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「政府広報オンライン HP」より
消費税軽減税率、「骨抜き」の公算 国民負担軽減は限定的、一部企業の「益税」放置か
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12130.html
2015.10.28 文=町田徹/経済ジャーナリスト Business Journal
世論と公明党への配慮からトップの首をすげ替えて仕切り直しとなった自民党税制調査会で、先週から軽減税率の導入論議が活発化している。
安倍晋三首相が「国民の皆様との約束だ」と述べて、2017年4月に予定されている消費増税(税率を現行の8%から10%へ引き上げ)と同時に実施する方針を改めて確認したことを受けて、税調の新会長となった宮沢洋一参議院議員が「11月半ば過ぎには自公両党で大筋合意する必要がある」と精力的な調整を始めたからだ。
だが、その中身となると、「安定的な財源の確保が最優先だ」「17年4月に事業者に大きな混乱をさせてはいけない」と筋論を前面に押し出して、本来ならば軽減税率の適用に不可欠なはずのインボイスの導入を先送りし、財源が4000億円程度しかないという理由で軽減税率の適用品目を「酒類を除く飲食料品」から「生鮮食品」に絞り込む構えをみせている。これでは、国民の痛税感の解消には力不足の小型軽減税率制度にならないか懸念せざるを得ない。
軽減税率とは、通常の税率のほかに、特定の品目に低い税率を設けることだ。所得の多い人に高い税率を適用する累進性のある所得税と違い、消費税は対象の商品が同じならば所得に関係なく同じ税率を適用するので、低所得者に厳しい税金だ。このため、日本の消費税に相当する付加価値税が早くから普及し、その税率が20%前後に達している欧州諸国では、軽減税率も幅広く適用されている。こうした例を参考に、自公連立与党は17年4月の消費税率引き上げを機に、日本でも軽減税率を導入することを先の選挙で公約していた。
ところが、9月初旬に明らかになった財務省案は、国民の手元に届いてもいないマイナンバーカードを買い物のたびに提示させ、店頭ではすべての商品に10%の消費税を支払わせて、後で軽減税率分を還付するというものだった。この煩雑な仕組みに加えて、所得制限を設けて、軽減される税額をあまりにも小さく抑え込む腹案もあったことから、世論と公明党が一斉に反発した。
■宮沢氏の起用
そこで今月10日、安倍首相は、財務省OBで同省べったりといわれていた野田毅前自民党税調会長を事実上更迭し、今月初めの内閣改造で経済産業大臣の任を解いたばかりの宮沢氏の起用に踏み切った。
宮沢氏は、1991年から内閣総理大臣を務めた宮沢喜一氏の甥だ。洋一氏も喜一氏も、前税調会長の野田氏と同様に、財務省(旧大蔵省)OBである。洋一氏は財務官僚時代、損失補てんや総会屋不祥事といった証券スキャンダルの収拾に努めた経歴を持つ。官僚出身らしい政策通の政治家だ。秘書による政治資金規正法違反問題を問われて辞任した小渕優子氏の後任として経済産業大臣に就いたが、それ以前は野田税調のメンバーとして雑巾がけも厭わなかったといわれるだけあって税制に詳しい。
新聞によると、宮沢氏は、野田氏ら歴代会長と比べて国会議員としての当選回数が少なく、「軽量級」(17日付日本経済新聞)だそうだ。しかし、本人はそんな声をものともせずに、就任早々精力的に軽減税率導入問題に取り組み始めたわけだ。21日付同紙のインタビューでは「(17年4月に軽減税率を導入するには)11月半ば過ぎには自公両党で大筋合意する必要がある。この短期間で実現するのは至難の業だが、必ず成功させなければいけない」と意気込みを語っている。
肝心の軽減税率の中身について、宮沢氏は船出となった16日の記者会見で、「財務省案は残っていない。いかなる形での軽減税率ができるかを、これから知恵を出さなければならない」と強調したという。マイナンバーカードを使って軽減分を還付する方式に、はっきりとダメ出しをしたのだ。これは、軽減税率の対象商品を購入する際は、標準税率の10%ではなくて、店頭で軽減税率分(例えば8%)を支払えばよい仕組みにすることを意味している。この点は、自身の会長就任の経緯を踏まえた適切な判断といってよいだろう。
だが、この発言で、われわれ納税者が宮沢氏に下駄を預けても安心と考えるのは早計だ。前述の新聞インタビューで宮沢氏は、軽減税率導入に向けて、財政健全化を優先する基本方針を明らかにしているからだ。このインタビューで、税調会長として最も大切なのは「安定財源の確保」であり、対象品目について「予断を持たない方がいい」と述べている。つまり、確保できた財源に応じて対象品目を決めればよく、公明党が提示している「酒類を除く飲食料品」をすべてカバーすることにはこだわらないということだ。
