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2015年10月28日
米軍艦が南シナ海・南沙諸島で「航行の自由」作戦を実行したことで、わが国のメディアは躁状態に陥っている。特に「日本会議」御用達新聞や「経団連」御用達新聞の報道が過熱している。いかにもイージス艦が横須賀基地から高らかに出航、中国が実効支配している南沙諸島の岩礁強化コンクリ島12カイリ領海内を航行したのだから、平和ボケ国家の国民には、多少は刺激的なのかもしれない。また、軍事オタクたちにとっても、垂涎な出来事に映るのだろう。平和主義者の人々にとっては、戦々恐々の出来事かもしれない。
しかし、世界の戦場、アフガン、イラク、シリア、ウクライナ、リビア等々では日常茶飯な殺戮が起きている国々の人々から見れば、イージス艦が強がり航行をしたくらいで、キャ〜キャ〜ピ〜ピ〜騒ぐことの方が、異様に映るに違いない。中露のメディアにしろ、韓国、台湾、EU諸国のメディアも対岸の火事どころか、「それがどうした?」と云うような按配のスタンスで、面倒だが「国際」の紙面のベタ記事くらいにしておこうか程度の話である。軍事オタクな記者を養成しているような産経新聞や夕刊フジが口角泡を飛ばして語るのは肯けるが、日経と云う経済紙が軍事オタク化しているのが酷く可笑しい。以下は日経の主だった今回の米軍「航行の自由」哨戒行動に関する煽り記事である。
≪ 米駆逐艦、中国・人工島12カイリ内に 中国の反発必至
【ワシントン=吉野直也】米海軍のイージス駆逐艦が現地時間の27日午前、中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロ)以内の海域で哨戒活動に入った。米国防総省当局者が26日深夜(日本時間27日午前)、日本経済新聞の取材に応じ、明らかにした。
人工島の造成など南シナ海での活動を活発にする中国をけん制するとともに、同海域の安全保障で米国の役割を同盟国や友好国に示すのが狙いだ。中国の反発は必至で、米中の緊張が高まる可能性がある。 哨戒活動は「航行の自由」と名付けた作戦にもとづいて行われる。同当局者は米駆逐艦は横須賀基地配備の「ラッセン」で、派遣先は南沙(英語名スプラトリー)諸島で、スービ(中国名・渚碧)礁、ミスチーフ(同・美済)礁と言明した。哨戒活動の目的に関しては「国際法に基づく日常業務だ。米国は航行の自由のために世界で活動している。海洋権益を過度に主張する国には対抗する」と説明した。
スービ、ミスチーフとも中国による埋め立て工事前は 満潮時に水没する暗礁で、国際法上、領海とは認められない。駆逐艦にはP8など米対潜哨戒機が同行している公算が大きい。米軍はさらにフィリピンやベトナムに近い南沙諸島の岩礁周辺への軍艦派遣も検討中。「特定の国を標的にしているわけではない」という米政府の建前と辻つまを合わせ、対話による問題解決の 余地も残す。
米軍は今年5月以降、中国が造成する人工島12カイリ内に米艦船や航空機を送る考えを明らかにしていたが、ホワイトハウスが「待った」をかけていた。9月下旬のオバマ米大統領と中国の習近平国家主席との会談でも、習主席は人工島造成の中止要請を拒否した。
オバマ氏はその直後、米艦船派遣を了承し、米側は関係国にその方針を伝達した。米国の同盟国や友好国には南シナ海での中国への対応に不満や不信が高まっていた。 ≫(日経新聞電子版)
≪ オバマ氏、ついに怒る 夕食会で一変した対中戦略 (風見鶏)
世界の指導者は2つのタイプに分かれる。どんな相手とも「話せば分かる」と信じる人と、その逆だ。前者の典型は、オバマ米大統領である。
彼に接したことがある政府高官らは「オバマ氏は軍を動かすのをいやがる」と語る。なぜなら、たいていの問題は、話せば何とかなると思っているからだ。
そんな彼がついに怒りを爆発させ、対話に見切りをつけたという。9月24日、ワシントンにやってきた習近平中国国家主席との夕食でのことだ。
ごく少人数なら本音で話し、接点を見つけられるかもしれない。オバマ氏はそう考え、翌日の晩さん会とは別に、側近だけによる私的な会食を用意した。
