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「中身のない言葉では、もう私たちを動かすことはできない」SEALDs KANSAI・大澤茉実さん 憲法改正で「国民を縛ろう」とする安倍政権の退陣を求めスピーチ!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/272784
2015.10.30 IWJ Independent Web Journal
「私はもう、全部失ってしまった。国への信頼も、豊かさへの信頼も、自分らしく生きる場所も、搾り取られるように失ってしまった。
誰かからそれらを奪い取っているこの国のどこかで、私の手のなかには、ただ、未来だけが残されています。私はもう、何も奪いたくないし、何も奪わせない。その理想を掲げ続けます。私の望む未来から、安倍政権の退陣を求めます」
「岐路に立つ日本の立憲主義・民主主義・平和主義」と題して、学者と学生の今後の使命と責任を考えるシンポジウムが2015年10月25日、法政大学で開かれ、立ち見が出る中、約1300人の市民が集まった。
・2015/10/25 学者と学生によるシンポジウム「岐路に立つ日本の立憲主義・民主主義・平和主義――大学人の使命と責任を問い直す」(動画)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/272070
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4時間に及んだシンポジウムでは、「 安全保障関連法に反対する学者の会」と「SEALDs」から、11人の教授と6人の学生らが登壇。そんななか、この日、関西から駆け付けた立命館大学2回生の大澤茉実さんのスピーチは多くの参加者の心を打ち、涙を流しながらじっと聞き入る姿もあった。
▲大澤茉実さん
小さい時から「良い子」であることへの期待に応えてきたという大澤さんは、「空気を読み、長いものに巻かれ、議論を避け、ルールは疑わない、学校に通い続けることが正義」だと考えていた少女だった。自分の感覚や感情を押し込むことで社会に順応してきたが、そんな生き方を変えたのが、多くの若者たちが立ち上がり、安保法制反対の声をあげた2015年の夏だったという。
「当たり前に順応するのではなく、何を当たり前にしたいのか、常に思考し、行動し続けること。どうやらそれだけが未来を連れてきてくれるようです。空気を読んでいては、空気は変わらないんです。そのことを、デモをするたび、街宣をするたび、一緒に声を上げる名前も知らない人が、その勇気でもって教えてくれました」
スピーチ中、大澤さんは自民党が掲げる「改憲草案」にも言及した。国家権力を縛るための憲法が、改憲草案では「国民を縛ろうとしている」ことに危機感を示したが「中身のない言葉では、もう私たちを動かすことはできない」と自信をのぞかせた。この夏、「私たちは決して無力なんかじゃない」ことを知ったからだ。
以下、大澤茉実さんのスピーチ全文とスピーチ動画を掲載する。
(ぎぎまき)
【スピーチ動画】
大澤茉実さんスピーチ 学者と学生によるシンポジウム「岐路に立つ日本の立憲主義・民主主義・平和主義――大学人の使命と責任を問い直す」
■大澤茉実さんスピーチ全文文字起こし
大澤茉実さん「SEALDs KANSAIから来ました、立命館大学二回生の大澤茉実と言います。これだけの学者の先生の後で、何をお話ししようかとずっと悩んでたんですが、学者の先生には学者の先生にしかお話できへんことがあるように、目立たない私ですが、私にしかお話しできないこともあると思うので、今日はそういう話をしたいと思います。
SEALDs KANSAIは、SEALDsと同じ日に活動をスタートして、勉強会と並行しながら、地元関西で6月から毎月デモを行い、7月からは、毎週金曜日に街宣も行ってきました。
同じ街に住んでても、自分とは違う国籍や経済状況にある人のスピーチは、私に、『自分とは違う誰かと生きていくこと』への想像力をくれました。もうすでに、この街で一緒に生きてたんやって、気づかせてくれました。
それは、だれかに死ねと言うよりも、自分が明日どう生きていくかを語るほうがよっぽど、未来を変える力を持ってることを教えてくれました。自民党の改憲草案では、『福祉』という言葉が、『利益』や『秩序』という言葉にすり替わりました。
でも、私はもう十分にその福祉という言葉に、多くの人々の生活や自分自身の権利を想像できるようになったんです。草案では、国家権力を縛るための憲法が、私たちを縛ろうとしていますが、中身のない言葉では、もう私たちを動かすことはできません。
それは、この夏、心を持つ私たちが、決して無力なんかじゃないことを知ったからです。この社会には『自己責任』という見て見ぬふり、自分だけを責めることが美化される姿勢、他人を傷つけることで、解消するうっぷんや、弱い者にしわ寄せのいく、仕方のなさがあふれています。
