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NHK公式ホームページより
NHKが「受信料義務化」の前にやるべきこと〜低視聴率でも「質が高い」と居直っている場合か
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46318
2015年11月11日(水) 高堀 冬彦 現代ビジネス
■不公平な「受信料」
国民の三大義務といえば、「教育」「勤労」「納税」。これに「NHK受信料の支払い」が新たな義務として加わろうとしている。
「教育や勤労、納税と受信料を同列化するのはオーバー」という声もあるに違いないが、本当にそうだろうか? 受信料の負担感は税金以上に重いかもしれない。
税金を支払っていると、思想や信条を一切問われず、数々の公共サービスが受けられる。ところが、受信料が義務化されると、「NHKは偏向しているから嫌い」という人はもちろん、「つまらないから一切見ない」という人にすら、同一料金の支払いが求められる。むしろ税金より割高かもしれない。
そもそも受信料は摩訶不思議な料金なのだ。たとえば、電気料金の場合、電化製品を持っているだけで支払いを要求されることはない。その電化製品を使わないかもしれないし、自家発電で賄う方法もあるのだから。だが、受信料はテレビが見られる環境下にあるというだけで、支払いを求められる。
電気代は使用量によって違う。従量制だ。水道やガスなどもそう。ところが、NHKの場合は1日に10時間以上見る人もまったく見ない人も料金は同じ。基本的には、独居世帯も大家族も変わらず、テレビを何台持っていようが均一。究極の固定制である。
これでは公平とは言えない。今回の受信料義務化案については「受信料の公平負担のため」という名目があるが、受信料は最初から不公平な制度なのである。
そんなこともあり、放送法上ではNHKと視聴者の間に受信契約の締結義務があるものの、事実上は両者の信頼関係の上に受信料制度が成立していた。1964年に出された臨時放送関係法制調査会の答申においても「受信料とは、NHKの維持運営のため、法律によってNHKに徴収権の認められた特殊な負担金と考えるべきである」とされた。
税金やほかの公共料金とは性質が異なるのだ。だから、支払わなくても罰則がなかった。
■信頼をかなぐり捨てたNHK
ところが、その信頼関係は崩れているらしく、現在の支払い率は75.6%(2014年末)。NHK側は前年よりアップしたと強調しているが、約4分の1が不払いという事実は重い。
しかもNHKは2012年まで都道府県別等の詳細な支払い率を公表していなかったので、それ以前の支払い率との比較ができない。昭和期は紅白歌合戦、大河ドラマ、連続テレビ小説の視聴率が今とは比べものにならないほど高く、ニュースに対する信頼も厚かった。
不払い率の高まりを受けて、NHKは2006年度から強硬策に転じた。信頼関係をかなぐり捨てた。不払い者に対しては民事上の督促などの法的手段を講じ始め、訴訟もあちこちで起こすように。
だが、最初から契約を結んでいない世帯に対しては支払いを求める根拠がない。契約を無理に迫ると、消費者契約法に触れるとの指摘すらある。このため、契約がなくても支払いを迫れる受信料義務化はありがたい話なのである。
トップの籾井勝人会長(72)も3月に国会で「(受信料の支払いを)義務化できれば素晴らしい」と、諸手を挙げて賛成している。これまで数々の舌禍問題を起こし、国内外から批判され、おまけにNHKのOB約1500人から辞任要求まで突きつけられている籾井氏だが、受信料支払いの義務化が実現できたら、NHK史に長く名を残せるだろう。
だが、義務化を実現する前に解決しなくてならない問題が山ほどある。
まず、NHKは受信料で運営されながら、視聴者の声がまず反映されない。報道番組の偏向問題についてもそうだが、分かりやすい例を先に挙げると、ドラマだ。視聴者の声が反映されていたら、もう少し視聴率の高い番組が作られているはずだ。
連続ドラマ『デザイナーベイビー』(火曜午後10時)の平均視聴率は4%台。同じく連ドラの『破裂』(土曜午後10時)は3%台。どちらも悪い作品とは言わないが、民放なら打ち切りが検討されるレベルである。テレビを所有する全世帯と事業所から受信料を取ろうとする放送局の数値としては低すぎる。
こういう指摘をすると、決まってNHK側は、「うちの番組は質が高い」と答える。だが、その質は誰の評価なのか? 結局は自己評価に過ぎない。そもそも『デザイナーベイビー』の制作は日本テレビの子会社のアックスオンが行っており、NHKが「うちの番組」と言える筋合いではない。
■視聴者に発言権がないのはおかしい
今回、受信料支払いの義務化を推進するにあたり、よく引き合いに出されるのはイギリスのBBCだ。BBCは受信料の支払いは義務。だが、組織の性質がまるで違う。
BBCは視聴者から公募で選ばれたトラストのメンバーによって厳格に監督されている。その上で独立性を堅持し、時には政権とすら対峙する。ところが、籾井氏が「政府が『右』と言っているのに、『左』と言うわけにはいかない」と公言した人物なのは知られている通りだ。