いちばん取り上げたかったことの一つが、中国が南シナ海の岩礁を埋め立て、軍事施設をつくっている問題だ。ところが、ふたを開けてみると、やり取りはさんたんたるものだった。
複数の米政府筋によると、オバマ氏はかなりの時間を割き、軍事施設の建設をやめるよう求めた。だが、習氏はまったく取りあわず、箸にも棒にもかからないやり取りに終わった。
その夕食会の直後、憤ったオバマ氏は側近に命じ、ただちにハリー・ハリス米太平洋軍司令官に連絡させ、こう通告したという。「南シナ海での作戦を承認する」
この作戦とは、中国がつくった「人工島」の12カイリ(約22キロメートル)内に、米軍を派遣するというものだ。国際法では、各国の沿岸から12カイリを領海と定めている。そこに米軍の艦船などを送り込み、「人工島」を中国の領土と認めない姿勢をみせるというわけだ。
この計画は、すでに6月ごろに米軍首脳が立案し、実行しようとしたが、オバマ氏が承認を渋っていた。習氏との直談判に望みを託していたからだ。
「習氏との会談が決裂したことで、オバマ氏は中国に融和的な姿勢をみせても協力を得られないと悟った。米国の対中政策にとり、大きな転換点になるだろう。中国は墓穴を掘った」
世界的に著名な米戦略家であり、中国に関する近著もあるエドワード・ルトワック氏はこう分析する。 では、このできごとは日本にどんな影響をもたらすのか。
「力による現状変更を黙認したら、アジアは不安定になってしまう」。複数の外交筋によると、日本や一部の東南アジア諸国は米側にこう訴え、「人工島」付近に米軍を派遣する作戦の実行を促してきた。その意味で、オバマ氏の決断は日本にも朗報といえる。
その一方で、近づく米軍を中国軍が阻もうとすれば、米中が意図しなくても紛争になる危険がある。そのとき、日本はどうするのか。安全保障関連法が成立したいま、これまで以上に真剣かつ、慎重に検討しなければならない。
もっとも、「話せば分かる」の対中路線を、オバマ氏が完全にかなぐり捨てるというわけではないだろう。核開発問題をめぐるイランとの合意、敵対してきたキューバとの国交回復。この路線でつかんだ実績も少なくないからだ。
彼の任期はあと1年あまりしかない。「南シナ海で中国と対立しながらも、温暖化対策やアフガニスタン復興では協力し、成果を上げる余地を残すべきだ」。ホワイトハウス内からはこんな声も聞かれる。 テーブルの上でケンカをしながら、下では握手も交わす。大国はよく、こんな行動に出る。舞台裏の米中の駆け引きにも目をこらし、中国への圧力と対話をどう加減するか。安倍政権の判断力が試される。 ≫(日経新聞電子版:編集委員 秋田浩之)
≪ 米中激突なら……、米研究所が衝撃予測 編集委員 秋田浩之
アジアの安定や日本の防衛は、米軍に大きく頼っている。いざというとき、在日米軍が大打撃を受け、機能がマヒしてしまったら、大変だ。そんな危険を警告する報告書が最近、有力な米シンクタンクから出された。
この報告書を発表したのは、米国防総省と結びつきが深い有力シンクタンク、米ランド研究所。中国軍の増強により、アジアにおける米軍の活動がどのような影響を受けるか、公開情報をもとに予測した。
■脅威高まる在日米軍基地
題名は「米中軍事得点表〜部隊、地理、進化する勢力バランス、1996―2017」(The U.S.-China Military Scorecard. Forces, Geography, and the Evolving Balance of Power, 1996―2017)。 この報告書の特徴は、中国軍による(1)台湾への進攻(2)南シナ海の南沙諸島への進攻――の2つのシナリオを想定し、米軍が介入した場合にどうなるか、詳しく分析していることだ。
しかも、おおざっぱな比較ではなく、航空優勢や航空基地への攻撃力、水上戦能力といった10種類の戦力に分け、1996年、2003年、2010年、2017年の時系列で比べている。
