27. 2015年10月30日 19:32:44
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反移設一色でない民意 2015年10月29日「知事におっしゃっていただきたい。『我々沖縄県民は日本人である』。『琉球独立は考えていない』」 今月2日、沖縄県議会の一般質問で、こんな挑発的な質問が飛び出した。 議場がざわめく中、答弁に立った知事の翁長雄志は「日本人としての誇りは私も持っている」と淡々と話した。続けて「沖縄が置かれている環境は大変、理不尽だ。日本国の誇りを持ちつつも、ウチナーンチュ(沖縄の方言で『沖縄人』)の誇りもしっかりと持っている」と語気を強めた。 質問したのは花城大輔。所属する自民党には、翁長が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を阻止するため、沖縄県民の「沖縄ナショナリズム(民族主義)」を煽ろうとしている、との警戒感がある。 翁長の反対運動の特徴は、県民の一体感を強調していることだ。昨年11月の知事選では「政治信条を超えて『オール沖縄』で移設を止めよう」と訴えた。県外でも、あいさつなどで沖縄方言を多用し、地元への帰属意識をアピールしている。 だが、県内世論は一枚岩ではない。 「今の県と政府の関係では、沖縄の振興予算がどうなるか非常に不安だ」 宮古島市長の下地敏彦はこんな焦りから県内の保守系市長に呼びかけ、今年5月に「沖縄の振興を考える保守系市長の会」を結成した。県内全11市のうち、那覇、名護両市を除く9市長が参加し、通称を「チーム沖縄」に決めた。 菅官房長官は結成直後に東京都内で、8月には那覇市内でメンバーと懇談し、普天間飛行場の危険性除去や振興予算の確保などの要望を聞き取った。参加市長の1人は「普天間飛行場の県外移設が解決策にならない以上、現実を直視しないといけない。たとえ県民に憎まれても、沖縄の発展のために仕事をするのが政治家の役目だ」と語る。 普天間飛行場の移設で最も影響を受ける辺野古周辺の3区は地元の振興を条件に移設を容認している。 菅は26日、3区長と首相官邸で懇談し、振興費を3区に直接交付する方針を伝えた。 移設に反対して振興費の受け取りを拒んでいる名護市を通さない特別の措置だ。会合後、豊原区長の宮城行雄は記者団に「我々の要望したことが実現できる」と表情を緩めた。 政府が辺野古移設の「容認派」に配慮するのは、翁長の「オール沖縄」論を突き崩すためだけではない。翁長に近づく中国の「意思」を感じ取っているからだ。 中国首相の李克強は今年4月14日、日本国際貿易促進協会の訪中団とともに北京を訪れた翁長と会談した。中国の首相が日本の知事と会談するのは極めて異例だ。 翁長が「沖縄はかつて琉球王国として中国をはじめ、広くアジアとの交流の中で栄えてきた。ぜひ交流を促進させていきたい。飛行機の定期便も願っています」と要請すると、李克強は「いま話された歴史を我々は学ぶ必要がある。両国の地方政府の交流を積極的に支持している」と応じた。 それから3カ月もたたない7月1日、中国福建省の省都・福州市と那覇市を結ぶ定期便が就航した。李克強の「沖縄重視」の意思が働いたのは明らかだった。 翁長は9月24日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見し、「(政府が)中国が脅威だと言っても、冷戦構造(の時代)と比べて、どれだけ脅威か何も説明がない」と主張した。 日本の公安当局者は語る。 「中国にとって沖縄の米軍基地は脅威であり、沖縄の反基地運動が盛り上がればいいと考えている。翁長への厚遇は、中国に有利な民意を作ることが目的だ」 沖縄の「民意」の争奪戦は激しく、そして静かに進んでいる。 中国接近 沖縄県民は警戒 米国や中国に対する沖縄の民意を推し量る指標の1つは、沖縄県が昨年11〜12月に実施した沖縄県民意識調査だ。 15〜74歳の1142人の回答結果によると、在日米軍に対する印象は「悪い」(「どちらかといえば」を含む。以下同じ)は46%で、「良い」の33%を上回った。一方、日米安全保障条約が「日本の平和と安全に役立っている」と答えた人は59%で、日米関係が「重要」と答えた人は79%に達した。 これに対し、中国に対する印象は「良くない」が92%を占め、日中関係が「重要」と答えた人は64%だった。南シナ海への中国海軍の進出に「関心がある」と答えた人は76%に上り、その理由(複数回答)で最も多かったのは「尖閣諸島をめぐる問題に影響を及ぼすと思うから」で60%だった。 調査結果からは、米軍の存在に複雑な感情を抱きつつも、中国を警戒する沖縄県民の姿が浮かび上がる。 *沖縄県「地域安全保障に関する県民意識調査」結果(2014年) ・在日米軍に対する印象 良い6.7%、どちらかといえば良い26.1%、わからない20.4%、無回答1.2%、どちらかといえば悪い31.4%、悪い14.2% ・日米安全保障条約に対する評価 役だっている23.7%、どちらかといえば役だっている35.4%、わからない16.0%、無回答1.0%、どちらかといえば役だっていない14.5%、役だっていない9.5% 辺野古代執行へ 誤った県の手続きは是正せよ 2015年10月28日 03時21分 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20151028-OYT1T50000.html 米軍普天間飛行場の辺野古移設の実現に向け、安倍政権が不退転の決意を示したと言えよう。 政府は、辺野古での埋め立て承認を代執行する手続きに入ることを閣議了解した。沖縄県の翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しについて、「違法な処分」として、是正・撤回させるためだ。 菅官房長官は、取り消し処分に関して「普天間飛行場の危険性除去が困難となり、外交・防衛上、重大な損害を生じるなど、著しく公益を害する」と強調した。 埋め立て承認に「法的瑕疵かしがある」とする翁長氏の判断の根拠とされた私的諮問機関の報告書には公平性や客観性が乏しかった。 辺野古移設が日本全体の安全保障に関わる問題である以上、政府の代執行手続きは妥当である。 都道府県への法定受託事務に関する代執行は初めてという。 石井国土交通相がまず、翁長氏に承認取り消し是正を勧告・指示し、応じなければ、高裁に提訴する。勝訴すれば、翁長氏に代わって取り消しを撤回する運びだ。 石井氏は、防衛省が申し立てていた翁長氏による取り消し処分の執行停止についても決定した。防衛省は、移設作業を再開し、近く本体工事に着手する。 沖縄県などは、国交相が防衛省の申し立てを審査することについて「同じ内閣の一員が審査することは不当だ」と主張する。 だが、石井氏は「国が公有水面を埋め立てる場合は、都道府県知事の承認を受ける。私人が埋め立てを行う場合と同様だ」と反論した。法律上の問題はあるまい。 翁長氏は、国と地方の争いを調停する総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を請求する方針だ。認められなければ、提訴する構えを見せている。 いずれにしても、政府と県の法廷闘争は避けられないだろう。 政府は、名護市の地元3区に対し、市を通さずに振興補助金を支給することを決めた。今年度は計3000万円程度で、防災用倉庫などの整備に充てるという。 地元3区は、キャンプ・シュワブに隣接し、基地負担が大きい。稲嶺進名護市長は移設に反対するが、3区には条件付きで容認する住民が多い。この事実は重い。 本来、こうした基地周辺住民の意見や要望が尊重されるべきなのに、従来は軽視されてきた。 政府が今年5月、地元3区との協議の場を設置したのは、辺野古移設を円滑に進めるための一つの環境整備として適切だろう。
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