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スクープルポ!中国「日本人拘束事件」の真相〜公安を知り尽くした報道記者が明かす、日中「諜報戦争」の内幕
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46025
2015年10月28日(水) 竹内明 現代ビジネス
長年にわたり公安警察取材を続け、先日、小説『マルトク 特別協力者〜警視庁公安部外事二課 ソトニ』を上梓したTBSキャスターの竹内明氏が、中国での「日本人拘束事件」の真相を明かす。水面下で繰り広げられる「日中諜報戦争」。その構図は『マルトク』で描かれた世界とあまりに酷似している。
■拘束されたのは4人だけではなかった!
日本人、計四人が中国国内で身柄を拘束されたことが明らかになった。容疑はスパイ活動の疑い。九月末の朝日新聞での初報以来、新聞や週刊誌が「うち三人は日本の公安調査庁の協力者である」と報じている。本稿では各報道がどこまで正しいかの検証は避けるが、この四人の拘束は「氷山の一角」に過ぎない。
取材を進めると、問題は根深いことがわかってきた。驚かされたのは、過去三年間で、日本から中国に入国した合計二十人近くが中国で身柄を拘束されており、その大半が公安調査庁の協力者だという事実だ。ある公安調査庁の調査官は、こう語った。
「現地で逮捕されたのは、中国の対北朝鮮政策や軍事情報を収集するために送り込んだ協力者(エージェント)ばかり。中には北京空港に到着した直後に身柄を拘束され、身包み剥がされて捜索された者もいる。一昨年の『朱建栄事件』をきっかけに、中国側の日本の情報活動に対する厳しさが増している」
「朱建栄事件」とは、2013年7月、日本在住の中国人研究者・朱建栄教授(東洋学園大学)が、出身地の上海で中国当局に身柄を拘束された事件だ。
中国政治が専門である朱教授には、日本のマスメディアだけでなく、外務省や公安調査庁もその知識や情報を乞うていたため、中国側は「スパイ活動をしている」と見なし、半年にわたって身柄を拘束した。
実は、公安調査庁調査二部のオペレーションで中国に送り込まれた協力者たちが、中国で次々と身柄を拘束され始めたのは、この「朱建栄事件」以降のことだというのだ。
拘束された人々の顔ぶれは、@日本人、A日本国籍を取得した元中国人、B在日中国人、と様々だ。最短で半日で拘束を解かれたというから、当初は警告の意味合いもあったと見ることもできるだろう。だが、短期の拘束は逆にリスクが高いと、公安調査庁幹部は指摘する。
「一度拘束された協力者は、中国情報機関に今後の協力を『誓約』させられている可能性がある。つまりダブル(二重スパイ)として日本に戻されている可能性があるので、協力者としては使えない。これは国家安全部と日本政府の諜報戦争のようなものだ」
彼らを拘束したのは「中国国家安全部」という諜報機関だ。米国では「MSS」と呼ばれ、FBIでは対敵防諜活動の最重点対象と位置づけている。このスパイ組織が、日本が送り込む協力者を次々と摘発しているというのだ。
それにしても「二十人近く」という数字は尋常ではない。なぜ、彼らは日本の協力者であることを知られてしまったのだろうか。
実は今、恐るべきシナリオが浮上しているのだ。
■「モグラを見つけ出せ!」
「公安調査庁の協力者リストが国家安全部に漏れている。警視庁外事二課が動いて、公庁内部に潜り込んだ『モグラ』を見つけ出すべきだ」
ある警視庁公安部捜査員はこう主張している。
「モグラ」とは日本政府内に潜り込んだ、相手国のスパイを指す世界共通言語だ。つまり国家安全部から送り込まれた「モグラ」が、公安調査庁で厳重管理されているはずの協力者リストを流している可能性があるというのだ。
北京空港に到着直後に別室に連行され、拘束された者もいるというから、中国当局は日本から送り込まれてくる「獲物」を空の玄関口で口を開けて待っていたことになる。
中国国家安全部がその実力を世に知らしめたのは、2003年のことだ。FBI米連邦捜査局にもモグラを送り込んでいたことが発覚したのだ。
竹内明氏の新著『マルトク』。元公安部外事二課の主人公が、北朝鮮と日本の諜報戦の舞台裏を描く。小説とは思えない生々しい描写、情報が満載だ
FBIはカトリーナ・レアンという在米中国人の女性実業家を協力者に仕立てて、中国政府中枢の情報をとっていたが、実はレアンは国家安全部のエージェントだった。
国家安全部からつけられたコードネームは「ルオ」。レアンは担当のFBI捜査官を篭絡して愛人となり、自宅に連れ込んで鞄からFBIの機密情報を得ていたのだ。FBIは二重スパイであることに気づかずに、巨額の協力者謝礼をレアンに支払っていた。
「世界最強の捜査機関FBIにモグラを送り込んでいたんだ。国家安全部にとって、日本の情報機関などなど赤子の手をひねるようなものだよ。スパイ天国という汚名を返上するためには、この問題に蓋をしちゃだめだ」(警視庁公安捜査員)
警視庁公安部でもかつてロシアスパイの強制捜査をしようとするたびに、SVR(ロシア対外諜報庁)やGRU(ロシア軍参謀本部情報総局)に所属する機関員が緊急帰国するという問題があった。それは四人も連続し、現場の捜査員たちはモグラの存在を疑ったが、結局、捜査は行われず、うやむやになった。
公安調査庁内部では今頃になって、調査官たちは「誰がモグラだ」と疑心暗鬼になっているという。
「拘束された協力者の中には、各地方の公安調査局に運用されていた者もいる。こうした情報を統括する本庁から中国側に漏れているとしか思えない。でも、モグラを特定できたとしても、訴追されることはない。闇に葬られるだけだ」(公安調査官)
対中情報は本庁調査二部第四部門と各公安調査局が担い、作戦・指令・資金管理を調査二部第一課が統括するという。この指揮命令系統のどこかにモグラが潜り込んでいると、この公安調査官は指摘する。
日本政府がやることは、獅子身中の虫、つまり政府内に潜り込んだ中国のモグラを洗い出し、刑事訴訟手続きにのせることだ。
■エース調査官が「モグラ」だった!?