その結論は、日本にとっても不安を抱かざるを得ない内容だ。報告書はまず、米中の軍事力の差はなお大きいとしながらも、中国軍は、米軍の介入を阻む能力を急速に強めていると指摘する。 日本にとってとりわけ深刻なのは、中国軍の攻撃力が増し、在日米軍基地や、空母を中心とする米艦隊への脅威が大きく高まっているという点だろう。た とえば1996年時点では、中台紛争に米軍が介入したとしても、中国軍は在日米軍基地を攻撃できるミサイルをもっていなかった。
ところが、2010年までに、ミサイル攻撃により、米空軍の主力拠点である嘉手納基地(沖縄県)を4〜10日間、閉鎖に追い込める能力を手に入れた。2017年には、16〜43日間の閉鎖を強いることができるようになるという。
報告書はさらに、米空母が中国の潜水艦に探知され、攻撃される危険が急速に高まっているとも警告する。中国軍は、潜水艦艦隊をスリム化する一方で、偵察衛星などを使い、水平線をこえた「目標物」を見つける能力を強めているからだ。
■空母も標的に
そこで気がかりなのが、こうした現状を踏まえた提言だ。
紛争の初期段階では、中国から離れた海域に空母を展開することも検討すべきだ――。 報告書はこう明記し、紛争が始まったばかりで米軍が優勢を確保できていない段階では、空母を日本周辺から太平洋の南に下げるべきだ、と提案している。中国軍の増強により、もはや、空母を自由自在に東シナ海に展開できない、と認めたにひとしい。
日本の防衛は戦後、米軍が圧倒的な強さを保ち、アジアの警察役をはたしてくれるという前提で成り立ってきた。なかでも「動く基地」である空母の存在は、米軍の強さの象徴ともいえた。
こうした前提が崩れているとすれば、日本への影響も大きい。
「米軍は日本防衛への決意を示すため、空母を横須賀に配備してきた。だが、空母はもはや、中国軍の格好の標的になりかねない。これからは潜水艦など、目に見えづらい部隊を在日米軍の主力にすべきだ」。米軍戦略にかかわる元米政府高官からは、すでにこんな意見が出はじめている。
在日米軍基地が危険になっているという認識は、すでに日米両政府も抱いている。複数の日米両政府筋によると、その対策として、(1)米軍と自衛隊の基地共同使用を広げ、互いの部隊の配置を分散させる(2)戦闘機の格納庫などの強度を高める(3)ミサイル防衛の連携を深める――などの案が検討されている。
先の国会では、安全保障関連法が成立し、米軍などへの自衛隊の支援を拡充できることになった。日本はこの運用も含め、米側とじっくり、戦略をすり合わせるときにきている。
秋田浩之(あきた・ひろゆき) 1987年日本経済新聞社入社。政治部、北京、ワシントン支局などを経て編集局編集委員。著書に「暗流 米中日外交三国志」。 ≫(日経新聞電子版)
まあ読めば読むほど、日経が先の国会で強行採決された、所謂「戦争法案」を更に深化強化しなければならないと主張している。おそらく、この調子だと、南沙諸島周辺のパトロールも自衛隊と共同でと云うニアンスに傾いていきそうな勢いだ。日本の財界がアベノミクスなどと云う絵に描いた餅政策よりも、実需を伴うアクシデントを欲していると云うことになる。第二次世界大戦のような大事にはしたくないが、朝鮮動乱くらいの規模なら、特需があるよね。ストレートに言えないとなれば、中国の脅威論を展開するのも常套手段だ。この辺をチェックする意味では、毎日が丁寧に、今回の米軍「航行の自由」と名付けた哨戒作戦に対する近隣諸国の鈍い反応にスポットを当てた記事を書いている。
≪ 米艦南沙派遣:板挟みに悩む韓国 欧州は関心薄く
米軍艦が南シナ海・南沙諸島で「航行の自由」作戦を実行したことへの周辺国・地域の反応は割れている。
◇韓国
【ソウル大貫智子】韓国外務省報道官は27日、米軍による「航行の自由」作戦実施について「事実関係を確認中」と述べるにとどめた。メディアや識者からは踏み込んだ立場表明をすべきだとの指摘が出ているが、韓国政府は北朝鮮問題などでの協力が必要として中国を刺激したくないのが本音で、「十分に立場は表明している」と反論している。
報道官は、事実と確認できた場合には米軍の行動を支持するかとの日本人記者の質問に「仮定の質問には答えられない」と述べた。
