8. 2015年11月09日 21:38:02
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2015年11月09日(月) 高橋 洋一 民主党議員よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!〜『朝ナマ』に出演して改めて感じた、日本の野党のお粗末さ【PHOTO】gettyimages 民主党議員には視力検査が必要だ 6日深夜放送の『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)に出演した。これまで安全保障問題についての野党のダメぶりは、本コラムで何回も書いてきた。 安保法について、その本質をいえば、@同盟関係の強化により戦争リスクを最大40%減らし、A自前防衛より防衛費が75%減り、B個別的自衛権の行使より抑制的(戦後の西ドイツの例)になるという点だ(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44375)。 それにもかかわらず、民主党はまったくトンチンカンで、「戦争法」との誤ったレッテル貼りをしてしまった。これでは極左政党と何ら変わりはない。民主党内でも意見は対立、良心的な松本剛明氏が離党し、比較的まともな党内右派はだんまりを決めてしまった。 2012年の総選挙で、安倍自民党が勝利し政権を奪取したのは、「金融政策とは雇用政策である」ということを理解していたからだ。それを、本コラムでは「安倍自民の勝因は争点を金融政策にしたこと」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34351)と書いた。 『朝ナマ』のテーマは、アベノミクスの総括と社会保障の議論だったが、出演した民主党の山井和則氏は、いまだに雇用政策における金融政策の重要性を理解できていないようだった。山井氏は社会保障分野の専門家であり、そこでは随所に鋭いところも見せるが、肝心の雇用政策では残念ながら知識不足だ。 筆者は、「金融政策の効果を見るには就業者数をみればいい」と、次の図を出した。 このデータほど、安倍政権と民主党政権の金融政策の差を如実に示すものはない。はっきりいって、民主党の完敗である。
ここまで明らかなのに、何を見ているのか、山井氏は民主党時代、「就業者数は増えている」と言い張った。図をもう一回出して、「よく見てくれ」と言おうと思ったが、大人げないのでやめた。 テレビの視聴者からは、「民主党議員は経済政策の勉強ではなく、視力検査が必要」という声もあった。 ピケティにもそっぽを向かれた民主党 ちなみに、マクロ経済の知識があれば、株価から将来の就業者数、将来の大卒内定率も予想することができる。それらは以下の図のとおりだ。株価は、金持ちだけのものだと公言する民主党には辛いデータだろう。何しろ株価が上がるとかなりの確率で、就業者数が伸び、大卒内定率が高まるのだから。 もっとも、金融政策の無理解は山井氏だけの問題ではなく、民主党全体の問題である。 (あえていえば、自民党も、2012年の総裁選では、安倍氏以外は金融政策をわかっていなかったが。2012年9月17日付け本コラム「金融政策のイロハも知らない自称「金融財政のスペシャリスト」も登場!「経済政策」から見た自民党総裁選5氏の「通信簿」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33559 )。 民主党は、ピケティ・ブームにあやかり、ピケティ氏に金融政策を否定させようとしたが、見事に振られた。テレビでも言ったが、ヨーロッパの左派政党は、金融政策を理解して雇用確保のためにそれを使っている。 民主党内にも、金子洋一氏や馬淵澄夫氏ら金融政策をきちんと理解している者もいるので、そうした人に頼んで党内で早く勉強会でもやるべきだ。 左派経済学者の中にも、「左派政党がもっと金融政策を勉強すべき」という人もいるので、そうした人を講師にでも呼び、きちんと勉強すればいい。そうでないと、「雇用の党」の看板が泣くだろうし、政権交代なんて夢のまた夢だ。 そもそも「新アベノミクスの基礎」を分かっていない 『朝ナマ』で言ったのは、アベノミクスの3本の矢は、政策手段としてはオーソドックスで、金融政策と財政政策というマクロ政策、それに規制緩和(成長戦略)というミクロ政策からなるものだということ。これは世界どこでも標準的なもので、代えようがない。 新3本の矢は、以上のマクロ政策とミクロ政策によって「達成すべき目標」である。達成すべき目標のうち、わかりやすいものを3つあげているだけだから、あえて言えば「3本の的」だろう。 これについて、マスコミは新味がないと馬鹿げたことういうが、政策とは手段は世界共通であり、目標もおおざっぱに言えば、GDP増大と雇用の拡大と、これもだいたい世界で同じである。 それをいかにうまくやるかが重要であり、新聞ネタになるような新味なんてあるはずない。マスコミは、こうした基本的な素養がないので、「新味がない」などというトンチンカンな指摘をするのだ。 「一億総活躍社会」というネーミングはどうか、というのはわかる。あえていえば、就業者数が増加して完全雇用状態になることを目指しているのだろう。要するに、すべての人が適材適所で働けるような社会、という意味だ。 これを達成するのは、金融政策や財政政策などのマクロ経済政策を理解していれば、それほど難しくない。失業率を3%程度までに持っていけば、完全雇用状態になって、ほとんどの業者で人手不足になって、賃金が上昇するようになる。 そのためには、金融緩和と財政政策によって、GDPギャップをゼロになるようにすればいい。以下の図も、朝ナマで示した図であり、今のところのGDPギャップ10兆円について、金融緩和を行うとともに、補正予算10兆円で埋めれば、半年程度で完全雇用状態になるだろう。 まず、財政政策であるが、10兆円補正というと、すぐ財源論が出てくる。早くも、「補正は3兆円程度」などととくだらない声(これは財務省のリーク)が聞こえてくる。
