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OECD調査が示す日本の現状と「GDP600兆円」の虚しさ 永田町の裏を読む/高野孟
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/167871
2015年10月29日 日刊ゲンダイ
安倍晋三首相は先の組閣を終えて「新内閣は未来へ挑戦する」と見えを切り、いったいどんな未来を描いてみせるのかと思えば「GDP600兆円」だから腰が抜けそうになった。
政策立案に携わる旧知の官僚に「何なのよ、これ。安倍もブレーンたちもいまだに発展途上国時代の“量的成長”の思考に凝り固まっている。衰えたりとはいえ世界第3位の成熟先進国として“質的充実”の展望を打ち出さないとお話にならないでしょう」と問うた。
彼は「いやあ、私らスタッフも頭を抱えているんですよ。で、何とか発想を大きく切り替えなければということで、私がいま勉強しているのはコレ」と言いながら茶封筒から取り出したのは、OECD(経済協力開発機構)が10月13日に発表した主要国の「幸福度調査」の分厚いリポート。「これを見ると、平均寿命ではスペインと並んで世界トップだとか、15歳児の読み書き・算数では韓国に次いで2位とか、自慢できることもいくつかはあるが、ほとんどの指標でまあまあの中程度かそれ以下で、何だか面白くもない平凡な国になってしまったんだなあと実感します」と嘆くのである。
ページをめくると、平均寿命は確かに一番だが、その表のすぐ下に「長寿は必ずしも健康な生活を意味しない」とコメントがあって、次の「自分の健康を『非常によい』『よい』と答えた人の比率」という表に続く。それを見ると、ニュージーランド、カナダ、米国が90%前後でトップクラスだが、日本と韓国は35%程度で、対象の35カ国中で最下位。本来なら尊ばれ敬われて、社会全体で大事にされるべき長寿者の3分の2が健康問題に悩み、政治や行政が彼らを厄介者扱いするこの国のありさまが浮かび出ている。
そうはいっても、まだ日本は世界の中でも豊かな国のはずだと思いたいのだが、「正規雇用者の年収」を購買力平価で比較した表を見ると、OECD平均より低く、韓国より1つ下、スペインより1つ上という程度である。親が失業中の家庭で暮らす子どもの割合は、全体平均で10%だが、日本は16%で、ギリシャやポルトガル並み。こういう統計を次々に突きつけられると愕然とする。
アベノミクスの無残な失敗の後に出て来たのが「600兆円」の空文句だけという安倍にこの国を委ねていては、未来も何もあったものではないことを、このリポートが示している。
▽たかの・はじめ 1944年生まれ。「インサイダー」「THE JOURNAL」などを主宰。「沖縄に海兵隊はいらない!」ほか著書多数。
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