韓国政府は、朴槿恵(パク・クネ)大統領の今月中旬の訪米で、米韓同盟の重要性を再確認し、韓国が中国に偏りすぎているという「中国傾斜論」が払拭(ふっしょく)されたとアピールしている。
しかし、オバマ米大統領は米韓首脳会談後の共同記者会見で、南シナ海問題を念頭に、中国に対して韓国も積極的に対応するよう求めた。
オバマ氏の発言について、米韓関係に詳しい峨山(アサン)政策研究院の崔剛(チェ・ガン)副院長は「中国傾斜論は今も残っている。航行の自由による恩恵を受ける国として韓国も何らかの寄与、少なくとも立場表明はすべきだというのが米国の立場だ。これからもさまざまなレベルで要求してくるだろう」と話す。
一方、青瓦台(大統領府)関係者は「わが国の輸出の30%、石油輸入の90%が南シナ海を通っており、この地域での紛争は望ましくない」と指摘。 そのうえで「国際的に確立された規範にのっとり、平和的な紛争解決をしなければならないという立場をこれまでも明らかにしている。我々が(これ以上)踏み 込んだ立場を表明することは適切ではない」と反論し、新たに対応する必要はないとの考えを強調した。 崔氏は「韓国は、中国とも米国とも良い関係を維持しなければならない。朴政権の間はずっとジレンマが続くだろう」と見る。
◇欧州
【ロンドン矢野純一、ベルリン中西啓介】ドイツやフランスなど欧州諸国は27日夕までに、目立った反応を見せていない。独仏両国については、メルケル独首相が29日、オランド仏大統領が11月2日から、それぞれ訪中を予定していることが背景にあるとみられる。
中国の習近平国家主席を迎えたばかりの英国も、事情は変わらない。キャメロン英首相と習主席の21日の首脳会談は経済関係強化に焦点があてられ た。会談後、首相官邸は「南シナ海問題も含めた地域の安全保障について議論した」と説明したが、具体的内容には立ち入らなかった。
英王立防衛安全保障研究所のエドワード・シュワーク・アジア研究担当研究員は「航行の自由は英国にとっても重要だが、英国への直接の脅威はほとんどない」と話した。
ドイツが議長国をつとめた6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言では、南シナ海での中国の行動を念頭に、威嚇や武力の行使など、大規模な埋め立てを含む一方的な行為に強く反対していた。
◇台湾
【台北・鈴木玲子】南沙諸島最大の太平島と東沙諸島を実効支配する台湾では、国防部(国防省)幹部が27日、記者会見で「米国の巡航は通常活動。(台湾)軍は南シナ海の海空域での活動を掌握できている」などと述べるにとどめ、米国と中国の双方に配慮を示した。
台湾にとって米国は安全保障を含め事実上最大の後ろ盾。一方で馬政権は2008年の発足後、対中融和路線で中台関係改善を進めてきただけに、中国への刺激も避けたいところで、慎重に情勢を見極めている模様だ。 ≫(毎日新聞)
AIIBを核とした中国の「一帯一路」戦略が本当に実現するかどうか、半信半疑ではあるが、周辺各国は自国経済に実需を齎してくれるのであれば、アメリカのマネーだけ経済よりも、実体を伴う、人モノにも影響する中国主導の経済活動に参加したいのは当然だ。習近平は訪米でオバマを怒らせて、意図的に米軍の南沙省島周辺の哨戒活動をさせる悪意があったようにも受け取れる。今まさに、オバマが怒って米軍が動き、誰が付いてくるのかと後ろを見ても、遠くに日本の自衛隊の影がある程度だ。
韓国にしてみても、経済上中国依存が顕著なわけで、米中どちらにもつきかねるジレンマを抱える。台湾も複雑だ。中国共産党は26日から「第18期中央委員会第5回総会」(5中総会)を開会しており、その後、オランド仏大統領、メルケル独首相の訪中もある。オマケだが、モンゴル大統領も訪中だそうだ。英国、ドイツ、フランス、ロシア、イラン、韓国、台湾等々が米中の距離感外交を貫き、日豪比がアメリカにベッタリ。どっちが選択肢を残した外交なのか、常識的に判断できるものだ。それが出来ないところに、日本と云う国の成熟できない悩みがあるのだろう。まあ、今夜はこの辺で。
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