本コラムの読者であれば、外為特会で20兆円の含み益があることを知っているだろう。『朝ナマ』でもこれを紹介した。民主党時代は円高だったので、含み損20兆円となっていたが、今や円安になって含み益は20兆円。これは全部国民に還元するべきなのだ。 さらに、労働特会での差益も紹介した。アベノミクスで失業率が下がったので5兆円以上余裕がある(2013年度の労働保険特会雇用勘定資産負債差額は7兆円)。放っておくと厚労省役人がムダものに使う可能性ありがあるので、まず雇用保険料を取り過ぎたといって労働者に半分還元するのが筋だろう。 残り半分を企業に返すかどうかは政策判断であり、これを社会保障財源に充当するのは検討に値する案である。もちろん、こうしたことを官僚任せにするのではなく、政治が必要と判断すれば、法改正を主導すべきである。 『朝ナマ』に出演していた社会保障関係の民間人はいい人ばかりなので、財務省やその走狗に「社会保障財源の確保のため」といわれると、すぐ増税賛成となってしまう。はっきり言えば、消費税が社会保障財源になるといっても、強固なヒモツケではなく、ゴムのようなものだから、消費増税が社会保障増には直にリンクしない。 それを説明してもわかりにくいので、政治的に手が届きやすい「財源」の例を言ったまでだ。これに対して、財務省は筆者の指摘する財源は恒久財源でないと反論するが、恒久財源ではなく当面3年の財源でもいい。当面3年がないとその先もないのだから。 金融政策もぜひ理解してほしい 以上を考えれば、補正10兆円なんて、簡単にできる。その中で、番組内で問題になっていた介護や保育の問題も当面3年は解決できる。 この点は、山井氏も納得できたようだ。もっとも、労働特会も外為特会も、単にアベノミクス効果が出たので、それを素直に国民に還元するというだけの話である。役人の営業努力などまったくないのだから当然だろう。金融政策を理解していないと、これらの財源を役人から取り上げるのも大変だろう。 次に金融政策であるが、ここでは、ちょっと日銀に苦言を呈しておこう。 日本銀行は10月31日、2015年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を公表するとともに、金融緩和を見送った。 その展望レポートの中で、「構造失業率はこのところ3%台前半である」と書かれているが、これは間違いだろう。つまり、今現在でほぼ完全雇用というわけだからだ。 また、日銀が今を完全雇用というのは、同レポート中の図でも現時点でGDPギャップはないとしていることからもわかる。 これは筆者の示したものとまったく違っている。もし、GDPギャップがゼロならば、物価はもっと上がっているはずだし、実質賃金も上がっていなければおかしい。この点は、かつて完全雇用失業率を2%台と主張していた日銀審議委員の原田泰氏から、日銀はよく意見を聞くべきだ。
それにしても、日銀の経済見通しはまったく外れている。2年で2%のインフレ目標もどんどん先延ばしされている。 基本的な経済状況も外している。2014年度の経済成長率について、2013年4月の展望レポートでは1.4%と予想していたが、2014年度が終わった2015年4月には▲0.9%だった。2014年度のインフレ率は、2013年4月の1.6%が2015年4月に0.8%だった。 2015年度も外している。成長率は2014年4月に1.5%だったが、今回の2015年10月には1.2%。インフレ率も2014年4月に1.9%を今回の2015年10月は0.1%まで下方修正している。インフレ率はもう下方修正はないかもしれない。
しかし、成長率では、4−6月期はマイナスとなって、7−9月期もマイナスが予想され、まさに二四半期連続のマイナス成長で景気後退にならんとしている。次の来年1月の中間評価では成長率はさらに下方修正に追い込まれるだろう。 弱い野党が日本をダメにする 逆にいえば、これほどまで足元の経済が悪化しているにもかかわらず、10−12月期以降、急反発すると日銀は考えているのだろうか。かなり甘い経済見通しであるといわざるを得ない。 また、黒田日銀総裁は、「長期的にみれば予想物価上昇率は上昇するという傾向は維持されている」という。予想物価上昇率は金融政策のカギだが、展望レポートのデータをどう読んだら、基調として予想物価上昇率が上がっているのか、少なくとも筆者にはわからない。素直に読めば、予想物価上昇率は下がり気味である。 本来であれば、今回の展望レポートにあわせて追加緩和すべきであった。これほど見通しを外して、政策を打たないというのは、筆者には理解できにくい。 こうした批判は、金融政策を理解できない民主党にはできないだろう。きちんと勉強しないと、健全な野党にもなれないというわけだ。 ここまで民主党ダメだと、安倍政権は民主党が今の体制のうちに、解散総選挙を仕掛けたくなってしまうのではないか。与党がそんな手を打てなくなるような野党が必要である。 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46287 |