籾井氏は選良である民主党議員と激しい口論も繰り広げたこともある。同じく共産党や生活の党から「不公平」と抗議を受けたことも。BBCは公共放送だが、現在のNHKは政府放送、あるいは政権放送と呼ぶべきなのかもしれない。
その籾井氏を任命したのはNHK経営委員会だ。委員会のメンバーは視聴者の代表などではなく、安倍晋三首相(61)の幼少時の家庭教師だった本田勝彦・日本たばこ産業顧問(73)たちだ。本田氏は委員長職務代行を務める。籾井氏からすれば、政府に寄り添うのは当たり前なのかもしれない。受信料の義務化だけはBBCに倣うというのでは、虫が良すぎる。
NHKの報道番組は偏向が問われているだけでなく、質も疑問視されている。昨年5月には『クローズアップ現代』の「出家詐欺」報道で、やらせ疑惑が浮上した。
詐欺を斡旋するブローカーとされる男性と多重債務者とされる男性が相談する部屋を隠し撮りしたように報じたのだが、実際には記者も部屋に同席していた。おまけに債務者とされる人物は記者と旧知の間柄。ほかの番組に違う立場で登場したこともあった。
その上、ブローカーとして登場した男性も放送終了後に「自分はブローカーではなく、やらせ」と告白。もはや言い逃れできないはず。ところが、今年4月にNHKが発表した調査報告書は「『やらせ』は行っていないと判断する」だった。
番組が継続しているのは御存じの通りだが、民放なら終了しているはずだ。スポンサーが黙ってはいない。だが、NHKはスポンサーであるはずの視聴者に発言権がないから、すべてお手盛りになりがちなのだ。どんなに低視聴率であろうが、「うちの番組は質が高い」と胸を張るのと同じ構図である。
11月6日、BPOの放送倫理検証委員会(委員長・川端和治弁護士)は「NHKが『やらせではない』と結論付けたのは、やらせの矮小化」との見解を発表。「番組は事実と著しくかけ離れた情報を数多く伝え、正確さに欠けており、裏付け取材もしていない」と断じた。これでは報道の質もBBCとは比べものにならない。
だが、視聴者に発言権がないだけでなく、BPOにも強制権がない。つまり、NHKは政権に睨まれない限り、視聴率が悪かろうが、質が問われようが、怖いものなしの組織体なのである。
事実、NHK側はBPOの発言を受けて、ひるむどころか、「我々の調査結果がおおむね認められた」(板野裕爾・放送総局長)と声明している。
■NHKと政権にとって、両刃の剣に
さて、受信料の義務化が急浮上したのは9月である。自民党の小委員会がNHK受信料の支払い義務化を求める提言をまとめると、これを受けて菅義偉官房長官(66)が、「受信料の公平負担は極めて大事」、「提言を踏まえて総務省で適切に検討することが望ましい」との考えを示した。
先に自民党の提言があったように映ったが、それを真に受けた放送記者や総務省担当記者はいないだろう。放送行政を監督する総務省に睨みを利かせ続けているのは、ほかならぬ菅氏自身なのだから。
そもそも受信料の義務化が取りざたされ始めたのは2007年。当時の総務相だった菅氏が、受信料の2割値下げとのセットで提案したのだ。だが、NHKが値下げに難色を示したため、見送られた。
今回は籾井氏が義務化に積極的だから、一気に事が運ぶに違いない。義務化は現政権にもプラス。NHKに恩を売れる。89年に消費税を導入した故・竹下登元首相が、今でも財務省関係者から崇められているのは知られている通りである。
賛否両論あった原発再稼働や安全保障法制もひるまずに進めた現政権だから、受信料義務化も押し通すだろう。だが、返り血も浴びるはずだ。まず、受信料不払いの約25%の判断が国政選挙で下される。とりわけ注目されるのは沖縄だ。
沖縄は支払い率が50%以下。72年に本土復帰を果たすまで、受信料制度が存在しなかったためだが、復帰から50年近くが過ぎているので、背景にはNHK不信もあるだろう。現政権は基地問題等で沖縄と対立しているが、受信料の義務化が新たな火種になりかねない。半数以上の世帯にとって、事実上の増税なのだから。NHKを見ていない世帯にも支払いを義務付けるので、増税以上のインパクトかもしれない。
NHK側にも予想しない余波があるに違いない。職員に向けられる目は公務員並みに厳しくなり、不祥事やインモラル行為は今以上に許されなくなる。賃金も現時点で、大卒モデル年収が30歳で555万円、35歳で693万円(2014年度)などと簡単に発表されているが、これも公務員並みに透明化が迫られるだろう。
職員の採用方法、勤務実態についてもガラス張りが求められることになる。「職員には政治家の子息が少なくない」とよく言われるが、縁故採用など許されはずがない。
組織全体の見直し論も浮上するだろう。地上波の総合テレビすら低視聴率番組が少なくないのに、ほかに教育テレビ(Eテレ)と2つのBS、ラジオはAMが2つとFMがある。これほどネットが普及し、テレビ・ラジオ全体の視聴率と聴取率が落ちている時代に、ここまで電波が求められているのだろうか?
受信料の義務化は、政権とNHKにとって、両刃の剣になるに違いない。
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