常に何かに追い立てられるように、数字で、金で、ノルマで、自分を語ることが求められています。飛び交う言葉には中身がなくなり、それは誰かを傷つけ、言葉で傷ついた人は、言葉で傷つけることで、自分を守ろうとします。
その感覚が、私には痛いほどわかります。私も、小さい時から、良い子を求められてきたからです。先生に気に入られる、空気を読む、長いものに巻かれ、議論を避け、ルールは疑わない、学校に通い続けることが正義、偏差値が高ければ勝ち組、それこそが幸福。
私はいつのまにか、自分の感覚や感情を頼りに、行動することが怖くなっていました。私は言葉を私の中に押し込めて、黙ることを覚えました。そうやって、ひたすら教室にこの社会に順応することが普通やと思ってました。
でも、この夏、普通だったことはどんどん普通じゃなくなりました。昨日まで、ファッションの話しかしなかった学生が、政治を語り始めた。本とパソコンの前から動かなかった学者が、雨に打たれながら路上に立った。
多くの芸能人が、タブーを破り、政治的な意見を表明した。あるサラリーマンは、金曜の会社帰りは、街宣に立ち寄るようになったし、スピーチを聞いた彼女は、通り過ぎようとした恋人を引き留めた。友達は初めて来たデモで黙ってプラカードを掲げたし、臆病な私が国会前でマイクを握った。
当たり前に、順応するのではなく、何を当たり前にしたいのか、常に思考し、行動し続けること。どうやらそれだけが未来を連れてきてくれるようです。空気を読んでいては、空気は変わらないんです。
そのことを、デモをするたび、街宣をするたび、一緒に声を上げる名前も知らない人が、その勇気でもって教えてくれました。武器を持ち、人を殺すことが普通の国だというのなら、私はその普通を変えたいんです。
私には、私を支えてくれる大切な女の子たちがいます。そのうちの一人がこのあいだ、私が嘘ついて、冗談で教えた誕生日に、ない金はたいて、ホールケーキ買って、全力でお祝いしてくれて、私なんかが生まれてきたことをほんまに喜んでくれて、嘘の誕生日やったけど、生まれてきてよかったって、生まれて、初めてあんなに思いました。
その子は本当は行きたかった専門学校をあきらめたこと、家庭環境を馬鹿にされたこと、家が安心できる場所じゃないこと、しんどいときにしんどいと言われへんこと。その全部を当たり前のままになんかしたくない。
だから、私はもう、絶望という当たり前に慣れてしまうことをやめました。明日からも、その子と生きていきたいからです。私は手触りと沈黙を大切にし、私の言葉で私を語り続けます。
それが、私にとって唯一のアイデンティティであり、私にとっての自由であり、私の反戦の誓いであり、ファシズムとすべての差別に対する私にできる最大の抵抗だからです。
そして、だれにもそれを打ち砕くことはできない。なぜなら、私の想像力も、私の言葉一つ一つの背景にある笑いや涙の経験も、だれにも侵すことはできないからです。私は、ほんの数年前まで、新聞の中だけにあった沖縄を、東北を、こんなにも近くに感じたことはなかった。
彼らの息遣いが、怒りの声が、今の私には聞こえます。そして、原爆ドームの前に立ち尽くすあの人を、杖を突いて国会前に足を運び続けるあの人を、弱音を吐けないまま死んでしまった大好きなあの子を、こんなにも近くに感じた夏はなかった。
こんなにも人のぬくもりを感じた夏はなかった。こんなにも自分が生きていることをかみしめた夏はなかった。私は、戦後70年を迎えるこの国に、世界中で銃声におびえる子供たちに、明るい未来を見せる努力を求めます。
貧困大国であると同時に、自殺大国でもあるこの国に、安心して命を育める環境を求めます。政治家一人ひとりに、この国とこの世界に生きる人々の暮らしや夢や命に対する想像力を求めます。
私の言葉を理想論だとか、綺麗ごとやと笑う人がいるかもしれません。でも、希望も語れなくなったら、本当の終わりです。だから、私は明日からも路上に立ちながら、おおいに理想を語ります。夢を語ります。
それは、そうやって社会を作っていくのが、これからを生きるすべての人に対する私の使命やと思っているからです。今、言葉を失い、打ちひしがれ、自分には力がないと思い込まされているすべての人に、過去の私に、その姿を見せなあかんと思っているからです。
生きる希望を見せなあかんと思っているからです。私はもう、全部失ってしまった。国への信頼も、豊かさへの信頼も、自分らしく生きる場所も、搾り取られるように失ってしまった。
そして、一方で、だれかからそれらを奪い取っているこの国のどこかで、第三世界の大地で。私の手のなかには、ただ未来だけが残されています。私はもう、何も奪いたくないし、何も奪わせない。その理想を掲げ続けます。私の望む未来から、安倍政権の退陣を求めます。
本を読み、過去に学び、路上に立ち続けましょう。希望を語り、小さなことをやり続けましょう。それが目の前の当たり前の絶望を変えていくことを歴史が証明しています。
2015年10月25日 大澤茉実、私は安全保障関連法に反対し、私と私の大切な人が生きる社会に、自由と民主主義を求め続けます」
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