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中国日本人拘束「スパイ疑惑」の余波〜官僚たちが踏み入れた冷酷な「諜報戦」の行方 公安を知り尽くした男が明かす、スクープルポ第二弾!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46026
2015年10月29日(木) 竹内明 現代ビジネス
長年にわたり公安警察取材を続けてきたTBSキャスターで、自身2作目となる小説『マルトク 特別協力者 警視庁公安部外事二課』を上梓した竹内明氏が、中国での日本人拘束事件の真相を明かす。水面下で繰り広げられる「日中諜報戦争」を描いた、スクープルポ。その後編をお届けする−−
■菅官房長官の「焦り」
日本人拘束問題が報じられた直後、菅官房長官は「我が国として、スパイ行為は絶対にしていない」と語気を強めた。
常に冷静な菅官房長官が、質問を否定するときに「絶対に……」という言葉を発するのは異例だ。何が何でも「スパイ疑惑」を打ち消したいという心情が吐露された瞬間と言ってもいいだろう。
「菅長官の頭の中には、いま政府が準備中の『国際テロ情報収集ユニット』のことがあったのではないか」
ある官邸幹部はこう推測する。
イスラム過激派によるテロ対策を目的とするこのユニットは、外務省傘下に置かれる。東南アジア、南アジア、中東、アフリカの四班体制で、専門職員を在外公館に派遣して情報収集を行うという。
しかし、安倍政権と官僚たちは、この組織の任務をテロ対策情報収集から、「日本版MI-6」に形を変えることを目論んでいる。MI-6とは、イギリス外務省の下に置かれた対外諜報機関。あの「007」が所属しているという設定されている組織だ。
「安倍政権としては、安保法制への世論の反発が消えるまで、対外情報機関の設置など一切口に出せない。でも、アルジェリアやシリアで日本人がイスラム過激派の犠牲になったあとだから、テロ情報を収集するための組織からスタートしておけば、その必要性を痛感している国民の理解を得やすいはずだ」(警察庁幹部)
■外務省と警察庁の「亀裂」
だが、このテロ対策ユニットを巡っては、各省庁間の省益争いが激化している。外務省サイドは、自分たち以外に適任者はいない、対象国の言語も文化も解さない他省出身者に何ができるのかと主張する。対外情報活動は長年、外交官が担ってきたという自負もある。
一方で、警察庁は、ユニットを外務省傘下に置くことに強く反発した。彼らは彼らで、海外に逃亡した日本赤軍の追跡や逮捕などで、テロ対策のノウハウを積み上げてきたというプライドがあるのだ。たしかに、世界の捜査機関、防諜機関とのネットワークを持つのも、現状では警察庁である。
警察・外務の綱引きの末、新組織に派遣される者は、警察の牙城である内閣情報調査室との併任辞令を受けることとなった。組織としては外務省の下にありながら、職員は警察キャリアである内閣情報官の指揮下で動くということに落ち着きそうだ。
新組織発足を機に権益を拡大しようとしたのが公安調査庁だった。対外諜報のノウハウを密かに培ってきた調査二部傘下の調査官を、ごっそり新組織に合流させることを画策していたようだが、派遣人員は限定的になりそうだ。
外務省幹部はこう吐き捨てる。
「存在価値を高めようとした公庁のスパイごっこのおかげで、対外情報機関設置への国民の理解はますます遠ざかった。日本国民をスパイにしたうえ、リスクをわかっていながら中国に送り込んだ。しかも現地で拘束されたら、はいサヨウナラ。彼らは最悪な失敗例を国民に見せてしまった。総理以下、ご立腹だよ」
果たして、敵に捕らわれたスパイの末路はどんなものなのか。
外交官のカバーを持つ情報機関員なら外交特権を盾に逮捕されることなく帰国するができる。だが、NOCS(民間人を偽装した非公然機関員)や民間人協力者はそうはいかない。外国人協力者なら邦人保護の対象にすらならない。
■日本には「手駒」がない
冷戦時代から現在に至るまで、米ロ間では緊張を高めぬために、互いに捉えたスパイを受け渡す「スパイ交換」が行われ、多くの諜報員たちが拷問から逃れ、命を救われた。
だが、インテリジェンスの世界では「等価交換」が原則だ。中国の情報機関員を捕らえたことのない日本に、交換できる「手駒」は存在しないという現実がある。これでは、日本政府側としては、スパイを送り込んだことを否認して「知らぬ、存ぜぬ」を貫き通すしかない。
「身内にモグラがいるうえ、捕まった協力者は助ける努力もせずに使い捨て。これじゃあ国のために協力しようと言う者はいなくなる。情報機関というハコを作っても無意味だ」(警視庁公安捜査員)
今後、日本政府がヒューミント(人的諜報)を強化すれば、日本の情報機関員が敵に取り込まれるリスクは高くなるし、協力者の取り扱いをめぐる人道上の問題は付きまとうことになるだろう。
日本には、我が身を危険にさらした協力者に永住権を付与したり、刑を減免したりする法整備も整っていない。与える「飴」もなく、忠誠心だけを求めるのは限界がある。
省益争いを繰り広げる官僚たちは、冷酷な諜報戦の世界に足を踏み入れることを覚悟しなければならない。
(『マルトク』特別サイトもぜひご覧ください)
竹内明 1969年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、1991年にTBS入社。社会部、ニューヨーク特派員、政治部などを経て、ニュース 番組「Nスタ」のキャスターなどを務めながら、国際諜報戦や外交問題に関する取材を続けている。公安警察や検察を取材したノンフィクション作品として 2009年『ドキュメント秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの344日』、2010年『時効操作 警察庁長官狙撃事件の深層』。2014年の前作『背乗り』は小説デビュー作にもかかわらず、好評につき増刷を重ねた。
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