■期待外れの軽減税率導入
あわせて気掛かりなのが、宮沢氏の「17年4月に事業者に大きな混乱をさせてはいけない」という発言である。欧米型の本格的なインボイス(適用税率と税額が記載された書類)、公明党が主張している簡易型のインボイスのいずれについても、「17年4月から義務付けることは非常に難しい」と述べたのだ。そもそもインボイスは、国民(消費者)が支払った消費税がきちんと国庫に納入されるようにするための担保である。標準税率と軽減税率の差が悪用されるのを防ぐため、当然導入すべきものだ。与党として必要な手も打たずに、本気で本格的な軽減税率を導入する気があるのか、疑わざるを得ない発言だ。
その後の公明党の斉藤鉄夫税調会長との協議などを通じて、宮沢氏の描く青写真がはっきり浮かび上がってきた。整理すると、消費増税分の一部を財源として、医療や介護、保育の世帯ごとの自己負担総額に上限を設けるはずだった新制度「総合合算制度」の導入を見送って、年間4000億円の財源を確保し、これを軽減税率の予算に充てるというのである。
これでは、財務省や公明党が提案していた「酒類を除く飲食料品」を軽減税率の対象にすることは難しい。「酒類を除く飲食料品」を対象にすると、1兆2600億円程度の財源が必要になるからだ。4000億円で賄えるのは、3400億円程度の財源が必要とされる精米、刺し身、精肉などの「生鮮食品」ぐらいである。
公明党は、対象品目を拡大するため、高額所得者への課税強化やたばこ増税など消費増税分とは別に財源を手当てすることを提案したが、宮沢氏は「税と社会保障の一体改革の枠内で解決すべきだ。それが自民党税調の共通認識だ」と述べ、あくまでも財源を消費増税の枠内で確保すべきだと主張しているという。宮沢氏は、軽減税率を「小さく生んで大きく育てることもできる」としているが、われわれ納税者から見れば、痛税感の解消には程遠い、期待外れの軽減税率導入に終わる可能性が高まっている。
■「お上の論理」
中国経済バブル崩壊の影響が次第に深刻化するとみられる中で、そもそも17年4月に消費増税が可能かは大きな疑問だ。その疑問を横に置いても、インボイス導入の見送りは禍根を残すことになるだろう。本来、事業者は顧客から受け取った消費税から仕入れで支払った消費税を差し引いて、残りを納税する義務がある。が、その特例として、売上高が1000万円以下の事業者はこの義務を免除されているほか、「簡易課税」でも“益税”が生じるケースがある。合法的に、顧客から預かった消費税を懐に入れることが認められているのだ。
インボイス導入時には、こうした益税の廃止が必至と見られている。宮沢氏をはじめ政府・連立与党はそろって、「事業者の事務手続き負担を増やせない」というもっともらしい理屈で、インボイス導入先送りを既成事実のように扱っているが、実際は来年夏の参議院選挙を前に益税廃止を打ち出せば、選挙で不利になると見て、先送りを目論んでいるのではないかという見方も根強い。
仮に、インボイスを導入し益税制度を廃止すれば、年5000億円程度の税収を獲得できるとの試算もある。安易なインボイス導入の先送りはやめるべきだ。販売する商品に適用する消費税率と税額を記入したインボイスを発行することが、事業者にとって政府・与党が連呼するほど大変な負担とは思えない。
財源は消費増税分の枠内に限るという宮沢氏のロジックは、税制の専門家の論理としては筋論なのだろう。しかし、始まってもいない数年先の増税分の使途をさっさと決めて、それがいずれも削りにくい予算ばかりだというのは、納税者から見れば「お上の論理」でしかない。
また、消費税率の10%分すべてではなく、増税分の2%しか軽減税率の対象にならないというのも、納得のいかない議論である。欧州では、標準税率20%の英国が食料品や新聞・雑誌に0%の軽減税率を適用しているし、標準税率20%のフランスも食品に5.5%、新聞・雑誌に2.1%の軽減税率を設けている。
人間が生きていくのに不可欠な食品に税金をかけるのは、税と引き換えにしか国民の生存権を認めないというに等しい行為だ。食品ぐらいは、消費税ゼロに戻すぐらいの度量が政府には期待される。
予定通り17年4月に消費税率を10%に引き上げるとすれば、政府は3〜4兆円の税収増が見込めるはずだ。その半分ぐらいを費やして本格的な軽減税率を導入しない限り、納税者は納得しないのではないだろうか。必至とされる将来の10%超への消費増税のためにも、きちんとした軽減税率制度づくりが期待されている。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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