという想像力は働いていただろうか。
2012年度の衆参両議院の憲法調査会でも国家緊急権について活発な意見交換が行われ、同年7月の中央防災会議が公表した最終報告では、現行の災害緊急事態の緊急措置を拡張して、有事法制である国民保護法制などを参考に、国家存立対策や法整備が必要だと指摘した。彼らは、本当に現行の法制度を正しく理解していたのだろうか。
私たちは、国家緊急権を取り入れるがごとき愚行は、絶対に避けなければならない。
■忘れてはならない歴史の教訓
忘れてはならない出来事を3点だけ挙げておく。
第1に、関東大震災では、旧憲法下の国家緊急権(緊急勅令)が適用された。多数の外国人や思想家たちが虐殺されたが、その契機となった悪質なデマの出元は、海軍省船橋送信所の9月3日午前8時15分の各地方長官宛の打電であるというのが定説である。わずか約90年前の出来事である。
第2に、最も優れた近代憲法といわれるドイツのワイマール憲法には第48条に国家緊急権の規定があり、社会不安の中でこれが乱用され、全権委任法が制定され、ナチスの独裁につながっていき、世界中を戦火に巻き込んでいった。
第3に、ごく最近、10年前に米国で起きたハリケーンカトリーナ災害では、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)の失態に加え、大統領の非常事態宣言の後に、警察による市民の誤殺事件や被災者の遺棄などの事件が起きた。レベッカ・ソルニットは著書「災害ユートピア」の中で、こうした為政者が陥るパニックを「エリートパニック」といって、災害のたびに起きる普遍的現象であると指摘している。
東大の法哲学者の尾高朝雄は「国家の生命を保全せねばならぬ、という何人も肯わざるを得ない主張の蔭には、国家緊急権の旗旌をかざして国家の運営を自己の描く筋書き通りに専行しようとする意図が秘められやすい」と述べた(『国家緊急権の問題』法学協会雑誌62巻9号 1943年)。
70年余経った今、社会は、まさに同じ状況に直面している。
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