実は公安調査庁では、過去にも「モグラ」の存在が疑われる事例があった。
@1999年、日本経済新聞の元記者が北朝鮮で身柄を拘束された。2年2ヶ月間、身柄を拘束されて帰国した元記者は「自分が公安調査官に提供した資料が北朝鮮に渡っていた。情報が漏れている」と告発した。元記者は公安調査庁の協力者として北朝鮮情報を提供していたにもかかわらず、北朝鮮側の取調べを受けた際に、公安調査庁に渡したはずの情報を突きつけられたという。
A2001年、奄美大島沖で海上保安庁との銃撃戦の末、沈没した北朝鮮工作船を、引き揚げたところ、船内から北朝鮮工作員が持っていたプリペイド式の携帯電話が発見された。その架電先リストから、公安調査庁の統括調査官Kの電話番号が出てきた。このKは、@で述べた日経新聞記者の「運用」を担当していた調査官だった。
問題の調査官Kは北朝鮮情報では図抜けた存在だったが、一連の問題で危険人物と認定された。しかし公安調査庁はK を告訴することもなく、飼い殺し状態にした。結局、Kは東北地方の公安調査事務所などを転々としたあと、最近ひっそりと退職したという。
つまり、日本政府は「モグラ疑惑」の真相を解明することなく、闇に葬ったのだ。
こうした問題を起こしてきた一方で、近年、公安調査庁は首相官邸での評価は高まっていた。
「内閣情報官を通じて総理や官房長官の耳に入る重要情報は、公安調査庁発のものが多い。特に北朝鮮情報は、外事警察を超越した質と量だ。拉致問題をめぐる日朝の非公式折衝の情報を北朝鮮側から取っているようだ。いま、一番アグレッシブに諜報活動をしているのは公安調査庁だ」(内調幹部)
拉致被害者の田中実さんらの事件にかかわったとされた、在日朝鮮人工作員組織「洛東江」のメンバーの男が去年の春、東北地方で病死した。この男に食い込み、自白を迫りながら、最期を看取ったのは公安調査官だった。
彼らの情報活動の手法は、対象国や組織内部に協力者を潜り込ませるというリスクの高いヒューミント(人的諜報)活動だ。こうした諜報手法には、当然高いリスクが付きまとう。
中国で拘束された協力者たちの中には、退職した元調査官が「運用」に深くかかわっている者もいた。元調査官Mは三十代後半、中国への留学経験があり、中国語や朝鮮語が堪能な人物。自身も入庁前に中国で身柄を拘束された経験を持つ。
「Mは極めて有能な男だが、『ビジネスを立ち上げる』ということで数年前に退職した。しかし、民間人になった今も、現職の調査官と共同で協力者を運用し、中国に送り込んでいる。
形式的に、民間人を一枚、間に噛ませておけば、協力者たちは政府の密命を帯びていたことにはならない。Mの『ビジネス』というのは、協力者、政府、両方のリスクヘッジ、危機管理になっている」(政府関係者)
これはCIA(米中央情報局)の手法に似ている。CIAでは、工作員を偽装退職させて、ダミー企業に移籍させたりしているからだ。情報収集というより、工作活動のための手法に近いやり方と言えるだろう。
日本の警視庁公安部でも、定年退職したベテラン捜査員が内閣情報調査室の外郭団体に籍を置き、民間人として協力者を運用している。
■ダブルスパイの特徴
ただ、公安調査庁と警視庁公安部のやり方には、決定的な違いがある。
公安警察では、警察庁警備局警備企画課指導担当=通称「チヨダ」で一元的に危機管理をしながら、協力者の選定、接近、獲得、運用を、タイミングから言葉まで事細かに指導するなど、事故防止のために慎重を期している。
これに対して、公安調査庁では調査官個人の裁量の幅は広く、チェック機能はそれほど強固ではない。協力者運用におけるリスクは必然的に高くなる一方、官僚組織特有の「保身のための消極判断」とは無縁だ。
「公安警察はドメ(国内)のことだけやっていればいい。日本を代表する諜報マンは我々だ」
国際部門を担当する調査官たちは、こんなプライドを隠さない。彼らがモデルにするのはCIA作戦本部である。
公安警察側は今回の公安調査庁の失態を冷ややかに見ている。ある捜査員はこんな指摘をする。
「公安庁は豊富な活動資金にモノを言わせ、警察や拉致対策本部が切り捨てた者を協力者にしている。情報の精度や信頼性を無視している。半島(北朝鮮)や大陸(中国)での情報活動は魑魅魍魎の世界だ。危機管理が甘ければ、敵はそこをついてくる」
この公安捜査員は、中国に拘束されたX氏のことを挙げる。朝鮮語も堪能で、脱北者の人脈もあったXは、かつて拉致対策本部の協力者として韓国に派遣され、脱北者からの情報収集作業にあたっていた。
当初は、警視庁外事二課から出向していた警部が運用を担当したのだが、Xが高額な金銭や豪華な食事を要求しはじめたため、関係を断絶したという。
「カネに目がくらんだ協力者は、相手国に買われてダブル(二重スパイ)になるリスクが高い。カネのために情報を捏造する可能性もあるから、協力者運営で一番重要な、信頼関係が維持できない」(警視庁公安捜査員)
(明日公開予定の後編に続く)
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