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「辺野古移設 法廷闘争へ」2015年10月28日 (水) 午前0:00〜
西川 龍一 解説委員 / 安達 宜正 解説委員
西川)沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設計画をめぐって、国土交通省は、沖縄県の翁長知事が行った名護市辺野古沖の埋め立て承認取り消し決定を一時停止しました。これによって、現場の作業の再開が可能になりますが、県側はさらなる対抗措置を取る方針で、基地問題を巡り、20年前当時の知事の代理署名拒否以来の法廷闘争に発展することは確実な状況です。今夜は予定を変更して、政治担当の安達委員とともに、この問題について考えます。
西川)きのうの決定は翁長知事の埋め立て承認取り消しに対し、沖縄防衛局が行政不服審査を申し立てたことに関連し、まず、緊急の措置として、執行の停止を認めたものですね。
安達)そうです。ただ申し立ては形の上では沖縄防衛局という一機関ですが、実際は安倍政権と言っていいでしょう。埋め立てを停止すれば、▼普天間基地の危険性の除去の遅れや、▼日米間の信頼関係への悪影響など重大な損害を受けると、それを国土交通省が認め、知事の埋め立て承認取り消しの効力を停止したということです。
西川)一連の国の対応に対して、翁長知事は「国の沖縄防衛局が、同じ内閣の一員である国土交通省に審査請求を行うことは不当だ」と主張しています。防衛局が行った審査請求の根拠となる行政不服審査法は、もともと国の機関など行政庁によって権利などを脅かされた国民の救済手段として制定された法律です。このため、法律の専門家の間にも国の機関である防衛局が国民と同じような私人の立場で審査請求を行うことは無理があるとの指摘があります。
安達)政府は法的には問題はないという立場です。法律では請求できる対象を「国民と限定せず、『処分に不服があるもの』と定めている」からで、見解が大きく異なっています。きのうの決定を受けて、政府は一気に攻勢をかけています。まず翁長知事に対し、地方自治法に従って埋め立てを認めるように勧告などを行って、それに従わない場合は裁判を起こすことにしています。さらに国土交通大臣の知事の代わりに埋め立てを承認する「代執行」の手続きにも着手しました。来月には本体工事に着手したいとしています。一歩も引かない構えです
西川)一歩も引かない構えという点では、翁長知事も同じです。県外に出張していた翁長知事は、昨夜、那覇空港で会見し、「政府の最後通牒とすら言えるもので、断じて容認できない」と厳しく批判しました。翁長知事は、国と地方の争いを調停する総務省の「国地方係争処理委員会」に審査を申し出る考えです。さらにこちらも最終的には法廷闘争も想定して準備を進める方針です。
翁長知事がこうした姿勢を崩さない背景には、辺野古移設反対を掲げた自らの選挙公約を実現することに県民の多くの支持があるという自負があります。その背景を県外の人たちにも知ってもらおうと、繰り返し、沖縄のアメリカ軍基地の多くは、戦後に住民が土地を強制的に接収されて作られたこと。もともと本土に駐留していたアメリカ海兵隊が沖縄に移ってきた経緯を説明し続けています。そのような状況で作られた基地が「危険で老朽化したから新しい基地を作れ、移転先は沖縄が負担しろというのは理不尽だ」という主張です。歴史的な経緯を踏まえれば、県民感情として県内に新しい基地を作ることは容認できないということです。翁長知事は、たとえ国が工事を再開しても辺野古に基地はできないだろうという考えも示しています。
安達)政府も沖縄の世論の厳しさは十分にわかっていると思います。だからこそ、ここに来て、沖縄県に硬軟織り交ぜた対応を取っています。まず、先月の内閣改造。沖縄・北方担当大臣に島尻安伊子氏を起用。島尻氏は沖縄選挙区選出の参議院議員。沖縄選出の国会議員が沖縄担当大臣に就任したのは初めてです。沖縄振興策を担当、振興予算の配分にも発言権を持つことになります。また、移設先の名護市。稲嶺市長は移設反対ですが、基地の移設先に近い3つの地区の区長はインフラの整備や住民への補償などの条件付きに容認しています。菅官房長官はこの地区の区長と会談。振興対策費を、稲嶺市長を通さずに直接、交付したいという考えを伝えました。対策費は3000万円程度になる見通しです。政府が直接、県民や市民との対話に乗り出す用意があると、翁長知事や稲嶺市長をけん制する狙いがあるように思います。
西川)そうした政府の対応は、言わば両刃の剣とも言えます。元々那覇市の市議会議員だった島尻氏を参議院の補欠選挙に担ぎ出したのは当時那覇市長だった翁長知事です。5年前の選挙で、普天間基地の県内移設に反対の立場だった島尻氏は、自民党本部の説得でいち早く辺野古移設容認に考えを変えたことで、県民の中には強い反発もあります。また、地元名護市の3地区への振興対策費の直接交付については、お金で地域を分断するようなやり方が、県民全体の理解を得られるのか疑問です。そもそも税金を自治体ではない地区に直接交付することに財政法上、問題はないのかという疑問も残ります。名護市の稲嶺市長は、「地方自治への介入だ」と強く反発しています。
安達)確かに基地問題で行き詰ると過去にも政府部内には地方自治体を通さずに、振興対策費をと言う話はあるにはありました。ただその都度、国と地方自治体の関係から好ましくないのではないかと慎重論が出ました。今回、これが実現することになければ異例の対応になります。地方自治制度を破壊する禁じ手だと言う声も出ています。
西川)さて、今後、どのようなことが想定されるのか。移設予定地に近いアメリカ軍キャンプシュワブ前では、この間も連日移設に反対する人たちが抗議活動を続けています。また、きのうは、東京の防衛省前でも移設に反対する環境保護団体の人たちが作業の中止を訴えました。このまま工事再開となると、予定地では不測の事態を心配する声もあります。
安達)与党内にもそうした事態を心配する声はあります。安倍政権にも打撃になりかねないと。今後の政治のスケジュールを見ると、沖縄では来年前半はいくつもの政治決戦が控えています。まず、年明け1月には普天間基地のある宜野湾市の市長選挙。5月には沖縄県議会議員選挙、そして7月には参議院選挙が予定されています。5つの選挙ともに辺野古への移設賛成、反対両派が正面からぶつかり合う構図となることは確実です。さらに翁長知事を支える県政与党からは基地問題を住民投票に問おうと言う声もあります。一連の選挙で改めて民意が示されれば、辺野古移設の行方に少なからず、影響があることは間違いありません。
西川)国と沖縄県が法廷で争うことになれば、20年前、当時の大田知事が軍用地の強制使用を巡る代理署名を拒否し、基地問題を巡って双方が正面から対立して以来の異例の事態です。
安達)当時は社会党の村山政権、自民党の橋本政権でした。僕はこのとき、ちょうど政治部でこの問題を担当していました。対立は激しかったのは事実ですが、双方とも接点を見出そうとしていたことは事実です。それに比べ、現状はどうかと言えば違う評価もあるように思います。
西川)当時と違って、国と沖縄県の仲介役を担える人が、国側にも県側にもいないのが実情です。この問題は、法廷闘争になっても解決の出口に向けた道筋は見えてきません。
20年前と変わらないのは、沖縄の基地負担の現状だけに、当時のようにアメリカを巻き込んだ議論に立ち返ることも政府には必要なように思います。
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